Love Drop

舞台脚本ではなく映像脚本。
基本的に、男が女を撮影して女だけが映っているイメージ。

1.見ちゃダメだよ

女）何見てるの？
男）かわいい女の人。
女）そう言えば口説き落とせると思ってる？
男）まだ落ちてないんだっけ？
女）もう落ちてるんだった。
男）好きだよ。
女）わたしも。
男）アイを？
女）カイを。
男）ご自分のことは？
女）好きでも嫌いでもないかな。
男）そっか。
女）何笑ってるの。
男）いや？　それは弱みだなぁと。
女）どうして？
男）俺なしじゃ生きていけないんじゃない？
女）そんなことないから。自惚れすぎじゃない？
男）ふうん。ほかに誰かイイ人でもいるわけ？
女）見くびらないでよ。
男）ごめん。
女）ちゃんと一筋だよ。
男）かわいい。
女）やらしい。
男）お褒めに預かり恐悦至極に存じます。
女）褒めたと思ってるの？
男）勿論。
女）貶したとは思わないの？
男）貶しの意味も含めて褒め言葉だと受け取ってるよ。
女）食えないヤツ。
男）食う方だからね。食われるのは好き？
女）……。
男）咥えるのは好き？

男、ポッキーを差し出す。
女、顔を逸らす。

男）かわいい。ゲームしよっか。
女）ゲーム？
男）ポッキーといえば？
女）……いいけど。
男）じゃあ、咥えて。
女）言い方。
男）何意識しちゃってるの？　やらしい。
女）……。
男）褒めてるんだよ。ベタ褒めだよ。ベタ惚れだよ？　やらしくてかわいくてほんとうに素敵だと思ってるよ。
女）また、そんなこと言って。
男）咥えて。……よくできました。

画面暗くなり、ポッキーを齧る音が響く。

2.開いちゃだめだよ

マウスクリックの音。パソコンを覗き込む女。画面の光がこぼれる。悲鳴、嫌がる声。女は息を呑む。

3.死んじゃダメだよ

女）また見てるの？
男）好きだから。
女）撮影が？
男）アイのことが。
女）撮影は？
男）勿論、
女）大好きなんでしょ。
男）愛してるよ、アイ。
女）わたしも愛してるよ、カイ。……死にたいくらい。
男）どうしたの。
女）カイのことが好きなの。どうしようもなく好きなの。
男）そっかぁ。どうしちゃったの？
女）わからない。わからないよ。
男）死んじゃダメだよ。
女）だって。苦しいの、辛いの、悲しいの。もう、ムリなの。
男）何がムリなの？
女）苦しくて、
男）どうすれば楽になる？
女）リスカとか……。
男）ダーメ。
女）だって！
男）俺が傷付けてあげるから、アイは自分のこと傷付けちゃダメ。わかった？
女）……わかった。

男、女の腕を捻り上げる。

女）あー！！　あーーー！！！
男）……かわい。

4.覗いちゃダメだよ

シャワーの音。女はパソコンの傍に置いてあった男のスマホをいじっている。男は鼻歌を歌っている。スマホを置く女。

5.漏らしちゃダメだよ

コーヒーを差し出す男。

男）飲む？
女）ありがと。

コーヒーを飲む女。

男）ゲームしよっか。
女）何？
男）コーヒーを1杯ずつ飲んで、どっちが先に漏らすか。
女）何それ。ここでするの？
男）ここでできるの？
女）片付けるの大変。
男）俺が片付けてあげる。どう？
女）どう？　って。
男）するの？　しないの？
女）なんで選ばせるの。
男）だって合意を取っておかなくちゃ、ねぇ。
女）したいの？　したくないの？
男）それは提案した時点でさ。
女）勝つ自信があるってこと？
男）勝つ自信ないの？　でも拒否しないんだ？
女）勝ってやろうじゃない。
男）上等。

乾杯する2人。

女）……ねぇ。わたしに隠してること、ない？
男）……それを知って、何になるの？
女）何にもならないかも。
男）じゃあ、知らない方がいいんじゃない？
女）もし、何かの切っ掛けで、知っちゃったらどうしようね。
男）知ろうとしなければ知らないままでいられるよ。ずっと。
女）それでいいのかな。
男）それは俺が決めることじゃない。
女）……カイは、わたしにトラウマがあること知ってるよね。
男）知ってるよ。
女）だから触れないでいてくれてるんだよね。
男）……そうだよ。
女）そうだよね。わかってるの。わかってるから。
男）愛してる。
女）わたしも。
男）どうしたい？　どうなりたい？
女）選べるの？　わたしが？
男）何もなかったことにもできる。
女）できないよ。変わってしまったもの。分かってしまったもの。わたし、わたしね、

口元のアップ。女は言った。
（×××××××）

6.映しちゃダメだよ

悲鳴。嫌がる声。あのときと同じ。
女は、見てしまった画面の中に入ってしまった。

7.泣いてもイイよ

男)お疲れ様。

バスローブを羽織っている女に、いちご(ミルク・フォーク付き)を差し出す男。

女)ありがとう。
男)調子はどう？
女)問題ないよ。ぜーんぜん、問題ないから。

共に食べる男女。

Fin.