165 鉄道史に残る桃歴史?いや黒歴史。愛知・ピーチライナー
今日は有給休暇をとり、実家に戻りました。
アルバムを開いていたところ、懐かしい写真が。
鉄道に詳しい方ならお判りでしょうが、愛知県小牧市を走っていた桃花台新交通(愛称・ピーチライナー)という新交通システムです。
走っていた、とお話しした通り2006年9月30日をもって廃止。
上の写真の日付は同年9月27日となっていますので、営業終了の4日前に撮ったものになります。
廃止の前に乗っておかなくては!と思い、幼稚園を終えた息子を連れて1時間以上かけて小牧駅まで来て最初で最後のピーチライナー乗車を楽しんだのを覚えています。
さて、そのピーチライナー。開業からわずか15年で営業終了という現代の鉄道にあっては異例の短命路線となってしまいました。
ピーチライナーは名鉄小牧線の小牧駅から桃花台東駅を結ぶ新交通システムでした。すべて小牧市内で完結する路線です。
桃花台は50年ほど前から新興住宅地として市、県が中心となって開発を進めてきた大規模団地。ただ鉄道がないことがネックとされており当初から鉄道敷設の計画が持ち上がっていました。当初は小牧駅から同じくニュータウン開発が進んでいた春日井市の高蔵寺駅を結ぶ予定でした。
役人お得意のザルのような乗客予測をもとに計画が進められ1991年に開業。ところが1日9000人と予想された乗車人員はふたを開けてみれば3300人という有様でした。
その理由としてピーチライナー開業当時の名鉄小牧線は名古屋方面は上飯田駅まですか行っておらず、地下鉄平安通駅まで1キロ以上を歩いて行かないといけない状態で不便極まりなかったことが挙げられます(上の地図のオレンジの線部分。今は地下鉄上飯田線がつながっています)。また、小牧駅での乗り継ぎが悪い、運賃が300円(のちに350円)と高い、という諸問題がありました。
採算が悪いことで春日井方面への延伸計画はストップ。小牧市と春日井市は歴史的に不仲で春日井市も延伸に協力的ではなかったと聞きます。
桃花台の住民は便利で速いJR中央線の春日井駅へのバスを要望しましたが県はピーチライナーがあるじゃないか、として拒否。2002年に自主的に交渉してバス路線を敷設してしまいます。2003年に先の地下鉄上飯田線が開通して1キロ以上歩く苦行から解放されましたが、乗客がさして増えることはなく、2006年に債務超過に陥る見込みとなってあえなく廃線。平成時代に開業した路線で不採算を理由に廃線したのはこの路線だけです。
廃線時には資金がなく2000年に変更された新500円硬貨も、野口英世の新1000円札も券売機で使えない(機械を更新できない)有様。開業時からずっとピンチライナーと揶揄されてきた路線は一度も浮上せずに廃線となりました。
終点の桃花台東駅の先で折り返しループ線を通って反対側のホームに入る車両。他では見られない独特の光景でした。
鉄道史に残る黒歴史を作ったピーチライナー。この反省を踏まえてあらたなインフラを整備するにあたってその採算性をよりシビアに検討してもらいたいものです。
一度敷設してしまった路線の後処理もお金がかかります。2020年3月に小牧原駅に来た時もまたピーチライナーの駅舎や名鉄線の上を超える線路が残っていました。いよいよ撤去工事が開始されて今はもうないかもしれませんが、廃止後さらに15年。運行されていた期間より長い期間解体もできなかった。甘い見込みのままインフラを作る罪は重いことを思い知らされますね。
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