声を当てる場所
ある生徒さんが「今日久しぶりに家で歌ってみたら、声がなんかうわずってたわ〜。」とおっしゃるので、何かいい方法ないかなぁと。
「声を出す時に、何か自分なりに決まって心がけていることってありますか?」と質問。
「いやぁ、無いなぁ。そういうの欲しいんや。」とのこと。
「じゃあ、よく使われるのを色々試してみましょうか。ではまず、声を常に口の中の天井(上顎)に当てるイメージで声を出してみましょう。」
この生徒さんはイーグルスなどの洋楽が好きで、しかもかなり高い声を普通に出せるので、若い頃にそういう出会いがあればロック歌手かテノール歌手になっていたかもと、いつも感じます。
ただ、今までそういう専門のレッスンを受けずに来ていたので、息の支えにむらがあり、元気な時とそうでない時の違いが顕著なところがあります。
いつも同じ点に声を当てるイメージを持っておくと、その時の自分のコンディションを知る手がかりとなります。
なんだか今日はいつもの場所に当てにくいな、という時は、少し疲れていたり元気がなかったり、あるいはしばらく練習していなかったりということがあります。
そういう時でも、当てるべき場所に当てるよう声を出していくうちにだんだん身体が思い出してフォームも声も修正することができます。
この生徒さんは、口の中の天井に当てるように声を出してみると、もともとの声の良さからちょっとテノール歌手のような響きになりましたが、歌いたい曲は主にロックや歌謡曲なので、少し変えて
「ではおでこに当てるようなイメージで歌ってみましょうか。」とアドバイス。
するとなかなかのロックっぽい響き。
ご本人もこちらの方が気に入った様子ですので、これからはいつもおでこに当てるイメージで声を出すようにしました。
ただ、これはあくまでもレッスンの中で、実際に生徒さんの声を聴いた上でのアドバイスなので、単純に「こうしたらこういう声が出る」ということではなく、人それぞれです。
その人の声の延長線上にある、響く声伸びのある声に向かっている道筋から外れた時に、右に左に軌道修正していく作業がレッスンということになります。
ですので、よくある「高い声を出すにはこうする」「ビブラートするにはこうする」というようなことは、やはり実際に自分の声を聞いてもらって、ということがとても重要だと思います。