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エッセイ・梅の花
梅の花を見ると思い出す。
昔、母とよく散歩に行った公園に梅園があり、季節ともなれば梅祭りが開催されていた。
ある時、いつものように散歩に行くと、たまたま梅祭り前の剪定をしているところだった。
「桜切るばか梅切らぬばか」と言うように、梅は木の成育や樹形を保つために剪定が欠かせない。
職人さんの手で、ところどころほころびかけた蕾もついている梅の枝が、惜しげもなく切り落とされていた。
花好きな母は興奮して、木の下に落とされている枝を広い集めるばかりか、今切ったばかりの枝をそれ頂戴と手を伸ばして頭上の職人さんから直接もらったりしていた。
そんな母の無邪気さが少し恥ずかしかった。
家に持ち帰った梅の枝の中から、ひとつふたつ開花しているものを選び、翌日私は職場に持って行って、受付に飾った。ほのかに薫る、可憐な白梅を飾って私は「どうよ」と社員達の反応を待った。
しかし出社してくる男たち、誰も梅に気がつかない。見向きもしない。
ついに私は怒った。
「まだ一月なのにもう梅が咲いているんだね、とかどうして誰も感心しないの?!」
母が枝を拾ってた時は恥ずかしくて他人の振りしていたくせにね。