ランニングのテトリス効果
きっかけは、アカペラグループ「チキンガーリックステーキ」の前澤くんと
にしむら珈琲でお茶をしていた時。
仕事の打ち合わせが終わり、同い年で還暦を迎える年をどう楽しむかについて話しているとマラソンの話になった。
前澤くんはサブフォー(フルマラソンを4時間未満で走るランナー)を何度も記録しているマラソン愛好家。
「還暦でサブフォー」が目標だと言う。
僕は昔からボール遊びは好きだけど、走るのは嫌いなタイプ。
野球の練習のためにイヤイヤ走ってはいたけれど、
できれば何とか避けて通りたい種目だった。
ところが人生、魔が差す時がある。
「還暦記念でフルマラソン初挑戦って、どう?」
この言葉の響きに、「おもしろいかも?」と反応してしまった(笑)。
前澤くんのクロージングのセリフは、
「応募してみて、抽選に当たったら走ればいいから、とりあえず応募だけしてみたら」
確かに、運試し要素もあるし、外れた時点でこの話は無し。
当たっても走りたくなければ止めればいいだけ。
心の負担を軽くされて、思わず「んじゃ、応募してみよっかな」と。
あとになって知ったことだが、
初エントリー者は当選しやすいらしい(笑)。
さらに、前澤君の絶妙の「全然やれるよ」という乗せ乗せトークに騙され、
シューズやウエアを購入する店をご教授いただく。
足型を測定し、ジャストフィットな靴を提案してくれる三宮のアシックス(神戸に本社がある企業なので、絶対アシックス)に行き、いろんなアドバイスをもらっているうちに、アンダータイツや靴下、サイドポーチまで購入して、投資額は4万円超に。
ここまでお金をかけたら本番で走らないと損した気になる。
そして、前澤くんが作ったトレーニングスケジュールを伝授され、
第一回の練習に臨む。
いきなり三宮から神戸空港を往復する20kmのトレランは、なまった足を起こすには激しすぎて、復路は膝が悲鳴を上げる。
それでも、練習後の風呂とビールで、その辛さをうやむやにされ(笑)、
本線出場は規定路線になっていった。
42.195kmを走る前に、本番の環境に慣れる意味で薦められた西宮ハーフマラソン。
20kmなら大丈夫だろうとエントリーしたら
制限時間が意外と早いことを出走前日に知る。
「前澤くん、最初に言っておいてよ」と泣き言をいう僕に
「あれ、言ってなかった?」と茶目っ気たっぷりの返事(笑)。
この頃は日頃の練習の成果も出てきて、笑顔でゴール。
本番に自信を深める。
そして、前澤くんの描いたシナリオ通り、神戸マラソンの抽選に当たり、
2023年11月19日マラソン初出走の日を迎えた。
タイムは6時間24分と褒められたものではないが、一応完走。
懸念していた膝は34km時点で痛み出し、残り8kmは歩いてゴールという不甲斐ない結果だった。
終わった瞬間は、「もう走ることはないだろう。還暦の良い記念になった」と心底思った。
ところが、不思議なもので、時間が経つと良いことは思い出し、
悪いことは忘れていく得な性格。
時々、走りたくなるようになってしまった。
理屈的にも、老後のためにも野球のためにも足腰を鍛えるのはプラスしかない。
(もちろんフルマラソンは『やり過ぎ』の部類だと今も思っている)
で、自分でも不思議なのだが、今は週に10kmくらいのランニングが習慣になりつつある。
また、走ることで予想外の副次効果が自分にあることを最近気づいた。
走っていると『テトリス』や『ぷよぷよ』のように乱雑に頭の中に入っていた
情報が頭の下の方にストンストンと落ちていき、整理され、統合され、新たな固まりになっていくのだ。
その過程で、新しいアイデアが湧いてきて、
あれもやれる、これも使える。アイデアとアクション項目で頭が満たされていく。
これまでのアイデアが出る環境は、サウナか講演会だったのだが、
ランニング中も強力な手段として定着しそうな気がする。
いろんな恩恵を与えてくれたマラソンに今はとても感謝。
もちろん引き入れてくれた前澤くんにも感謝。
え? 2024年のマラソンにエントリーするのかって?
そんなの、まだ決めてませんよ(笑)。