直ちに『感電』⚡️したい件 その1
米津玄師『感電』予報 『Lemon』、『TEENAGE RIOT』、『Flamingo』、『海の幽霊』、『馬と鹿』の次は!?。
ああ、早く感電したいなぁ。
コロナウイルス感染拡大防止のため、ドラマ『MIU404』の撮影が中止となり、放映が延期されてはや一か月。必然的に米津玄師さんの新曲『感電』も「おあずけ」となりました。
これは、ドラマ主題歌となるという発表前から思っていたことなのですが、今度の米津さんの新曲は生きることを「楽しむ」ような曲になるのではないかな、ということです。『MIU404』は星野現さんと綾野剛さんのバディ物で予告を見る限りはコメディタッチ。そして、そのドラマの主題歌でタイトルは『感電』ということなので、ポップで「楽しげ」な曲になっているのは、間違いないと思います。
では、なぜ私がそんなふうに思ったかというと、『Lemon』以降のシングルA面作品が「生の世界から死の世界へ、そして、また生の世界へ向かう」という流れがあるなぁと思ったからです。
『Lemon』生きている側からの「死」
平成から令和へと元号をまたいでの大ヒットとなった『Lemon』は『MIU404』と同じく野木亜紀子さん脚本の『アンナチュラル』の主題歌でした。人の死がテーマのこのドラマは主題歌『Lemon』とともに多くの人の心に届きました。
米津さんは『Lemon』制作中に実のおじい様を亡くされ、「バッと自分の脇腹に辺りに、目に見える形で、死というものがぶつかってきた」そして「あなたが死んで悲しいですということを、4分間ずっと言ってるだけの曲になってしまった。」と、いづれも特別ラジオ番組『米津玄師 ■■■■■■■■とLemon。』の中で語っています。
つまりは、生きている側から見た「死」、死の世界に旅立った、もう会うことができない愛する人への悲しみを吐露した作品と言えます。
『TEENAGE RIOT』と『Flamingo』自分自身が死の世界へ
全く異なる雰囲気のこの2曲には歌詞に共通する言葉が一つだけあります。
それは「地獄」。
「地獄の奥底にタッチして走り出せ 今すぐに」『TEENAGE RIOT』
「地獄の閻魔に申し入り あの子を見受けておくんなまし」『Flamingo』
「地獄」はもちろん死者の世界。意外に思われる方がいるかもしれませんが、この2曲の共通項は「死」だと思います。
サビの部分は中学生の時にできていたという『TEENAGE RIOT』。
これはTEENAGEつまり思春期のことをテーマにしていますが、思春期というのは、子どもの自分が「死」を迎える時期でもあるのです。日本でいうと「元服」 ー髪型、服を大人のものに改め、名前を幼名から実名に変えるー 。他の国でも思春期に命を危険に晒すようなイニシエーション ー通過儀礼ー を行うことが多いのは、自分の内部で「死」が起きるためでしょう。
子どもである自分の「死」。
それを最初のフレーズ「潮溜まりで野垂れ死ぬんだ」と表現しているのだと思います。そして「今サイコロ振るように 日々を生きて」、江戸時代の「元服」のように目に見える形での通過儀礼がない現代は「サイコロ振る」つまり何がでるかわからない博打のように生と死を行き来する、あやうい時期でもあるのです。
その危うい時期を超えた時、子どもである自分が死に、新しい自分が生まれることを
「歌えるさ カスみたいな だけど確かなバースデイソング」
と最後のフレーズで歌っているのでしょう。
『Flamingo』の歌詞に直接的には「死」はでてきません。
ですが、MVには「死」が散りばめられているように感じられます。
『Flamingo』MV https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
まず、MVの冒頭、地下駐車場らしき所に場違いな木が映し出されます。曲がって生えている木、そして手前には二本の柱。これを見た時、私は能舞台を連想しました。木は「鏡板」に描かれた老松、二本の柱は目付柱と脇柱を模している気がします。
『Flamingo』MV 冒頭
能舞台装置
⑨鏡板 ⑥目付柱 ⑦ワキ柱
能の題材は、ほとんどが死者との対話です。そして、米津さんがいるのは地下駐車場。地下は死者のいる世界で、それを証明するかのようにMVの途中では地獄の亡者を思わせる人たちも登場します。そして、気だるげに踊る米津さんの姿は『Lemon』で愛する人が行ってしまった死者の世界へ赴き、戯れているようにも見えます。
また、米津さんはなぜか跛を引いています。これは、宗教学者の中沢新一さんの著書『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)』からの受け売りなのですが跛をひく人は「生と死の仲介者」の意味を持つそうです。
また、この『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1)』に私がであったきっかけは、米津さんが主題歌を提供した映画『海獣の子供』とドキュメンタリータッチの映画『トゥレップ「海獣の子供」を探して』からです。
ちなみに、令和元年8月12日(月)京都 出町座で開催された【対談イベント:“海獣の子供”は何処へゆく】渡辺歩監督(『海獣の子供』)×山岡信貴監督(『トゥレップ「海獣の子供」を探して』)を私がまとめたものが、『“海獣の子供”は何処へゆく』として、noteに載せてあります。
良ければ、ご覧下さい。
『TEENAGE RIOT』は、自分の内部で起こる、子どもである自分の死。
『Flamingo』は『Lemon』で愛する人が行ってしまった死者の世界に出掛けて行っているという気がします。
少し、長くなりましたので続きは その2で。
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