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旅行鞄の歴史

こんにちは、どもです。

先日ちきりんさんのVOICYで、「なぜ日本人は使いにくい両開きのスーツケースを使うのか」と疑問を呈されていました。
こちらは同氏のブログにも同様のことが書いてあります。

要点としては、両開きのスーツケースは荷物の出し入れに全く適していないと指摘されています。

私はエンジニアなので、なぜスーツケースは両開きでないといけないのか?がとても気になり、色々と調べてみました。

旅行カバンの歴史

19世紀以前の旅行カバンは、鉄のフレームに木の板で出来たトランクを革張りしたものでした。

この当時の旅行カバンには防水性能が求められ、沈没したタイタニック号で見つかったルイ・ヴィトンの旅行カバンは全く中の荷物が濡れずに発見されたとか、ルイ・ヴィトンのカバンに捕まって助かった人がいる、などの伝説も残されています。

なぜ防水性能が必要だったのかというと、当時の旅行が蒸気船によるものだったことが起因しています。蒸気船は水を蒸発させ、動力源としているため、船内(特にボイラー室付近)の湿度・温度は外気よりも高かったと予想されます。このような環境下において、荷物(時には精密機器)を結露から守るために防水性能を備えた製品が開発されたと思われます。

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19世紀の終わりになると、スーツを入れるためのトランクである”スーツケース”が登場します。これが現在のスーツケースの由来となっています。
しかし20世紀に入ってもこの手の旅行カバンは数あるカバンの1つに過ぎなかったそうです。

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旅行の変化

時を少しさかのぼった18世紀。この当時の旅行は一部のお金持ち、ブルジョワジーのための物でした。これらの人々は荷物持ちのため、使用人を引き連れて旅行をしていたため、大きな荷物を運ぶのはこれらの使用人、電車やホテルのポーターの仕事でした。

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19世紀に入ると旅行の大衆化が進みます。この頃になると、特別に裕福でなくても、好奇心などの理由から旅行ができるようになります。

20世紀に入ると自動車での旅行(いわゆるロードトリップ)、その数十年後には旅客機での旅行も可能となりました。

旅客機での旅行は、今と同じように空港内を長距離歩く必要があったため、多くの人が旅行カバンの持ち運びやすさに不満を抱くようになりました。

スーツケースの誕生

そんな中、1958年デイビッド・ラドリー・ブルーム(David Dudley Bloom)というカバンメーカーの商品開発責任者が、スーツケースにキャスターを付ける案を思いつきました。

彼はさっそく試作品を手に、会長の元に伺いを立てました。しかし、会長に「誰が車輪付きのスーツケースなんて欲しがるかね」と一蹴されます。

これから10数年後、1970年にキャスターとストラップのついた旅行カバンに関する特許がブルームとは別のバーナード・サドウ(Bernard Sadow)によって出願されました。

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サドウは百貨店に営業を掛けましたが、ブルームの時と同様に「男はキャスターのついたスーツケースなど使わない」と、ことごとく断られます。

数か月にも及ぶ営業の後、ようやくメイシーズという有名百貨店との商談が成立し店頭に並ぶと、キャスター付きのスーツケースは顧客から何の抵抗もなく受け入れられ、その後数十年をかけて世界中に拡がっていくことになります。

プラスチック製スーツケースの起源

それからさらに30年近く経った2000年、RIMOWAが初めて現在広く使われているポリカーボネート製のスーツケースを製造して以来、ABSやポリプロピレンといった更に安価なプラスチック製の物も現れます。

つまり、プラスチック製のスーツケースが登場してから現代まで僅か20年程しか経っていないのです。

ここまで振り返ると、現在のような前後対称に開くものは歴史的には19世紀に登場したスーツケースの原点のもののみで、そのほかの物は片側に荷物を入れてもう片方で蓋をする構成となっています。

さらに製造的な観点から考えても、前後対称である必要はありません。

ここから考察されることは、現在の形状は歴史的に見ても意味があるものではなく、一過性のデザイントレンドだということです。

また利便性の観点から課題があることはちきりんさんを始め、すでに一部に認識されているので「新しい形のスーツケース」が登場するのもそう遠い未来ではないかもしれません。

今回、記事の一部を以下の書籍から引用しています。多様性の重要さを論理的に説明されている、とても良い書籍でした。

ここまで読んでいただきありがとうございました。また書きますので興味ある方は「フォロー」よろしくお願いします。ではまた。



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