ARLISSメンバーの書記 #1 PM加藤編
FUSiONで、Mission1の種子島ロケットコンテストチームPMとMission2のARLISSチームPMを務めました加藤です。
今回は、ARLISSチームのPMを務めて学んだことや個人的な心情の変化などをここに書き残したいと思います。
ARLISS大会に参加するきっかけ
私がFUSiONを立ち上げた大きな理由の1つが自らのエンジニアとしての技術向上でした。将来的にエンジニアを目指しているというわけではありませんが、大学の前半までにプログラムや設計・電子回路などの知識を身に着けておくことに損はないと感じたためです。実際その時まではプログラミングもずぶの素人でした。
そして1つ目の目標として種子島ロケットコンテストに出場しました。しかし、優勝したものの、新型コロナウィルスの影響により実際の投下はできず、消化不良な気持ちが残りました。しかし一方で、CanSatの活動を続けていくうえで得られるものもたくさん吸収したので、自分が大会に参加するのは次で最後にしようという思いもありました。それはいくつかの他のメンバーの共通の認識でもありました。そして次の目標として挙げたのがARLISSでした。
ARLISSは国内主催のCanSatの大会では最も規模の大きいコンペティションであり、CanSatとして求められるレベルも格段に上がります。最後に全力で挑んでみたいと思えるとても魅力的な大会でした。
ARLISSの特徴
ARLISSは他のコンペティションとは違う点がいくつかあります。
開催地が海外
走行・飛行距離が長い
実際にロケットを使った投下ができる
多くのCanSatのコンペティションは日本国内で開催されますが、ARLISSは開催地が日本ではなく、アメリカのネバダ州にあるブラックロック砂漠です。
そのため、移動や宿泊にもかなりの準備が必要です。命の危険を感じることも多々があり、海外旅行初経験だった僕にとってはかなり刺激的でした。
またランバック・フライバック両方に言えることとして、ゴールまでの距離がとても長いという点があります。
数キロ単位で走行・飛行しなければならないために、バッテリー選定やどれだけ効率よく機体をゴールに近づけるかなどがカギとなります。
ブラックロック砂漠は周りが地平線が見えるほど広大です。そのため、国内ではなかなか難しいロケットによる投下が可能です。
ロケットの振動なども考えた設計が求められるため、他のコンペティションに比べて試験内容などが厳しく設けられています。
開発を始めて
2022年5月ごろ、2度目のCanSat開発がスタートしました。
1度目の時はすべてが手探りでした。その分つらいことも多かったですが、今回は違います。1度目の経験を活かし、完成までのプランを立てました。
初めに手を付けたのは飛行系でした。理由は他の系に左右されにくいため設計などをすぐに決められるということと、実験などで使用する機会が多く早めに形にする必要があると考えたためです。
パラシュートやエンベロープの設計・作成は自分で行いました。その間に他のチームメイトには、構造の設計や電装の設計を行ってもらっていました。
ゴールデンウィーク中にパラシュートを仕上げ、実験まで行いました。自分たちで決めたスケジュールを忠実に守り進めていけているという実感がわき、充実した開発を行うことができていました。
実験を止めるな
1度目のCanSat開発で学んだもっとも大きなことの1つは、時間があまりにも足りないということでした。
CanSat製作では、実験が不可欠で、それは人員と場所と時間のすべてが整って初めて実行可能となります。こうなると、実験ができる日取りは必然的に決まってきますが、実験をするためにはそれに必要な準備を済ませておく必要があります。
そのため、実験1が終了して次に実験2の準備をして、実験をして、次に実験3の準備をして・・・というような悠長なことは許されませんでした。
そこで、実験1の準備をしているときに2の準備をはじめ、実験1が終わり次第実験3のために開発を進める・・・などと言った、いくつかのレイヤーをもった開発をマネジメントする必要があると考えました。
こうすることで、実験を効率よく回すことができ、結果的に迅速な開発につながりました。
このような開発のマネジメントはとても難しいものがありましたが、他の仲間の協力もあり、自分にとっても勉強となる経験になりました。
こだわりと妥協
開発を進めていくと、少しずつ、現実と理想の乖離が浮き彫りとなっていきます。
スケジュールはえてして(もしくは故意に)楽観的に作られてしまうため、時にはいくつかの面で想定とは違ってる場面がやってきます。
開発の中盤はいくつかの点で、スケジュールや機能を変更しなくてはならない場面に遭遇しました。
今回のチームではミッションとして予定していた画像処理による3Dモデリングがその対象でした。今回のミッションの目玉となっていたこの点は審査書などでも評価が高くぜひとも成功させたいことの1つでした。
しかし、マネジメントのミスや想定していたよりも開発に大きな壁があることがわかり実現性が低いという現実もありました。
基本的に、私や他のメンバーもみな、3Dモデリングを成功させたいという思いはあったものの、それ以上に0mゴールを優先させたいという思いを強く持っていました。そして、3Dモデリングの実装をあきらめ、他の開発に注力することで、0mゴールの可能性が上がるということも共通して認識していました。希望あるミッションがいつしか、開発の足かせとなってしまっていたのでした。
そこで、全員で話し合った結果、ミッションのレベルを落とすことになりました。そうすることにより、0mゴールの可能性を1%でも挙げることが、私たちの選択でした。こだわりをもって妥協を許す。CanSat製作ではそんな取捨選択の精神も学びました。
いざ、出航!
開発での紆余曲折を経て、審査書受理までこじつけた私たちはついにアメリカへ旅立つ日を迎えました。
アメリカに到着してからは、最後に仕上げに入っていました。仕上げに行ったことはとにかくプログラムが止まらないことに注力しました。
もし、センサの値が取れなくなったら…?もし、再起動が行われたら…?もし、プログラム途中にエラーが発生したら…?
どんなこと起きてプログラムが止まっても、すぐにプログラムを再開する。そんなコードを作ることに時間を使いました。
「何が起きてもゴールまで機体を到着させる。」
そのことだけを考え、プログラムの改良を続けていきました。
2度の投下と失敗
そして迎えた投下当日。その日の夜中まで、思いつくすべてをつぎ込み、1回目の投下に臨みました。しかし、結果は臨んだ形ではありませんでした。
投下した機体はロストし、その日中に見つけることはできませんでした。
次の日、私たちは動き方を慎重に検討しました。ロストした機体を見つけたい気持ちはありますが、予備機体の調整もし、次の投下に備えたいという思いもありました。
そこで、チームをロストした機体を探す班と、機体の調整を探す班で分けることで、機体の捜索と機体の調整を同時並行で行いました。
結果としては、ロストした機体を速く見つけることができ、その日中に原因の究明を進めることもできるようになりました。
2回目の投下では1回目の投下での不具合の原因を踏まえてさらに改良して臨みました。しかし、今までで一度も起こったことのない不具合が起き、0mゴール達成とはなりませんでした。
ARLISSを終えて
ARLISSの全日程を終えて、マネジメント面で学ぶことが本当にたくさんありました。
チームとしては満足のできる結果を得ることはできませんでしたが、他のメンバーとの議論や、つらい開発を続けていくうちに、チームで何かを成し遂げるために必要なことが少しずつ見えてきました。
開発・チームマネジメントを進めていく中で学んだことは今後の様々な活動に活かしていきたいと思います。
FUSiONの今後の活躍を期待してむすびとさせていただきます。
ありがとうございました!