299 朽ち果て行く鉄道遺産・タウシュベツ川橋梁を訪ねる
前回のブログでは旧・国鉄士幌線の廃線跡を訪ねました。
士幌線はアーチ橋の多い路線であり、廃線となった後も数々のアーチ橋が森の中に遺されているのですが、今回ご紹介するのはダムの下の沈んでしまった幻のアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」です。近年インスタ映えするとのことで鉄道ファンのみならず一般の方からも人気を博しています。
タウシュベツ川橋梁はダムの水嵩の少ない冬に姿を現し、水嵩の増える夏になるとダムに沈み姿が見えなくなってしまう故「幻のアーチ橋」と呼ばれているのですが、今年は雨が少ないうえ暑くて電気消費量が上がっているためダムからの放流があり、夏になっても水嵩が増えませんでした。
水不足は心配ですがタウシュベツ川橋梁見学にはもってこいの条件ということで、長年行ってみたかった幻の橋の見学をすることにしました。実は今回の北海道旅行の一番の目的がここでした。
温泉のある糠平地区にある「ひがし大雪自然ガイドセンター」。タウシュベツ川橋梁を間近に見るためにはここのツアーに参加する必要があります。2時間半ほどのツアーで料金は4500円。これに参加しないで橋を見るためには700mほど離れた場所からの見学となります。駐車場も狭く競争ですし、なにより遠くて見ごたえがないです。
ガイドさんと一緒にワゴン車に乗り、タウシュベツ川橋梁に続く道を行きます。ヒグマ出没!という看板がそこらじゅうにあります。ここでは十分以上、十二分に注意が必要なのです。
ワゴン車3台のツアーでしたが銭湯の車が停車。わたしの乗る車に無線で「クマいるよ!」と教えてくれます。え、ホントにクマいるの!?とちょっとビビります。
いたのは子熊で写真も撮ったんですが、奥の方で写真だとどれがクマかわかりません。ガイドさんによれば「いつものクマ」らしく、ここで見かけるのは珍しいことではないとのことです。北海道恐るべし。
さて、空き地に車を停めてあとは廃線跡を少し歩きます。ここに線路があったなんてにわかに信じがたい思いです。ここを抜けるといよいよタウシュベツ川橋梁とのご対面となります。
殆ど水のない広大なダム湖の中を渡る老朽化したアーチ橋。
これが長年わたしが会いたかった橋、タウシュベツ川橋梁です。
タウシュベツ川橋梁はダム湖である糠平湖ができる以前の士幌線旧線にあります。1939年に供用開始されましたが1955年に使用を停止してその後ダムに沈みました。現役だったのはわずか16年のみでした。線路はダムに沈まなかった糠平温泉側に新たに敷かれています。
全体的に痛みが激しいのですが、特にアーチの中央部分の損傷が激しくなっています。もう繋がっている橋をみれるのは今年で終わりかも、と言われ続けて10年。なんとかつながり続けているのですがかなり頼りない状態。いつ途切れてもおかしくない状態です。
前回士幌線のブログでご紹介した橋はここまで老朽化していませんが、同じ時期に造られたタウシュベツ川橋梁だけなぜ損傷が激しいのかといえばやはりダムに沈んでしまうから。水圧に耐えなければいけないうえ、冬はしみこんだ水が凍って膨張するので老朽化したコンクリートを壊してしまいます。
沈まなかった橋と比べると10倍老朽化が早いのだそうです。
哀愁を誘う光景が話題を誘い、この地域の一番の観光スポットなんですが、保存の動きはなく、ゆっくり朽ち果てていくのを待つ状態となっています。
他の橋と違いタウシュベツ川橋梁はダムに沈んだため所有者がいません。ダムの管理者の電源開発の管理下にあり、町も手を出すことはできません。保存しようにも通常より10倍速いペースで朽ちていくコンクリートを保存する術がわからないことからこのまま朽ちていくのを見届けるしかないのが実情です。
さっきの写真にあったようなつなぎ目の細い部分が途切れても見ごたえは十分あると思いますが、橋脚が倒れてしまうともう見に来る人はいないだろう、そのときタウシュベツ川橋梁見学ツアーは終わってしまうのだろうとガイドの方が話されていました。
ローマやギリシャなど外国の遺跡にいるかのような錯覚を覚える日本離れした廃線、タウシュベツ川橋梁。その立ち姿はとても美しくどこを切り取っても絵になります。全体がつながっているうちにツアーに参加してこの神秘的で雄大な橋の景色を是非間近でご覧ください。