「スポーツアナリティクスジャパン2023」は5/20(土)に虎ノ門ヒルズとオンラインでハイブリッド開催します
この記事の要約
SAJ2023の概要紹介
日本スポーツアナリスト協会(JSAA)が主催する今年のスポーツアナリティクスジャパン(SAJ)は5/20(土)に行います。第1回から自分は関わっており、去年はプロジェクトマネージャーとして動いていましたが、今年は全体のマネジメントではなく、コンテンツ企画の統括の役回りをメインで担っています。
昨年途中に自分が会社を立てて独立したので、さすがに今年も全部をボランティアで担うということはできず、今年は部分的な関わりをしています。
現在、12セッションが公式HPで公開されています。昨年と同程度の規模になる予定なので、自分の専門分野である野球系なども含めて、このあともまだセッションは公開されていきます。早割は4/30までなので、行く(見る)予定の方は本日中に購入頂くと良いかと思います。
ちなみにアーカイブ配信もあるので、当日リアルタイムで参加できなくともオンラインで購入いただいて問題ないです。
今年SAJのテーマ
今年のテーマは「Connecting The Dots」です。込めた意味は上記の通りです。
ここに個人的な解釈をちょっと加えてみます。
スポーツアナリティクスが一般化される中で、関わる人が多くなり、より領域特化した専門家がたくさん出てきている。ただ、日本のスポーツは産業として圧倒的な成長している領域ではなく、お金が潤沢にはない業界である。この中で個別化が進むと関係者が牽制しあい「スポーツアナリティクスを文化にしていこう」という取り組みが生まれづらい。
そのようなニッチな産業の中で、個別の利害関係ではなくもう少し大きな枠組みで業界の問題を表面化させる場や、ネットワーキングをする場を「スポーツアナリストという本来経営側ではなく雇われる側の人々が、積極的にスポーツ産業の経営陣や業界内外の専門家に働きかけて作っている取り組み」がSAJだと認識しています。
日本でのスポーツアナリストの歴史の話
自分は「野球のアナリスト」と名乗っていますが、日本の野球でアナリスト的な役回りを担っていた人は「スコアラー」もしくは「スカウト」と呼ばれていましたし、いまでもそう呼ばれている人のほうが多いです。
サッカーでもアナリティクス乗務を担うスタッフは「テクニカル」という呼び方が多く、「〇〇アナリスト」という言葉が日本でどの競技にも浸透したのは2010年代です。
日本のスポーツアナリティクスの歴史に関する詳細は今年中にはまとめようと思いますが、2000年代にあった業界の変化として
と、大きく言えばこの2つの流れがあり、前者の流れでプロスポーツ系、後者の流れで五輪競技のスポーツアナリストの卵が育成され始めた、という経緯があります。
その流れの中で「スポーツアナリスト」という肩書きで世に出たのが2012年ロンドン五輪での女子バレーボール銅メダル獲得時のアナリスト、渡辺啓太さん(日本スポーツアナリスト協会代表理事)でした。
渡辺さんはどちらかといえば後者の文脈に入ると思いますが、大学入学時からアナリストをやると決めてやっていた人なので、女子バレーボールのアナリスト募集が先にあったわけではなく、常にチームに貢献できる機会を自ら創り出していたタイプです。
下記は2011年の記事ですが、この頃に五輪競技の代表チームでは渡辺さんが一番最初に奥深くまで入り込んでいた認識でして、それはオファーありきではなく、最初から自分で機会を生んでいたからだと思っています。
ちなみに、前者の流れでは2000年代に球団で活躍し始める人が出てきており、行木茂満さん(現ロッテ)はその象徴的存在だと考えています。自分も2004年の大学2年生のときに行木さんの野球アナリスト養成講座に行きました。
スポーツアナリストが「カッコいいもの」としてブランディングされていった時代
2013年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まると、当時のビッグデータやデータサイエンティストブームも相まって、スポーツ×データ活用への光のあたり方が大きく変わります。
例えばNHKでのスポーツ×データの番組を見ても、2010年代前半は「ザ・データマン」のような旧来型のオタク番組という感じ。「スポーツ×データというのはちょっと変なことをやっていて、変で面白いね!」という取り上げ方でした。
それが、2016年には「スポーツデータ・コロシアム」となり
2017年には「スポーツイノベーション」として、スポーツでのデータの活用は単なる数字遊びじゃなくて、物事を変えていくカッコいいものだ!というブランディングがされていきます。
そのような時代の中で、2013年にマルチサポート事業に関わっていた人たちの中で発足していた競技横断のアナリスト勉強会に端を発し、2014年に渡辺さんを代表理事に据えた日本スポーツアナリスト協会(JSAA)が発足。SAJ2014の開催に繋がります
このように、SAJというイベントは「スポーツアナリストというまだ何者かよくわからない人たちが主体的に機会を創り出して、自分たちの可能性を広げていく」という取り組みにアイディンティティがあります。
東京2020以降は予算、仕事が減ることがある程度見えていた日本代表チームのアナリストが中心となって生まれており、職能、職域を拡大すること、可能性をPRすること、ネットワークを広げることの必要性はプロチームに所属するアナリスト以上に切実な問題だったということも付け加えておきます。
9年目のSAJはどのように変わってきたか
このような歴史の中で9回目を迎える今年のSAJですが、コロナ禍もあって当初まったく想定していなかったイレギュラーな東京2020を乗り越えて、新しいフェーズに入りつつあります。
当初の目的は残しつつも、新たな世代を実行委員に加え、社会的な意義や次世代のアナリストが抱えている問題を取り上げています。その結果、今回はいままでにはなかったテーマもセッションで取り上げています。
特に、SAJがモデルとしているMIT SSACでは今年女性登壇者が50%を超えているのですが、SAJでは過去どの回でも10%程度にとどまっていて、本来扱うべきテーマが取り扱えていない可能性があることが大きな問題です。
スポーツアナリティクスはスポーツの問題を解決する方法論であり、スポーツに携わる人は男女同じくらいいるはずなので、男女とも同程度の数が問題に直面しているはずです。自分も今回はその点を大きく考慮に入れてセッション企画を進めていますが、まだ道半ばな状況です。
また、この規模のイベント実施にはパートナー企業の支援が欠かせないのですが、SAJの取り組みや方向性に共感し、セッションパートナーとして参画することに価値を感じていただける企業の皆さまが今年も多くいらっしゃることはとてもありがたいです。
SAJは「現場スタッフが自ら機会を作り出していく取り組み」だから面白い
以上、今年のSAJの概要とこれまでの経緯を簡単に紹介しました。
具体的なセッションの紹介はここでは省きますが、このような取り組みに自体に持たれた方はぜひ中を覗いていただけると幸いです。
スタッフが自分たちの未来のために、労働組合を作って戦うのではなくてカンファレンスを創って経営層を巻き込んだムーブメントを創る、という取り組みは、現場のこだわりが強い日本だからこそのやり方だとも思います。
このやり方は国際的に見て正攻法ではないと思うものの、面白みはとてもありますし、汎用型AIの精度向上により個人が主体的に様々な役回りを演じられる現代では、今後各産業で起こっていく取り組みなのではないか?とも思います。
ぜひ、5/20に熱量を体感していただければと思います。