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青い彗星

 青い彗星は、電車のドアが開いた瞬間に、降りる人の隙間を軽やかにすり抜け、車内を端から端まで駆け抜け、一番隅の椅子に座るや、足を投げ出し、任天堂Swichを取り出し、一心不乱にゲームを始めた。
中学生ぐらいだろうか、小さい痩せ型の男の子、髪は青色、緑色に染めているので、結構目立つ。次の駅で電車が止まると、これまた人の間を器用にすり抜けて、一番最初に飛び降りて行った。この一連の電光石火の動きに惚れ惚れと見入ってしまった。私の方はといえば、左足が麻痺しているし体は重いわで、動きも思考もノロノロとしているのに、まるで新しい野生のポケモンを発見したかのような嬉しさが込み上げてきた。
いわゆるADHDと言われるような問題児に入るような子供なんだろう。周囲の人も、なんだコイツという目で見ていたと思うが、何しろ優先席に座って足を投げ出してゲームをしていたわけだし、車内にちょっとした緊張感が走ったのも感じられた。これから先も生きていくことは困難があるように思う。けどこのまま青い彗星、野生のポケモンとして生を全うできるように願って止まない。周囲の人もできるだけ暖かく見守って欲しいと無責任に思う。寝る前にふと思い出すと、本当に青い彗星のような鮮烈なイメージだけが残っていて、羨ましくも元気が出てくるのだ。

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