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史上最高のゲーム音楽#1-通常戦闘曲編-【ブンガク×オンガクVol.3】

去年に始めておきながら、しばし放置していた企画をちょこちょこ進めていく。
今回はゲーム音楽特集だ。

ゲーム音楽のクラシックコンサートが人気になるなど、日本ではゲーム音楽がジャンルとして割と市民権を得ている。アメリカで言うところの映画音楽に近い。

すぎやまこういちや植松伸夫らの功績が有名だが、『天外魔境』の久石譲や『信長の野望』の菅野よう子など、「え、この人、ゲーム音楽つくってたんだ」と、意外に知られていない名盤も多い。

ということで、今回はゲーム音楽特集ということで、その中でも「通常戦闘曲」(というマニアックなポイント)に絞って、十曲ほど紹介していこうと思う。

戦闘曲ということで、高揚感や緊張感を生み出さなければならないが、何度も聴くことになる作業BGMでもあるので、耳馴染みの良さも重要だ。
ボス戦曲との差を出すために、クオリティに差をつけられることも多いが、その中でも「この曲を通常戦闘曲とは、もったいなくない?」と思わせる名曲を選んでみた。


FINAL FANTASY XIII「閃光」(浜渦正志)2009年

通常戦闘曲といえば、これは外せない。
ストーリーやゲームシステムについては賛否両論あったFF13において、圧倒的に評価されたのが、通常戦闘曲と思えないクオリティの本曲「閃光」。

FFと言えば植松氏というイメージが強い中で、本作はまさかの不参加。
FF10などで一定の評価を得ていた浜渦氏が全曲を担当することになった。

浜渦氏はドイツ生まれの音楽家。
ピアニストとしての腕前やエレクトロニカへの造詣などを活かしながら、独特な感性で音楽を構築する職人肌のコンポーザーだ。
個人的には「サガフロ2」の音楽が出色のできばえで、それ以来、彼のファンである。
本作で世界的に評価を高めた氏は、その後スクエニを退社して、ゲーム音楽以外にフィールドを広げている。

本曲はサビの高揚感に繋がる丁寧な進行が秀逸で、ストリングスがとにかく気持ちいい。
気に入ったという方は、ぜひ浜渦音楽への入口にしていただきたい。

マジカミ「Fxxk Your Disco」(GANG PARADE)2019年

DMM GAMESより配信中のアーバンポップRPG・マジカミ。

「ペルソナ」と「まどマギ」を混ぜたような世界観がウリで、製作費12億円をかけただけあり、ビジュアルやサウンド面は優秀。
元々はエロゲとしてFANZAゲームで売り出したが、全年齢版をアプリ化するなど、DMMの本気度が窺えるタイトルだ。

本曲を含めて多くの音楽を担当したのは、WACKのアイドルグループ・GANG PARADE。
BiSの姉妹グループで、2020年に二つのグループに分かれる形で活動終了してしまったが、本曲の音楽性の高さには驚いた。

特にメンバーのテラシマ ユウカによるナンセンスな歌詞は中毒性が高く、耳から離れない。
ゲーム音楽というジャンルの幅の広さを示すためにも紹介したい楽曲だ。

大神「妖怪退治」(上田雅美)2006年

ここで和物をひとつ。
和風RPGの金字塔「大神」より、まさに通常戦闘曲に相応しいネーミング「妖怪退治」。

世界的に高い評価を得て、数々の賞を獲ったものの、美男美女が出てくる世界観でないためか売上は伸びず、「Game of the Yearを戴冠しながら商業的に最も成功しなかった作品」としてギネス記録に認定されている。

しかし、音楽はもちろんのこと、ストーリー、ビジュアル表現、システムなど、細部に至るまで高いクオリティで、根強いファンも多い。
RPGランキングの中位なんかで、いまだにひょっこり顔を出してくるのはさすが。

「呪われた大地が、桜と草原に変わっていく」有名なシーンは、今見ても息をのむ美しさであるので、未体験の方はこれを機にぜひ。

ベヨネッタ「Fly Me to the Moon (∞ Climax Mix)」2009年

続いて、スタイリッシュ ガンアクションゲーム「ベヨネッタ」より、ジャズのスタンダードナンバー「Fly Me to the Moon」のアレンジを。

新世紀エヴァンゲリオンのエンディング曲としてもなじみ深い本曲を、スタイリッシュにアレンジして、戦闘曲に持ってくるセンスに脱帽だ。
ちなみに、エンディングではブレンダ・リーが歌う1963年収録の「Fly Me to the Moon」が流れる。

海外の評価や格付け点数はかなり高いものの、日本では今一つ知名度が上がってこない本作。
キャラクターや操作感など、クセが強い作品ではあるが、一度ハマれば、どっぷりいくこと間違いなし。興味があればぜひ。

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜「穀雨、麦の風」(アサノハヤト)2019年

アトリエシリーズの戦闘曲は毎回人気を博すが、2019年発売のライザのアトリエより、鍵盤とアコギのエモいメロディが心を打つ「穀雨、麦の風」をご紹介。

VOCALOIDの登場以降、ネット音楽というジャンルが生まれ発展してきたが、徐々に日本の音楽シーンを席巻し始めたように思う(米津玄師は言うまでもなく、YOASOBIやずっと真夜中でいいのに。なんかも、この系譜だと感じる)。

いわゆるエモいメロディを、シンプルでメリハリのあるパーカッションで支えながら、エレクトロ要素で彩るというのが常套であるが、そこにプラスアルファ何を足すのかが個性の出し所。

本曲では笛やバグパイプなど、ちょっと欧州の田舎っぽい要素を取り込みつつ、ベースラインのオサレさや曲進行のあざとさなど、僕の世代にドストライクな仕上がりになっている。

サガ フロンティア2「Feldschlact Ⅳ」(浜渦正志)1999年

今回、二度目の浜渦氏。
僕がゲームのサントラに興味を持つきっかけになったゲームがサガフロ2だった。
90年代から、この音楽性ってヤバくない?

FF7などを筆頭にゲームが3Dポリゴン化していく流れの中で、サガフロ2は、水彩画タッチのビジュアルを採用し、サガシリーズ伝統のマルチシナリオシステムを大河ドラマに落とし込んだ意欲作。
当時はあまりヒットしなかったが、今プレイしても古臭さを感じないゲームセンスは素晴らしい。

この次のサガシリーズ「アンリミテッドサガ」の音楽も浜渦氏が手掛け、通常戦闘曲も白眉であるのだが、「閃光」と音楽性が近しいため、今回はサガフロ2を紹介することにした。
マジで、浜渦さん、もっと売れて。

Sdorica 「Pulse-Pounding Battle」(Chamber Chu)2018年

台湾のゲームメーカーによる、スマホRPG。
最近、スマホゲームでも音楽性の高い作品が多くてほんと驚く。

ゲームの方も、いわゆる課金型のゲームなのだけど、物語や演出が骨太で(しかもキャッチ―さを失わず)、これはもう日本のガラパゴス化したガチャゲーでは太刀打ちできないなと思わせるクオリティ。

このクオリティを無料で遊んでいいものか、と思わせるのがゲームの真髄ではなかろうか。
キャラの可愛さと、射幸心と、コンコルド効果(一回課金しちゃったから、やめられなくなっちゃう心理)のみに訴えかけるだけのガチャゲーは、ほんと滅びればいいのに。

…話が脱線したが、重厚で疾走感のあるストリングスと、エスニックなパーカッションを、サックスがまとめ上げる様は極めて爽快。
これを通常戦闘曲に持ってくる心意気に拍手だ。

ペルソナ3「Mass Destruction」(目黒将司)2006年

ゲーム音楽の話をするなら、ペルソナシリーズは避けて通れない。

スタイリッシュなクラブミュージックを戦闘曲に持ってこようという発想自体が驚嘆。
ファンタジーメインで発展してきたJRPGの呪縛を打ち砕く一撃だ。

4以降、音楽はポップな路線へとシフトしていくが、本曲は「大量殺戮」というタイトル通り、ダークな雰囲気。異色度がすごい。

ゲーム自体も評価は高く、ペルソナライクなゲームも随分増えたが、この手のゲームを遊ぶなら、やはり本家が一番。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド「戦闘(フィールド)」(片岡真央)2017年

近年、国内外から最も高い評価を得た日本産ゲームと言っても過言でないだろう。

アンビっぽい雰囲気を漂わせつつ、パーカッションとピアノとエレクトロな音源が合わさる様は、まさにBotWの世界観の具現化だ。
敵の強さにより、シームレスに三段階の変化を遂げる楽曲の使い方も憎い。

剣を鞘から抜くような音や、機械音など、効果音・自然音っぽい要素の入っていることが、ゲーム世界と音楽を不可分なものにしており、没入感を高める効果を生んでいる。

ともかく、任天堂らしい、エモさに訴えかけるだけでない、丁寧な職人技の光る一曲だ。

ラグナロクオンラインII「Din don dan dan」(菅野よう子)2007年

最後に紹介するのは、ラグナロクオンラインIIより、まさに幻の楽曲である、菅野よう子作曲の「Din don dan dan」。

本作は、韓国のGRAVITY社によって運営されているオンラインRPGで、無印版は日本でもそれなりに人気があったタイトルだ。

しかし、IIは開発が難航。
日本ではβテストまで行ったが、最終的に正式サービスが開始されずに返金騒動へと発展した。
韓国では1年でサービス停止。北米版のみ、現在でも運営されている。

令和への改元にあたり奉祝曲を担当するまで昇りつめた菅野よう子による楽曲は、日本のゲーマーに届くことはなかった。実にもったいない。

光栄の「三國志」からキャリアをスタートさせた菅野よう子だが、ゲーム音楽関連は黒歴史化することが多いためか、本作を最後にゲーム関係の仕事をしていない。
カムバックよう子。


さて、十曲ほどご紹介したが、2000年代以降の楽曲ばかりになってしまった。

ハードの進化によるグラフィックの変遷についてはよく語られるが、実は音源面でもハードの進化がもたらした恩恵は大きく、単純に年代が進むごとに音楽的表現の幅が広がるからと言える。

SFCまでと、PS以降では、音質が根本的に変わるのだ。

あと、例えば、ロマサガシリーズやヴァルキリープロファイル、テイルズシリーズなどの戦闘曲も人気であるが、シンセ打ち込み系のハードロック調楽曲が、僕の好みと少しズレているために今回は選外とした。
ドラクエシリーズも、もはやここで取り上げるまでもなく世間に浸透しているので敢えて選ばなかった。

さて、次はフィールド音楽特集などやりたいと思う。
今回、YouTubeで音源を調べたりしてるうちに我慢できなくなって、いくつかサントラを買ってしまった。
なんとも散財を誘う企画である。

(筆者)キャンディ江口
キャンディプロジェクト主宰。
作家、演出、俳優。
映像出演時は「江口信」名義。(株)リスター所属
Twitter:@canpro88
HP:http://candyproject.sakura.ne.jp/

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