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こすずめのこと

もう、十年以上も昔のことになるが
今でも鮮明に思い出されることがある

夏の風の強い昼間、
突然すずめの鳴き声がけたたましく響きはじめた

何事かと思ってベランダの窓を開けてぎょっとした

ベランダの手すり(つまり目の前に!)にカラスが
とまっており、何かをじっと見ている
わたしが窓を開けても
こちらのことには気にもせずじっと見ている

わたしはその方向を見てドキッとした

ベランダに落ちた小さなこすずめが
壁側の隅っこに寄って風に震えていた

お母さんすずめが一生懸命
まるで『危ない!早く飛んでこっちに来なさい!』と
いうように鳴いている
仲間も鳴いている

電柱の箱の中にすずめが巣を作っていることは知っていた

落ちてしまったのだな、、

咄嗟に、カラスに向かってかあーっ!と叫んだら
カラスはバサバサと飛んでいった

小雨が降ってきたので
雨避けになるような箱に
米粒をいれてベランダに出した

こすずめは入りそうになるが入らない

お母さんすずめが必死になって
何やら助けようとしているが
こすずめは飛べない

カラスは何度かやって来て黙って
手すりにとまって見ていた

その度に追い払っていたが
翌日こすずめは動かなくなっていた

カラスに見つかる前に
夫がこすずめを庭に埋めた

何とも悲しい出来事だった

その後もずっと同じ場所に
巣を作っていたが
今年になって電柱の工事があって
すずめたちはいなくなった

今度はどこに住まいを構えたのだろうか

元気でいるだろうか

近くで聞こえるすずめの鳴き声をきくと
懐かしさで一杯になる

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