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Canis Lupus "demotracks" ディスクレビュー

 新生キャニス初ツアーにともなって4月に3日間のレコーディングによるスタジオ・デモ音源が2枚に分けて制作された。Canis Lupusの“Canis”盤であるC盤と“Lupus”盤のL盤で、今のところどちらも初ツアーである5/2の高円寺HIGH、5/17の難波BEARS、5/19の京都UrBANGUILDの3会場でしか販売されない、レアアイテム確定の音源作だ。ちなみに初日の高円寺HIGHではわずか50枚ずつしか供給されず、入手できなかった観客たちからの不満の声が会場受付前でプチ炎上していた。

“デモ”といっても音響面はまったく問題なく、3人の各プレイぶりが細かな点も含めて目の前で演奏しているようにくっきりと立体的に迫る。

 34年ぶりとなった箕輪政博の完全現役復帰が生々しく鮮明に捉えられ、特徴的なスネアのドライな音色、オープン・クローズ・ハイハットの鋭い閃光、裏打ちを微細に組み込んだリズム・コンビネーションなどなど技の数々が時を超えてまざまざと蘇る様はほんとうに凄い。「Aqua Perspective」でのリムショットの魔術。「The Quest」でのタムとシンバルの織り成す様はよくある空間的プレイを越えて目に見えない具象を立ち上がらせている。

 ヤマジカズヒデはおそらくdipではお目にかかれない変拍子に乗せたプログレおよびハードロッカーぶりを、変幻自在な音色で緊密に放っている。「Firecat or Sky」の複雑怪奇なリフ、「G.T.O Ⅲ」での速弾き、「Cyclone of Flowers」でのオリエンタルなネオアコ・フレーズなど“いつもの”ではないプレイの数々が繰り出されるが、その一粒一粒の音粒子のすべてに鋭くクラスティな輝きが瞬いているのだ。何をどう弾いてもヤマジカズヒデがそこにはいる。

 そして新生キャニスで最も背負ったものが重く大きそうなのが森川誠一郎である。10月にZ.O.Aの解散を控え、新生に加担している場合ではないはずだが、北村昌士のパートを素晴らしくつとめあげた。BorisのメンバーとのA/Nで垣間見た程度だった森川のベース・プレイは百年前からそうだったかのように伸び伸びとバウンドさせている。「Aqua Perspective」のオープニングは涙が出てきそうだ。

 歌も同様に最初から歌っていたようにメロディが抑揚している。「G.T.O Ⅲ」の情感は儚げだった北村の歌とは異なる生命力を浮かべ、その方向性は「Aqua~」で朧げなムードの帳をめくりあげ平安貴族の手毬歌ってこんな感じ?と思わせる雅なポップ感を湛えている。

 まだまだ聴くべき点はあふれているが、1曲1曲の内容、そこで起きていることをつぶさに見れば見るほどもっとたくさんCDRを焼いてほしいと切に願う。(石井孝浩)

C収録曲
01 Firecat or Sky
02 L-Assoluto Naturale
03 Thorn of Death
04 Final Speak
05 The Quest

L収録曲
01 G.T.O Ⅲ
02 Cyclone of Flowers
03 Untitled
04 Aqua Perspective


Canis Lupus "Vlk je stále naživu”
5.17 難波BEARS
open19:00 start19:30 / adv¥4,000 door¥4,500
5.19 京都UrBANGUILD
open18:30 start19:00 / adv¥4,000 door¥4,500

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