上場会見:カバー(5253)、ナンバーワンVTuberを独占
27日、カバーが東証グロースに上場し、谷郷元昭社長が東京証券取引所で上場会見を行った。会社の説明に関する部分を要約した。
運営する「hololive production」はVTuberのプロダクションであり、日本で48人、インドネシアで9人、英語圏で18人が活動している。VTuberは、モーションキャプチャーシステムを使って人の動きをアバターの動きに反映させるバーチャルエンターテイナーのことで、カバーが保有するアバターを操作するシステムを配信者に提供することで活動を支援する。所属VTuberは、北米や日本、東南アジアのチャンネル登録数ランキングでナンバーワンを独占している。
VTuberは、歌やゲーム実況、雑談といったライブ配信を行い、視聴者はコメント欄などを通じて配信者とやり取りできる。配信コンテンツを軸に、ライブイベントやマーチャンダイジング、ライセンスタイアップなどを展開。一般的なYouTuberと異なり、確立したIPで多様なビジネスが売上高を構成していることも特長で、マーチャンダイジングをスケールさせやすい点が強みの1つ。
■エンゲージメントが参入障壁
hololiveのVTuberが人気を獲得している背景としては、「熱量」の高いファンコミュニティの拡大が大きい。ライブ配信やチャットへの返信を通じて、双方向的なコミュニケーションが生まれ、イベントやグッズの企画販売によって、ファンとのエンゲージメントが高まっている。また、ファン自身も切り抜きチャンネルやファンアートなどを通じて、コミュニティを拡大している。これが、模倣困難な参入障壁となっている。
■競合せずに広がるファン層
循環がうまく機能していることで、国内外で100万人以上のチャンネル登録数を持つVTuberが年々増加している。新規デビューに伴いVTuber数も増加しているが、競合せずに幅広いファン層にリーチすることでVTuber1人当たりの収益も増加傾向にある。
hololiveIPの活用による多様なコマース展開で、高い成長性と収益性を両立し、2020年から2022年の間の年間平均の売上高成長率は364%を達成した。直近のプロダクトミックス調整で利益率が一時期低下したが回復しており、今後も新規VTuberの輩出とファンコミュニティの拡大、マーチャンダイジングビジネスの強化を通じて成長性と収益性を高める。
■業績概況
2022年3月期は136億円の売り上げを計上し、前年比138%と急速に成長。ファンのコミュニティは国内外合わせて7200万人を超え、チャンネルの総視聴回数の41%を海外のアカウントが占める。
■メタバースで潜在市場を捕捉
中長期の戦略は3段階に分けて進行している。現在、各地域でYouTubeチャンネル登録ナンバーワンのVTuberを保有するとともに、人気VTuberを安定して育成するプロセスの確立に成功している。第2段階としては、グッズ展開やライセンス事業の加速に注力。第3段階として、メタバースサービスの自社開発でサービスを拡張し、独自の体験価値を作り出し、大きな潜在市場の獲得を目指す。比較的新しいビジネスだが、上場を通過点と捉え、日本から久々に生まれたカルチャーを世界に届けていく。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
※ 会見の質疑応答部分はリンク先でお読みいただけます。