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BARでの話
私のBARには女性客が多い。
偶然ではなく、戦略的にそういう集客方法をとっている。
昼間にはコーヒーを飲みながらおしゃべりしにくるお客さんもいる。
世間でキャリアウーマンと呼ばれてそうな人もいれば、共稼ぎの奥さん、彼氏と同棲中の女性に、結婚歴数十年の専業主婦もいる。
そして、みんなそれぞれに悩み事も抱えている。
「70代の両親が離婚するとか言い出して・・」と頭を抱え込んでいる兄妹のいない30代の子や、子宮筋腫の手術を医者から勧められているが、怖いからと決断がつかない子もいる。
子育て中のお母さんは、毎日時間に追われて息抜きの暇がないと嘆いているし、結婚歴の長い主婦は、大抵ご主人への不満が乗車率180%を超えていて、心の身動きが取れずに人生を諦めている口ぶりの人が私集計的には90%を超えている。
そんな愚痴や悩みを打ち明けられては、笑い話にすり替えるように話力の研鑽に努めてはいる。
みんな、身内以外に対話できる相手が居なさすぎるのだ。誰かに聞いてもらうだけでも気が楽になることはたくさんあるだろうに・・・。
そんな感じで、他では打ち明けたことのないような身の上話を聞くことにはかなり慣れてきて、そろそろBARのマスターから「お悩みカウンセラー」に職業を変えようか?と思ったりもしている。
そんな今日この頃だが、時々「なんで今、私にそれを喋った?」と理解に苦しむ言葉を聞くことがある。
それは、
40代の独身女性がなんの脈絡もなく、「私、ピルを飲んでるから。」とか、20代の独身女性がやはりなんの脈絡もなく「今日で女の子の日が終わるから。」とか・・・・。
なんで?
下ネタなんて何も言ってないし、私が口説こうとした覚えもなければ、そんな雰囲気を演出した覚えもない。
そやのに、いきなりなんで?
そんな出来事を他の女性客に、「なんでわざわざ男の私にそんなことをご開帳すると思います?」と冗談混じりに訊いてみると、「マスターのことを信頼してるんとちゃう?」と真顔で返してきた。
いや、そういうことってわざわざ彼や旦那でもない男に言わんやろ!
いや、言うな!
どっちかと言ったら、普通そういうことは隠すやろ!
シルエットの透けない薄型とか、デオドラント効果で匂わんとか・・・
(心の声です。)
信頼されているというより、女ともだちと同様に認識されてる?
信頼されるのは嬉しいけど、少しは男として警戒もして欲しいまだ男の私がいる。