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亡霊の階段

昨日まで普通に建っていた民家が今朝 、解体されていた。
建物の前面が剥がされ、内部が見えてシルバニアファミリーの家みたいになっている。破壊されて積み上がった木材は、外からはわからなかったが古く脆く、昨日まで家を支えていたとは思えないただの瓦礫となっている。
壁も床もないところに襖だけがやけに綺麗に残っていて、人が住んでいたことを生々しく物語っていた。

息子を産んだ産院が解体された時のことを思い出した。
出産、入院、退院後も併設小児科でずっとお世話になっていたのだが、院長の病気のため残念ながら閉院してしまった。建物はしばらくそのまま残っていたのだが、たまたま近くを通かかると解体が始まっていた。
手前の壁と床がなくなり、奥の壁とコンクリートの階段だけが残っていた。助産師さんや、看護師さんたちが、忙しく何度も上り下りしたであろう階段、その姿がホーンテッドマンションの亡霊のようにひらひらと行き交っているように見えた。
昇る場所も降りる場所ももうない階段を、行き場のない亡霊がずっとループしていた。



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