423 水軍の歴史薫る瀬戸内・真鍋島で猫と戯れた日。
2月以来の中国地方。岡山県の西端、笠岡市に来ました。すぐ隣はもう広島県です。
笠岡といえばカブトガニが有名。笠岡界隈の瀬戸内海には日本で唯一カブトガニが生息していてマンホールもカブトガニのデザイン。かなりカブトガニ推しですが、今回の主役は猫。笠岡の先に「猫の島」と呼ばれる離島があるのです。
駅から徒歩5分ほどで笠岡港に到着します。目的の島までここから船が出ています。この日は生憎どんよりした曇り空。離島にはスカッとした青空がよく似合うんですが残念です。
笠岡市はその南に笠岡諸島と呼ばれる離島が点在しています。かつては最も大きな北木島を中心に高品質の石が切り出されていたそうで、日本の礎を築いた功績が認められ日本遺産にも指定されています。今回わたしが行くのは地図の右下にある真鍋(まなべ)島。笠岡港からいくつかの島を経由していくので普通船舶で1時間ほどかかります。海上タクシーなら25分だそうです。10,000円かかりますが大人数なら船(1040円)より安くなります。
それでは船に乗って真鍋島に参りましょう!
真鍋島には2つの港があります。主要な集落があるのが本浦(ほんうら)港。やや小さい集落があるのが岩坪(いわつぼ)港です。
まずは岩坪港で下船しました。笠岡からの船は岩坪港に先に帰港します。真鍋島から出る船は本浦港を出てから岩坪港に寄って笠岡港に向かいます。帰港する順序が往路と復路で変わるので注意が必要です。
さて、先ほども申し上げましたが真鍋島は「猫の島」として有名です。ただ、これまでもいくつか島を訪ねましたがどの島も大抵猫がいました。漁村に猫はつきものです。真鍋島はそんなにたくさん猫がいるのでしょうか。
岩坪港を出て1分で猫に出会いました。人懐こく「にゃ~」と鳴きながら寄ってきます。
第一猫の鳴き声に誘われて第二猫も出てきました。早速の猫のお出迎えにテンションが上がります。
どんどん猫が増えてきます。足元に来て体を摺り寄せてきます。そう、もちろん猫たちの目的は「エサ」。でもこのときはアンパンしか持ってなかったのでごめんよーと言ってスルーします。
岩坪の集落はやや傾斜のきつい坂道に沿って作られています。島特有の狭い坂道。こういうの大好物です。車は通れないのでバイクが活躍します。
ここにも猫がいました。今まで訪ねた島の中でも断然猫の数が多いです。もうわかりました。ここは確かに「猫の島」です。
坂を上る途中、地元の方に会いこんなプレゼントを頂きました。なんでもこの先の城山展望台の手前で花畑を作っているそうで行ってみることにします。
展望台までの道を花で彩る「城山の小径」と呼ばれる自作の庭園。思った以上に手が行き届いてきれいでした。いつまでもこの庭園が美しくあり続けてほしいと思いました。
岩坪港から登り続けて20分ほどで城山展望台に到着します。小さな島の展望台なので何があるというわけではないですが達成感があります。曇り空でも周辺の島々が眺められる絶景ポイントです。
手前に見えるのは佐柳(さなぎ)島。実はここも「猫の島」と呼ばれています。
かなり近いのですが佐柳島は香川県。笠岡から行くには土曜日、真鍋島の本浦港から出る週1回の船便しかありません。通常は香川県の多度津港からアクセスすることになります。こんなに近いのに県の壁が厚く本州側からのアクセスは悪いのです。
城山から下りてくるとき、こんなとこにも猫がいました。ちょっと警戒心が強い性格のようです。
岩坪港に戻ったらさっきの猫がいました。堤防に登ってまたエサをねだってきました。そんな猫たちのエサクレ攻撃をかわして今度は西側の集落、本浦に向かいます。小さな島なので10分強歩けば着いてしまいます。
と、本浦の港の前にこんなものを見つけました。
300円入れてガチャガチャの感覚でダイヤルを回すとキャットフードが出てきます。この島には店らしい店はないのにキャットフードは売ってる。さすが猫の島。
ガチャガチャのダイヤルを回した直後、背後で「にゃ~」という声がしました。
ガチャガチャを回すときはいなかったはずなのに…音を聞いて飛んできたのでしょう。恐るべし。というわけでエサやりタイムです。
このあと本浦と岩坪の間でも猫に会いました。島出会えた猫は15匹くらいでしょうか。それでもこの島の猫はかつてに比べると減っているそう。人口も200人以下と最盛期の15分の1ほどまで減っているのでそれはそうかと思います。かつては堤防沿いに人も猫ももっと暮らしていたのでしょう。
真鍋島はかつて真鍋水軍と呼ばれる海賊の本拠地でした。平安時代に端を発し、戦国時代には織田信長について和泉大津を統治しています。中四国には真鍋という苗字が多いですが、そのルーツはこの島にあります。タレントの眞鍋かをりさんも愛媛県出身ですね。
岩坪に比べると本浦は平坦な集落です。道は狭く、先が曲がって十字路はなく見通しは悪くしています。敵が来たときに防御しやすくするためです。真鍋水軍が活躍した中世の町割りがそのまま生き続けます。
風光明媚な真鍋島は多くの映像作品の舞台になりました。なかでも有名なのが夏目雅子さんの遺作となった「瀬戸内少年野球団」(1984年)。撮影の一部が真鍋島で行われ、真鍋中学校は生徒の通う学校となっていました。昭和24年に建てられた校舎は今も現役。板張りの壁がエモすぎます。
2時間ほどの散歩で主要なスポットをめぐることができる小さな島、真鍋島。ゆったりとした島時間が流れる中、猫とも戯れることができて気持ちをリフレッシュすることができました。せわしない日々を忘れさせてくれる島の存在は私たちの生活にとって必要と感じます。みなさんも日常に少し疲れたなと感じたらふらっと船に乗って真鍋島を訪ねてゆったりした時間を楽しんでみてください。