「あんたが悪いからだよ」の呪いと米津玄師
「あんたが悪いからだよ」
母が感情的になって、怒鳴り散らすときはこれが前提条件だった。
そして、これらは自分に自信のなさとそれとは逆に自分にいったん怒りの感情が巻き起こると相手が悪いからだ、自分は悪くはないという考えに陥ってしまう癖を植え付けた。
こんな自分が人間関係が上手くいく筈もなく、学生時代は友達ができなかったし、仕事をしてからはいくら無理して働いても、評価されることはなかった。
家庭ももって子供も二人いるが、子供との関係も一人とは壊滅的に悪い。
自分が上手くいかないのは親のせいだ。
そんなふうに考えたら、自分の親はそのまた親のせいにするのだから、きりがない。
だから、親のせいだと考えてはいけないと思っていた。
自分が悪いのだと。
「あんたが悪いからだよ」
母が怒鳴り散らすのも
学校でいじめられるのも
友達ができないのも
職場で仲間外れにされるのも
私が悪いのだと
親のせいにしてもはじまらない。
でも、そこに一度向き合わないと私は幸せにはなれない。別に親を責めようというのではない。
自分が受けた傷から、自分の感情の動きを分析して自分の感情に振り回されないようにするのだ。
「あなたが思うほど あなたは悪くない
誰かのせいってこともきっとある」
米津玄師さんのアルバム「YANKEE」に収録されている「WOODEN DOLL」の歌詞だ。
米津玄師さんのファンになったのは、もしかしてこの言葉に出会うためだったのかもしれない。
「あんたが悪いからだよ」
この呪いにかけられて
「いつだってそうだ 心臓の奥で 誰彼彼も見下しては
見下される恐ろしさに 苛まれて動けずに」いた私。
「あんたが悪いからだよ」
「WOODEN DOLL」は、この呪いを解いてくれる呪文なのだ。
米津さんも、この曲はもっと若い人に向けて書いたのだろうから、まさか自分の親の年齢に近い人間が救われるとは思ってもみないだろうけれど。