缶の可能性

1週間の業務が終わり、蒸し暑い金曜日の夜。

山芋が練り込まれたフワッフワのお好み焼きとキンキンに冷えたビールをお店のカウンターで楽しんでいる。

「缶の時代がくるかもね」

カウンターを挟んで、一通りの調理を終えた店主が僕に嬉しそうに言った。

店主は料理と酒、茶缶や包装資材、パッケージの話しが大好物なのだ。

元々有名な洋菓子店のパッケージデザインの仕事をやっていた店主は、デザインや包装資材の話しをすると調理する手を止めてエンドレスで話し続ける、いわばパッケージマニアなのかもしれない。

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僕が今日このお店に足を運んだのは、頬張った瞬間に黙ってしまうほどウマいお好み焼きを食べたかったのはもちろんなのだが、店主のデザインやパッケージ知識を引き出して聞きたかったからだ。

僕はつい最近、製缶会社の営業部に転職をした。パッケージや缶についての知識はもちろん全く皆無。いまは新しい環境に慣れることで精一杯だが、缶を絡めて新たな試みにチャレンジしたいと考えている。

この業界での常識もまだわからない。
右も左もまったくだ。

でも業界の常識に染まるつもりもあまりないのが実は本心で、来年で100周年になる会社の諸先輩方が築いてきた伝統を受け継ぎながらも、たくさんの失敗を繰り返して道を切り開いていきたい。


ビールとレモンサワーでほろ酔いの僕は店を出た。


「缶の時代がくるかもね」

店主の言った意味ってなんだろう?

気持ち良い夜風を浴びながら考えながら歩いて帰った。



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