サッカーのゴール期待値と実ゴールの相関関係は0.502しか無い
サッカーという競技はピッチ上での自由度が高い競技であり、22人の選手が同時に動き回っているチーム競技であるため、「データ化」というのが非常に難しいスポーツである。なので古くより公式記録としては出場試合数とゴール数のみしか残されていなかった。
一方で野球に着目すると、野球は9対9のスポーツであるが1つ1つの局面は投手vs打者の1対1の集合体であり、選手個人のデータ収集が容易であり優位なデータが得られやすいという特徴がある。そのため、セイバーメトリクスという統計学が発達しているスポーツでもある。
しかしここ数年、サッカーにおいてもデータ化の波が押し寄せて来ており、多くの指標が生まれている。その一つが「ゴール期待値(xG)」という指標だ。
「ゴール期待値」とはなにか。
フットボールラボの説明を抜粋する。
ある局面においてリーグの平均的な選手がシュートを打った場合、ゴールする確率(期待値)がどのくらいあるか示したものである。例えばPKは7割近くの確率でゴールが決まることが一般的に知られているため、PKのゴール期待値は0.7程度とされている。
その他のシュートにおいては、過去の膨大なデータを参考に、ゴールまでの距離やシュートを打った部位、シュートの角度などの項目を総合して算出される値である。
一試合で放ったシュートを足し合わせることで、一試合あたりのゴール期待値を算出することができる。
例えばクラブAとクラブBが試合をし、1-0という結果になったとする。この結果だけ見ると、どういう試合をしたかわかりにくいが、ゴール期待値を見ると紐解くことができる。
例えば一試合あたりのクラブAのゴール期待値が0.4点で、クラブBが1.5点だったとする。するとクラブAは数少ないチャンスをモノにし、クラブBはチャンスを決めきれなかった試合ということが何となく読めてくる。
例えば以下の試合。
広島vs横浜FCのこの1戦は1-1のドローという結果で終わったが、ゴール期待値でみると広島が1.222点、横浜FCが0.625点だった。
ここから読み取れるのは、【広島が攻める展開で妥当な1点を取ったのに対し、横浜FCは数少ないチャンスをモノにした】ということである。見ていた感想とも概ね一致する。
ゴール期待値は「試合展開」というものを表すのに非常にわかりやすい指標であることが分かる。
しかしながらサッカーは難しいスポーツである。試合展開が試合結果に直結しないことが多々あるのだ。
そこで僕はゴール期待値と実際のゴール数に相関関係があるのか調べることにした。
結果を以下に示す。
縦軸はJ1各クラブの一試合あたりのゴール期待値であり、横軸は一試合あたりの実ゴール数を示している。
グラフを見てざっくり分かる通り、ゴール期待値が大きくなると実際のゴール数も大きくなっているように見える。
が。
が、である。
計算してみるとゴール期待値と実ゴール数の間の相関係数は0.502しか無いことがわかった。コレはどういうことがというと、ゴール期待値と実ゴール数はほとんど相関がないということである。
ゴール期待値が大きいからといって、その分だけのゴールが決まるわけではないということだ。
ナゼそうなるのか。
それは、ほぼノーチャンスなシュートを決めてしまうスーパーストライカーがいるからであり、確実に決めることのできる決定機を外してしまう選手がいるからである。
つまり、
得てしてゴールシーンというのは相手の想像を超越し、ある種偶発的に見えてしまうような個の力や組織力によって決まるということである。
とあるサッカーユーチューバーにより「ゴールの再現性」というフレーズが蔓延しているが、実際は再現性を超越するようなシーンが試合を決めているのである。再現できないようなゴールこそが試合の決定打となるのだ。
僕がいいたいのは一つだけである。