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警察の呼び鈴で不具合に気がついた「亡命首相」

Lars Wienandによる2023年3月23日のt-online記事

2023年3月22日(水)ラルフ・T・ニーマイヤーが家宅捜査を受けた。この、自称ドイツ「亡命首相」は「ライヒスビュルガー(帝国臣民)」プリンツ・ロイスのために、プーチンに文書を届けることになっていた。しかし家宅捜索は、文書を捜している捜査官達をかえって混乱へと導いた

ハインリヒ13世ロイス王子、元エリート兵士のリュディガー・フォン・ペスカトーレ、元AfD連邦議会議員のビルギット・マルザック・ヴィンケマンを取り巻くテロ集団に対する新たな手入れでは、もう一人の著名な人物の関与が浮かび上がった。
警察は自称「亡命首相」のラルフT・ニーマイヤー宅も訪れた。左翼党ザーラ・ヴァーゲンクネヒトの元夫は、クレムリンとのコネクションを利用して、計画中の新政権に対するロシアの支援を組織するつもりだったのだろうか。彼はドイツの「亡命政府」を代表してロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相とも会談したことがある。

水曜日の朝、ミュンヘンのニーマイヤー宅を訪れた警察官は、武装こそしていたが玄関で呼び鈴を鳴らした。ラルフ・ニーマイヤーは訴訟の被告としてではなく、証人としてリストアップされたからである。彼は、郵便配達を頼まれたのである。ニーマイヤーは、ハインリヒ13世ロイス公から、公がウラジーミル・プーチンに宛てた文書を届けるように託されていた事を、自ら当局に申し出た。

文書の中で、ハインリヒは自らの正統性を証明することを望んでいた


ミュンヘンでの捜索では、ロイス公の印が押されたこれらの書類を押収する予定であった。しかし、そのためには、連邦憲法保護局に問い合わせる必要があった。ニーマイヤーはt-onlineに、「2人の職員に渡したのでそこにあるだろう」と語った。
この文書は、フランクフルトの不動産業者であったハインリヒ13世ロイス公を将来のドイツの元首として正当化するためのものであったらしい。恐らくクーデターの後、ロイスがドイツの正統な摂政になることを正当化するためのものだったのだろう。

ハインリッヒ13世プリンス・ロイス公が首謀者とされるグループは少なくとも61人の容疑者が含まれている。その中には、警察官や元ないし現役の兵士もいる。水曜日の捜査では、「ライヒスビュルガー」が警官に発砲して負傷させるなど、さらなるメンバーの可能性が指摘されている。ロイス公とラルフ・T・ニーマイヤーとの直接的な関連は証明されていない。しかし、ニーマイヤーはここ最近コロナ対策に反対するデモや、NATOに反対するデモで頻繁に発言している。彼は、マクシミリアン・エダー元大佐や「Basis(草の根)」政治家ヨハンナ・フィンダイゼンなど、テロリストとして捜査されている人たちをより身近に知っている。しかし自分はロイス公を個人的に知っているわけではない、とニーマイヤーはt-onlineに語っている。

当局にとって興味深いのは、「 ニーマイヤーはいつテロリスト集団と接触し、彼等はニーマイヤーに何を求めていたのか?」ということである。
これは、盗聴した会話や検閲したメッセージの分析から浮かび上がる可能性がある。

ニーマイヤーは「スヴェトラーナ」から文書を受け取ったと主張


ニーマイヤー自身は、「彼女のほうから」接触してきたと強調している。
ヴィッテンベルクでのデモの最中に「スヴェトラーナ」が彼に近づき、「ロイス公からの文書をロシアに届けてほしい」と頼んできたというのである。
彼は文書をそのまま持ちかえったという。"しかし私はそれが一体何なのか知らなかったし、それまでロイス公と私は何の関係もなかった。"

しかし、ニーマイヤーが仮にそれを望んでいたとしても、モスクワで文書の引き渡しが実際に起こることはなかった。
その2日後の12月7日、戦後最大規模の謀略家に対する全国一斉捜査が行われたのである。日が近かったこともあり、テロ未遂との関係を推測したニーマイヤーはその日のうちに当局に連絡し、件の文書の存在を知らせた。そして何度かの問い合わせの後やっと1月になってから、2人の職員が彼の書類を受け取ったのであった。ニーマイヤーはその時の引き渡し証も持っている。
したがって、ニーマイヤーは今回の捜索令状による家宅捜査は大げさで、まったく必要ないものだったと考えている。彼の説明によれば、プーチン宛の郵便物は、すでに捜査当局にあり、しかも彼自身が手渡したものであった。そのためニーマイヤーは、彼に対する司法妨害および公務執行妨害容疑が無根拠であるという理由で、憲法保護局のトーマス・ハルデンワング総裁を告訴した。ニーマイヤーはt-onlineに対し、「自分はなんの責めも負わない」と語った。
さて、これに対し連邦憲法保護局は最初の反応として、関連する証拠品は連邦警察に手渡されているはずだ、と述べた。
連邦憲法保護局からの情報が間違っていないとするならば、連邦検察がニーマイヤーの提供した文書を紛失した可能性があるという事になる。
連邦検察プレスオフィスは、現在進行中の捜査中の詳細については一切ノーコメントである。

とはいえ、警察は手ぶらでかえってきたわけではない。古いデータキャリアや新聞記事、通信手段を確保することも家宅捜索の目的である。現在パソコンや携帯電話は見つかっていない。彼のTelegramのチャンネルからわかるように、ニーマイヤーはモスクワに滞在しており、それらを持ち歩いている。
彼はt-onlineの取材に対し、「あと数週間はモスクワに滞在し、会談を行う予定だ」と語っている。どうやら彼は、自分を対ロシア外交に於いて「一匹狼であり、最後のドイツ人対話者」だと考えているようだ。そして、彼は自分が「ウィリー・ブラントのような(融和的な)オストポリティック(東方政策)を追求する最後の野党政治家」であるがために、弾圧され口封じされることになるだろう、とも主張している。
1997年から2013年までザーラ・ワーゲンクネヒトと結婚していたニーマイヤーは、その親ロシア的な路線を非難されながらもロシアに永住することを望んでいない。彼は、ロシアの国営放送RTの外国人向け番組で、現ドイツ政府への反対派とされる人たちの見解を説明するために、定期的に討論会のゲストとして出演している。しかし、彼はあえてロシア批判もする。「私はロシア政府からの助言も受けない。彼らは彼らで色々反省するべきことがある。」

ニーマイヤーが「ドイツ連邦共和国」"停止 "を宣言


ニーマイヤーは、すでに2022年秋に全ドイツの話題をさらっていた。
9月、ロシアへ向かって飛行中の国際空域で、彼は「ドイツ政権」の停止を宣言していたのだ。彼をトップとする「亡命政府」が、国際法上のドイツ代表を引き継ぐというものだ。
この発言は、ロシアがドイツとの今後の会談の条件としたものであったと、後にニーマイヤーは語っている。その後、セルゲイ・ラヴロフ外相、ドミトリー・ペスコフ報道官、ガスプロム社の社長アレクセイ・ミラーの3人と記念撮影を行った。ニーマイヤーによると、ミラーはパイプラインが爆破される前に、「明日にでもノルド・ストリーム2の電源を入れることができる」と断言したという。当時ニーマイヤーは、ドイツに安価なエネルギーを確保したかったと説明していた。
しかし、このロシア訪問をきっかけに、ニーマイヤー氏に対する捜査が開始された。容疑は、ドイツの安全保障に悪影響を及ぼす可能性のある詐欺行為である。この犯罪は、ドイツ刑法100a条にある「反逆的改ざん」と呼ばれるもので、未遂でも罰せられ、6カ月から5年の懲役に処される。しかし、これらの捜査は検事総長の管轄ではなく、検事総長はあくまで「ライヒスビュルガー」の捜査の一環としてニーマイヤーの家のドアベルを鳴らしたという。



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