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犬よ8

「このまま意識が戻らないままお看取りか、戻る可能性もゼロではないよ」
「立ったり歩いたりできるのは二度とないよ」
動物病院の先生に言われた。まあ幸い意識は戻って足をぱたぱたさせるし鳴くのはこれはけいれんかと聞くと、立てないのにキレているようだとのこと。は????立てないのだが???????みたいな。まあそうよね、そうだよね。しかしこの期に及んでまだ立つ気でいるんだ、私としてはこの終末期ができるだけゆっくりであるといいなという気持ちなんだけど。当の本犬はそうではないらしい。
このまま寝たきりならば転落防止の階段の柵とか(うちは2階にリビングがあるので普段から犬は2階で生活している)老いて目が見えなくなってガツガツと頭をぶつけながら進むから巻いた机や椅子の脚のクッションを全部、全部撤去した。褥瘡にならないようお尻とか肩の下に梱包のプチプチやら常温に戻したアイスノンやらを敷いてやって、時々立てない!!と怒る犬を抱っこしてトントンして寝かしつけをしていた。
そして3月末。けいれんの大発作から2週間ほど経った。



歩いとるがな。

えっなんで?????急に地面に足をつくやり方を思い出したらしい。本当に唐突に立って歩けるようになった。どうして。
動画を記事内に埋め込んで自動で再生してくれたら良かったのだけどどうにもやり方がわからず、ダウンロードを強いる仕様になってしまった。うちの犬が歩いている動画です。容量に余裕があれば良ければ見てほしい。犬が回っている。動画外で人間がいつでも支えられるように手を広げて備えているが、独歩。
動物病院の先生も素でびっくり。またスタッフの皆さん総出でミラクルガールの称号をもらって、かわいいかわいいすごいすごいと褒めちぎられた。
起き上がるのは人間が介助してやって、寝起きはとくによろけて転ぶから手で支えてやったりリードで吊ったりはしつつも、軽介助は要するも、犬が歩けた。
本当は床全面にマットを敷きつめてあげたいが、そうすると今度は人間の祖父母が足をとられて転倒しかねない。転倒すなわち骨折だ。入院、オペ、リハビリ、上がる介護度と進む認知症。犬はまだ軽いしかわいいけど人間はそうじゃないというのが母と私で一致した。犬用スペースにちょっと敷いたが、容易にフローリングへ飛び出しては滑るのでプールに入れて回るのを手伝っている。犬回し。もっと高さのあるビニールプールは犬が穴を開けてしまって膨らまなくなった。ああいうプールって高さを求めると大きくなり、必然的に値段も上がるのを初めて知った。柴犬の割に小柄だから体高も低めなんだけれども普通に越えられてしまうから誘導して犬を回す。疲れ果てる前に引き上げてチュールやらお水やらを与えてクールダウン。犬用牛乳の美味しさに目覚めて水はやっぱり飲まない。今日はお腹がゆるいから牛乳はやめておこうねって申し送りをもらっているから牛乳はだめです。さっきとは違う体勢で寝かしつけてからこっそり肉球の毛をカットする。以前は足の裏なんか絶対に触らせてくれなかったのに、4本一気に済ませられた。
犬は認知症が多分進んで昼夜逆転気味なので昼にごはんとお薬を内服させたらちょっとお外に連れ出したりして覚醒させようかと思っている。朝夕30分ずつ散歩に行くし、以前のようにカートに乗せずともりきりき張り切って歩くそうだ。犬よ、犬よ。この前死にかけた犬なのか本当に。楽しそうで何よりだしこの回復っぷりに喜んでもいるのだがど根性ぶりに人間はちょっと引いている。あんまり無理させるのも怖いから適度にレフェリーストップは挟みますよ、夜は寝てくださいよ。ごはんは起きる度にはあげられませんよ、これで5食目になっちゃうし。お水を飲め、味がついていなくともお水を飲んでくださいよ。

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