ヘルメットの話。
カポ峯だ。
儲かってるか?
突然だがお前らはバイクのヘルメットと言えばどれを想像するだろうか?
大体一般的なのだと上記の5タイプだよな。
俺の感覚では原付は半帽やハーフキャップ、単車とかだとフルフェイスやジェット、というイメージがあるが少し検索してみた感じだと昨今はデザインや見た目よりも安全性を重視する傾向にありフルフェイス派が半数を超えているらしい。
そもそも現在我々がバイクに乗る際には当たり前のように装着しているヘルメットだが、遡ればバイクのヘルメット着用義務は1965年から始まっている。
1965年に高速道路での“ヘルメット着用努力義務(罰則なし)”が規定され、1972年には最高速度規制が40kmを超える道路での“ヘルメット着用が義務化(罰則なし)”された。
ここまではヘルメットを被らず走行しても罰則がなかったが、1975年から罰則ありの制度が導入され始める。
下記が罰則ありのヘルメット着用義務化の流れだ。
■日本国内での罰則ありのヘルメット着用義務化の流れ
1975年:政令指定道路区間で、51cc以上のバイクのヘルメット着用が義務化
1978年:すべての道路で51cc以上のバイクのヘルメット着用が義務化
1986年:原付も含めたすべてのバイク、すべての道路でヘルメット着用が義務化
※バイクブロスから引用
ヘルメット着用が義務化されてからもうすぐ50年。
現代では前述したように安全性やデザイン性を兼ね備えたヘルメットがたくさんあるが、ひとつだけとても特殊な側面を持つヘルメットがある。
それがコイツだ。
これはコルク半、またはコルクというヘルメットだ。
半帽に似ているが基本的には中に緩衝材があり外側の部分が黒い合皮のようなもので覆われていて、耳が隠れるタイプのものをコルクと呼ぶ。
今回は俺がガキの頃から現代に至るまで続くこのコルクというヘルメットの特殊性ついて、実際に俺が体験した話を交えながら書いていこうと思う。
それじゃあいくぜ。
俺がまだ中学3年生くらいの頃、仲の良かった先輩からコルクを貰ったんだ。
※今後先輩の事はX先輩とする
X先輩は「もう引退するから一番可愛がっていたお前にこれを託す、大切にしろよな」と言ってくれてそのコルクを頂くことになった。
正直言ってバイクが特別に好きなわけではなかったし、ましてや暴走族や旧車會なんてまるで興味がなかった俺だったから託されてもという感じではあったのだが、引退というX先輩にとっての節目の時に場を濁すのも良くないと思いお礼を言って受け取ったんだよな。
歳は4つ離れているとはいえX先輩は小さな頃から俺に良くしてくれた人なんだ。
地元の暴走族だったX先輩が幼馴染とはいえ中学生の俺に何故大切なコルクをくれたのかは分からなかった。
高校に入ってからは少し悪い道に進んでしまったみたいだが、理不尽な要求をしてくるタイプではなく俺にとっては優しく良い先輩だった。
そんなこんなで中学校を卒業し高校が始まるまで春休みという時期になった。
その頃になるとバイクに乗りたいという欲が次第に出てきて、俺はまだ免許も持っていないのにツテを当たって単車を入手した。
※もう時効だぜ。
まだガキだったしそこにバイクがあるのに乗らない訳がないよな。
単車を入手して舞い上がった俺はX先輩から貰ったコルクを被りそれから毎日のように街を流していた。
バイクを入手してから1週間ほど経ったある日、事件は起きた。
いつも通り入手したての単車を流していると信号待ちで2台のバイクに挟まれるような形で話かけられたんだ。
何のバイクだったかは覚えていないがどちらも3段シート搭載のおなじみの形でヘルメットは二人ともコルクだった。
お前どこの奴だ?その駐車場に止めろと明らかに敵意に満ちた表情で話しかけてこられたことを今でも覚えている。
正直言って警察でもないのになんなんだと思っていたのだが、奴らのバイクがうるさすぎて何を言っているのかあまり聞き取れなかったし指示通り駐車場にバイクを止めることにした。
2人もすぐにバイクを止めると、誰に面倒見てもらってコルク被ってんだ?とかなりの喧嘩腰で言ってきた。
誰かに面倒を見てもらわないとヘルメットもかぶれないのか?みたいな言葉を返した記憶がある。
駐車場でしばらく押し問答を続けていると、どちらかが呼んだのだろう。
一段とうるさいバイクが4台、駐車場に入ってきた。
おそらく俺より一回りは年上の連中だろう。
奴らはバイクを降りるとルールは守ってもらうぞ、という言葉と共にいきなり俺に殴りかかってきた。
それを皮切りに他5人も加勢し合計6人にリンチされた俺は成す術なくボコボコにやられた。
ボコボコという表現がこれほどまで適切な場面があるか?というくらいメタメタにやられた俺は駐車場にうずくまってただ耐え続けるしかなかった。
しばらく殴る蹴るのリンチが続いた後、奴らは俺のコルクを奪って退散していった。
アスファルトに這いつくばりながら俺は泣いた。
別に痛かったからではない。
X先輩から貰った大切なヘルメットを守れなかった自分の無力さが悔しかったからだ。
その後、動けない俺はツレに迎えに来てもらい家に帰った。
それから1カ月ほど経ちだいぶ傷が癒えてきた頃、俺はとあるファミレスの前にいた。
傷が癒えるまでの期間で俺は様々な事を人づてに調べていた。
俺からコルクを奪った6人の事、そのグループのリーダー、この街のルール、そしてそのルールを設定して利益を得ている大人たち。
あの6人に会いに行っても埒が明かないと考えた俺はグループのリーダーに直接会いに行くことにした。
知り合いのツテでそのリーダーに繋いでもらい地元のファミレスで会うことになったのだが、そこにはなぜかX先輩が俺のコルクを持ってリーダーの向かいに座っていた。
X先輩は大切にしてくれって言ったじゃん、と微笑みながらコルクを渡してきた。
何が起こったのか分からなかったが、おそらく俺がボコボコにされたという噂を聞きつけて色々と動いてくれたのだろう。
3人でたわいもない会話をしてからX先輩とリーダーに感謝し、コルクを持ってファミレスを出た後、俺はやるせないというかあまりの情けなさに自分が恥ずかしくなった。
たかがチンピラ6人程度に囲まれただけで大切な物を失ってしまう俺。
自分のケツを自分で拭けなかった俺。
思えばこのファミレスからの帰り道が人生で初めて「大きくなりたい」と思った瞬間だったのかもしれない。
力が欲しい、そう強く思った瞬間だった。
あれから何年の月日が経っただろうか。
あの日から俺はコルクを被ることはなかった。
別に狩られるのが怖かった訳ではなく、また揉めてX先輩に迷惑をかけてしまうかもしれないことが嫌だったからだ。
そのX先輩はというともう久しく連絡を取っていない。
卒業してから車屋を経営していた頃は俺もよく遊びに行っていたんだが、潰れちまってからは何をしているのかも分からないレベルだ。
だけど人に優しく自分に厳しいX先輩ならきっとどこかで楽しくやっているんだろう。
今度会ったら昔話でもしながら酒でも飲みたいもんだな。
X先輩、昔言われた通りいまでも貰ったコルクは大切にしているんだぜ。
おしまい。
とまあコルク狩りの話を俺の拙い記憶を辿って書かせてもらったぜ。
普通の人からしたらヘルメット一つでこんな話になるんだなと思っただろうな。
しかし今考えれば自分で揉めた話を自分で解決できないなんて情けない話だよな。
noteを書いている途中、自分でもちょっと恥ずかしくなっちまったぜ。
まあでも人生ってのは失敗があってこそ成長があるもんだし悪くない経験だったと思う。
ちなみに今でもコルク狩りってのはあるみたいだな。
当然法律的には少年達が悪いんだろうけど、その存在自体に関してはあってもいいのかなとも思う部分はある。
もちろん全く関係ない普通の人がこういう事件に巻き込まれるのは可哀そうだし完全にダメだと思うんだけど、別にコルクを好き好んで被るって奴はなかなかいなくて被ってる側もルールを理解しているケースが多いしな。
悪ガキってのは基本的に同じような奴らと集まるものなんだけど、そいつらをバラバラにしておくよりこういう形で管理されていた方が俺は良いと思う。
別にコルク狩りを肯定するわけではないんだけど、上に従う部分だったりダサい事をしたら先輩に怒られるとかそういう風潮は悪ガキにとっては悪くないんじゃないかな。
こういうガキになるよりは全然コルク狩りの方がマシだと思うしまだ可愛げがあるじゃねえか。
まあでもそれはあくまでも下のレベルの中で考えればって話。
人間コツコツ真面目が一番、少年はコルク狩りなんてしてる暇があったら勉強でもしたほうがいいぜ。
じゃあな。