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日本スポーツパフォーマンス学会でのポスター発表の報告 〜IPBLデータレポート(8月5日週号)
日本スポーツパフォーマンス学会でポスター発表を実施
7月16〜18日のSPORTEC2024の中で行われたスポーツパフォーマンス学会で、6月の四国アイランドリーグplusでの測定会の結果について報告しましたので、今回はその内容を残しておきます。
ウェッブジャーナル「スポーツパフォーマンス研究」の特徴
1、スポーツにおける実践活動に直接寄与する知見を、インターネットによるウェブ上で提供する。
2、スポーツ実践に欠くことのできない画像データ(動画を含む)を掲載する。
3、自然科学的な手法や社会科学的な手法など、従来の親科学の方法論に限定されない。
4、対象者の人数とそれに伴う統計学的な手法の有無に限定されない。
5、スポーツにおける専門性を考慮し、一般的に現場で利用されている考え方や用語を用いて論理を展開する。
6、実践に生きる専門家が共有できる実践知や身体知を創造し、蓄積していく。
スポーツパフォーマンス学会は記載の通り、スポーツの実践に生きる知の創造が目的となっています。
独立リーグの選手全体を対象にした網羅的な測定は今まで例がないと思いますので、今後の野球の普及振興の実践に何か役に立てばと思い、データをまとめて考察を発表しました。
測定会でどのようなことを行っていたかは次の記事をご覧ください。
なお、今回の研究発表は四国アイランドリーグplusと鹿屋体育大学との共同研究の一環として行っています。
※記事執筆前提となるリーグでの自分の役割は、次の記事をご覧ください。今年はIPBL(日本独立リーグ野球機構)全体のデータ活用もみているため、タイトルを昨年度から変更しています。
独立リーグに所属する野球選手の競技レベルを決定する要因に関する調査研究
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今回は「独立リーグに所属する野球選手の競技レベルを決定する要因に関する調査研究」というタイトルで、四国アイランドリーグplus(IBLJ)のメンバーと鹿屋体育大学の鈴木智晴先生、Rapsodo Japanの花城健太さんとの連名で発表しています。
当日はポスター発表の前に1分間で概要を紹介する場もあり、そのときに使ったまとめスライドがこちらです。
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今後の展望の補足
結果と考察の詳細は添付したファイルを見ていただくとして、今後の展望に関していくつか補足しておきます。
今年中にはStuff+の試作を試したい
試合以外の場での球質データから競技レベルを推定する指標開発についてですが、今年中には練習中のデータに加え試合中の球質のデータの定常的な取得をトライして、投手がMLB、NPB、独立リーグの中でどの程度通用する球質なのかを測るStuff+を試作しようと考えています。
NPBはトラッキングデータと1球ごとデータが揃わないので各球団の協力を仰がないと作れないですが、MLB版と独立リーグ版は各イベントの得点価値の算出も含めてやりようがある認識です。
アスリートの認知能力を測る、育てる機能をどこがどう持つか
今回の測定会で「読解力テスト」を試したのですが、選手ごとに大きく結果がバラけたことは興味深いことでした。
選手の競技成績と認知能力の関係性については、先行研究でも「認知能力が高ければ競技成績も上がる」という単純な関係にはなっていない認識ですが、「野球を通して社会で活躍する人材を育成する」ことをリーグの価値の重要な点として事業を行っています。
そのため、選手の認知能力を高めて野球の競技成績を上げ、社会でも活躍する人材を育成するにはリーグはどのような機能を持つべきか?という問いを持っており、その観点から今後も継続して認知能力の測定、育成の方法を検討して行く予定です。
今回は「読解力」に焦点を当てて、公開されている日本速読解力協会のテスト「よみとくん」を試してみましたが、公開されているがゆえに一度使ってしまうと二度目は使えない方法なので、今後は他の方法、さらに良い方法がないかを検討しています。
アスリートの競技力に閉じない認知能力向上プログラムは中高生年代の現場にも応用できるものだと思いますので、もし興味ある方やすでにそのようなソリューションを持っている方がいましたらご連絡いただけると幸いです。
リーグがデータを資産として保有していく価値
以上、今回の測定会の取り組みの学会発表の紹介と、今後の展望に関する補足をしました。
リーグが主体的に企画して保有するパフォーマンスに関するデータは、一時的な事業だけでなく将来に向けた強化、普及にもつながる資産となります。
今回はNPBの球団に向けたデータの販売も行っているので短期的な事業価値にもつながっていますが、今後もデータを中長期的に事業を行うための資産として捉え、積極的な活用環境の整備を推進していこうと思います。