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スポーツ選手を評価する指標
人間として生きている以上、競争からは逃れられない。ごくごく一般人でも受験、就職、昇進など、どんなところにも競争がついて回る。
特にエンタメやスポーツの世界では顕著で、そこには常に勝ち負けが存在している。
エンタメの世界では、お笑いであればM-1やキングオブコントといった賞レースで優劣を競い、歌手であれば売上数、映画であれば興行収入で争っている。
スポーツの世界では競技によって異なるが、長いシーズンやトーナメントを勝ち抜いた一握りのチーム・選手が最終的な勝者となり、それ以外の大多数が敗者となる。
しかしながら難しいことに、チームスポーツにおいては必ずしもベストプレイヤーのいるチームが優勝するとは限らない。
MLBの歴史に輝かしい成績を残したイチローも、個人の活躍とは裏腹にチームはなかなか勝てなかった。「なおマ」=「イチローは3安打の活躍をするも、なおマリナーズは敗戦」というネットスラングがあるくらい、個人の活躍とチームの勝利は必ずしもリンクしないものである。
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個人指標の概念
では、チームスポーツにおいて本当のベストプレイヤーは誰なのか。ここで重要になってくるのは「選手個人の評価」である。
野球における指標
この点において優れているのは野球である。
野球は個人の成績を表す指標がたくさんある。野手で言えば打率・HR数・打点・盗塁数・失策数・長打率・出塁率などが基本的な指標で、投手で言えば勝数・防御率・奪三振数・ホールド数・セーブ数などで評価される。
さらにMLBでは、セイバーメトリクスという統計学的アプローチにて、多くの指標で選手を評価している。
たとえば投手の場合、勝数が指標の一つであるが、勝数はいくら投手が抑えてもチームの援護点がなければ勝ち星は増えていかない。逆に投手が炎上しても、チームがそれ以上に打ってくれれば勝ち星がつく可能性がある。つまり個人の指標に見えて、実はチーム力に大きく依存する指標である。
そこで考え出されたのがQS(クオリティスタート)やWHIPといった指標である。
QSは「6イニング以上を投げ、3自責点以内に抑えた試合数」であり、どれくらい「試合を作れたか」を表す指標である。
WHIPは「1イニングあたり、何人の走者を出すか」という指標であり、1を下回るとエース級という評価である。
投手のみならず打者指標、走塁指標、守備指標、個人総合指標など多くの項目があり、野球好きであれば
OPS=「打席あたりの総合的な打撃貢献度」
UZR=「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」
WAR=「そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたか」
などはご存知の指標であるだろう。パークファクターといい、球場ごとの偏り(形状、立地条件)を補正する指標も存在するところがセイバーメトリクスの面白さの一つでもある。
(ネットで話題のアダムダン率、赤星式盗塁といったオモシロ指標もあるので気になった方は是非)
サッカーにおける指標
個人指標という概念では、まだまだ後発のスポーツである。長らく公式記録としては試合出場数やゴール数のみが記録されており、リーグによってはアシスト数すら計上されていなかった。そのため選手の評価は難しく、代表選出やベストイレブン選出の際には常に議論が生じている。
そんな中、ここ数年で多くの個人スタッツが記録・公開されるようになった。その一例が走行距離、スプリント数、タックル数、ゴール期待値(xG)、ドリブル数、インターセプト数などである。これらはJリーグでも公式的に記録されているスタッツである。
また日本ではFOOTBALL LABを中心に、統計学的見地からチーム・選手を評価する団体も出てきている。
さらには欧州を中心に、もっと踏み込んだところでのデータ分析が行われているという。
しかしながら、まだまだ野球のように選手の優劣を総合的に示せるような指標(WARのような)がないのが現状である。
それはスポーツの違いによるものが大きい。野球はチームスポーツのように見えるが、「投手と打者の一対一の集合体」であり、より優位な個人データを収集しやすい。また「出塁」というプレーが得点・勝利にダイレクトにリンクするため、統計的結論を出しやすい。
一方でサッカーは流れの中で多くの人数が絡んでプレーし、1つのパスやタックルやドリブルがどれくらい得点・勝利に結びつくのか、定量的に判断ができないのである。(最終的なシュートという局面においては、ゴール期待値xGという指標があるが。)
とはいえ、誰がベストプレイヤーか議論するのもスポーツの醍醐味である。
ちなみに僕の応援するサンフレッチェでは、守備では佐々木翔、攻撃では森島司がベストプレイヤーだと思っている。
他のスポーツの指標に詳しい方、面白い指標をご存じの方、ご教授ください!