【外食のアレルギー事故を考察】飲食店での誤表記
株式会社CAN EATの田ヶ原です。新年あけましておめでとうございます。華々しく始まった2020年、私の目に飛び込んできたのはかなりショッキングなニュースでした。
ホテルのレストランでメニューのアレルギー表記を見て海老が入ってない中華丼を頼むも、海老が入っていて嘔吐や蕁麻疹で緊急外来へ
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ホテルのレストランという、外食の中では比較的信頼度が高い場所で起きてしまった誤表記事故。状況としては以下のようなものだったそうです。
ホテルのレストランでメニューのアレルギー表記を見て海老が入ってない中華丼を頼むも、海老が入っていて嘔吐や蕁麻疹で緊急外来へ
(省略)私はエビカニアレルギーなので、アレルゲン表記を見てメニューを選び、珍しく海老が入ってない中華丼に感動し注文。ところが食べ進めていくと中から海老が!!これは食品事故、アナフィラキシーショックが出るかもしれないと思いレストラン支配人に伝えると、貴重な意見をありがとうございます!と。そして笑顔で、中華丼には海老が3匹入っております!!と。把握してるのに表示が無い。他のメニューを見ても明らかに小麦粉や卵等のアレルゲン物質を使っている物にも表記がない。
誤表記の状況は極めて悪質で、その重大さを支配人が理解していない。ここまでめちゃくちゃなアレルゲン表記なら何も表記しない方が安全なレベル。私は嘔吐や蕁麻疹等のアナフィラキシー症状が出たので自力でタクシー捕まえて救急外来に。支配人に状況説明の為に電話したら、それに対しての対応はすぐに返答できないの一点張りで私の体調を気遣う言葉も無く、治療費すら返ってくるかわからない。挙句の果てには途中で食事を辞めた夫の分の飲食代もしっかり請求されている。。これはもう食品事故としか思えないのだけれど。。。
アレルギーの表記をしてくれているレストランはアレルギー持ちの味方で親切なレストランだと思っていたので誤表記を考えた事も疑った事もありませんでした😣でも危ない所もあるんだと身をもって体験しました、、
早くアレルギーが完全に治る方法が見つかったら美味しく食べられるようになるのにな。そして、救急外来にかかったと伝える電話の際、月曜日になったら保健所に届けを出して良いかと伝えたら、ご勝手になさってください、と。緊張してこの発言になったのかはわからないけど、ちょっとびっくり。
何が問題?アレルギー事故が起きた原因は3つ
この事故で問題だなと私が感じたのは以下の3点です。
①メニュー誤表記
②アレルギーへの理解度が低い、教育が徹底できていないこと
③アレルギー事故が発生した場合のマニュアルが無いこと
順を追って詳細を紐解いていきます。
①メニュー誤表記
ホテルのメニュー誤表記についてはこれが初めての問題ではなく、「偽装表記」としてもう少し悪質な社会問題として認識されたのが2013年のことです。外資系の大手ホテルが、山形牛を「前沢牛」と表示していたり、オーガニック野菜を使っている(実際は違った)ようにポスター表示、「北海道産ボタンエビ」とメニュー表示したがすべてカナダ産を使用していた、などの問題が発覚し、公正取引委員会が景表法違反として排除命令を出した事例がありました。そこから、あらゆるホテルや飲食チェーンがメニュー表記についての内部調査を行ったところ、次々と誤表記または偽装問題が発覚し、一気に社会問題となりました。
「みんなやっているから」と横に倣っていた状態で、1か所の問題が露見したことで大きな報道になっていったのでしょう…。しかしアレルギーの話はこの時期は殆ど注目されておらず、誤表記事例の中にもありません。(食品表示法が制定されたのが丁度2013年だったせい?)
現在、食品メーカーや加工品メーカーには7大アレルゲン(卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生)を表示する義務がありますが、飲食店にはそれが課されていません。ただし表示をする以上は正しい表示が求められます。
しかし飲食店にとって難しいポイントは、「未だ、食品メーカーが正しい情報を開示していないことがある」ということ。大手のメーカーですら、誤表記で製品回収をすることもあるので複数名のチェックをかなり工数をかけて行っています。私も一度、食品卸のカタログに誤表記を複数見つけたことがあります。この記事の事故の場合はあきらかに「エビが3本入っております!」とのことだったので、料理人のほうに確認を取れておらず、きちんとリスク管理できていなかったのではと思いますが…。場合によっては、飲食店だけでは防ぎきれない誤表記もあるのです。
②アレルギーへの理解度が低い、教育が徹底できていないこと
誤表記に伴うリスクが何かという点が従業員に伝わっておらず、「まず相手の健康状態を気遣う」という行動が起こせていませんでした。しかし、私もtwitter上でよくこの問題点をお聞きすることがあります。特に飲食店は慢性的な人手不足があるので、最近だと単発で「その日だけ」飲食店のアルバイトをするケースもあり、オペレーションを教えることで精いっぱいでアレルギーのことまで研修していない事例が非常に多くあります。それこそ、主婦の方から、時間が空いた高校生までリテラシーの差が様々なので、身近にアレルギーがある人がいないと分からないのかもしれません。
ホテル宴会の現場等でもそうらしいのですが、微量でも発生する可能性があるということを知らずに、「アレルギー?少量でも大丈夫かって?少量ぐらい大丈夫なんじゃないですかねぇ。みんなおじさんだし。(←?)」と、答えてしまう幹事さんが非常に多いのです。
場合によっては命を失うということが(エピペンを使用するなどでなんとか水際で防げたことが多かったからか)あまり報道されていなかったこともあり、危機感が薄いことも仕方がないのかもしれません。だから、アレルギーでのヒヤリ・ハットはこうしてtwitterなどのSNSを駆使して表に出していかないといけないんですね。
③アレルギー事故が発生した場合のマニュアルが無いこと
意外と、これは大きい問題なのではないかと思います。この方は自力で病院に行くことができましたが、飲食店側も救急車を呼び、必要に応じてエピペンを打ち、その後誰にどのように報告し、原因を調査し、今後の対策をするのか等のマニュアルが整備されていない可能性が高いと感じました。
飲食店内での表示ミスに起因する事故なので、一部では賠償になったケースもあると聞きます。
起こってしまった後のお客様の命や健康の安全確保、そしてその後の誠意ある対応、また再発防止策がセットになった全国的に標準になるマニュアルを整備していく必要があるのかもしれません。
この飲食店はアレルギー表記をやめました。しかし…
twitter上でもかなりの反響があったこの事故を受け、当該のホテルではお詫び文が掲載され、メニューからすべてのアレルギー表記を取り去ることになりました。もちろん上記で述べた問題点が解消されない限りは正しい対応だと思いますが、元々飲食店としてはアレルギー表記は義務ではないにも関わらず、「アレルギーがあるお客様のことを考えて表示をしていた」ことについては、私は良いことだったのに勿体ないな…、と思ってしまいます。
CAN EATとして飲食店営業に行くときも、「お客様に対してアレルギー対応をしようとすると、クレームに繋がるからやりたくない。あくまでも、聞かれたら答えるレベルで。」と言われることが多くなりました。
でも、この対応は結局「聞かれようが聞かれまいが、正確に自分たちが使用している食材を把握し回答できるようにしておかなければならない」ということには変わりなく、積極的にアレルギー対応策を講じないという姿勢そのものは「聞かれる頻度を減らす」にすぎないのではないかと思うのです。つまり、根本的な解決にはなっていない。
それでも「善かれ」と思ってしたことが却って自分たちのリスクを高めることになってしまう、ということが起こる以上は、国から義務化されない限り仕方のない対応なのかもしれません。ただ、アレルギーがある方が増えるなか、いちベンチャー企業として、この問題をどうにかして解決したいと、今もCAN EATを改善しながら毎日頭を悩ませています。