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ししとうに学べ~社会なんてこんなもんでいいじゃない~
「残ったししとうのどれかがすごい辛いかも」
「えー、これかな?うわー」
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みたいな会話が、まりことじゅりちゃん(今林原家に住み込んでくれてるコミュニティメンバー)の間でされていて。
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まだ覚めやらぬ眠気眼で彼女らを見ながら、ボケっとその会話を聞いていた僕は、なんとも不思議な気持ちになったのですよ。
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「なぜししとうは・・・・辛いのが混じっていても赦されているんだ?」と。
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だってですよ!!
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聞けば、辛いししとうはししとうじゃなく「青唐辛子」だっていうじゃないですか!
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それが「ししとう」という商品名で売られているわけです。
完全に偽装じゃないですか、偽装。
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ししとうだと思ってルンルン気分で口の中に入れたら、とんでもなく辛い青唐辛子だった・・・・なんていう経験をお持ちの方は多いと思いますが、その時の気分ってどんなもんですか!?
ヒャッホー!!!当たったぜえええーーーー!!ってテンション上がるわけじゃあるまいに。
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そんな、ロシアンルーレットみたいな食事を、誰が望んだんだよと。
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クレームですよ、クレーム。
お店でそんなことが起きようものなら、
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「ししとうじゃなくて青唐辛子じゃねぇか!この店はどうなってるんだ!」
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ってSNSで炎上してもおかしくない話です。
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どこぞのホテルが、「鮮魚」と表示しながら冷凍品を提供、「芝エビ」と表示しながら安い「バナメイエビ」を提供、牛脂注入肉をビーフステーキとして提供するといったことをして問題となっていましたが・・・・
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それと何が違うんですかと。
「ししとう」と表示して「青唐辛子」を提供したら、それは食品偽装でしかないじゃないですか!!!!
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・・・・なぜししとうは、青唐辛子は赦されているんだ・・・・?
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不思議に思いませんか・・・・!?
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その疑問をまりこにぶつけたところ、なぜししとうの中に青唐辛子が混ざってしまうのかについて教えてもらいました。
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ししとうと青唐辛子とは近縁種で、ししとうのめしべに青唐辛子の花粉が受粉してしまうと、そのししとうは青唐辛子になってしまうんだとか。
そしてそれが、見た目では区別がつかないんだとか。
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なるほど。
そういうメカニズムか。それは納得だ。
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だがしかし気になるのは・・・・
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なぜそれが、「問題」としてちゃんと捉えられないのかということ!!!
なぜ、21世紀の今になっても改善されないのかということなんですよ!!
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「青唐辛子の花粉を受粉しちゃうと青唐辛子になっちゃうんだよね」
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じゃねェーーーーーーーだろッッッ!!!!
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受粉ッ!!!
させんなッ!!!
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青唐辛子の花粉が飛んでくるようなところで栽培してんじゃねェェーーーーッッ!!
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って話じゃないですか。
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実際にどんな栽培の仕方をしているか知りませんが、とにかく、「ししとうの中に青唐辛子が混ざってしまう現象」とは、狙ってそうしているわけではなく、力及ばずな結果じゃないですか。
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でも今の世の中、「努力しているかどうか」ではなく「結果」でジャッジされてしまうことが多いわけですよね。
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なので、どんなに頑張っても努力しても対策を打っていたとしても、結果的に悪いことになってしまったらバンバン叩かれてしまうのが常なわけです。
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きっと、「ししとうに青唐辛子が混ざらないようにする」というのはそう簡単なことじゃなく、ししとうすべてをビニールハウスで覆って人間が手作業でひとつひとつ受粉させて・・・・みたいな、莫大な労力がかかるんでしょう。
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実際は知りませんけれども、簡単に改善できるのであればとっくにされているはずなんです。
だって、嬉しくないですもの。ししとうの中に青唐辛子が混ざっていて、予想外に辛い思いをすることなんか。
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つまり・・・・
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「改善できるものなら改善したいけど、改善のために掛かるコストを考えたら実際に改善するのは難しいよね」
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という状況であり、かつ、それが赦されているという現実。
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世の中のあれもこれもが、「改善できない!?できないじゃねーんだよ!やるんだよ!」って感じで無理やり努力させられたり、それができない場合は潰されたりしているのに。
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ししとう農家だって、「青唐辛子が混ざるような農家は潰せ!純粋なししとうだけを作れる農家以外は必要ない!」みたいに・・・・言われてもおかしくないのに。
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今日もししとうの中には、青唐辛子が混ざって流通している。
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そしてそれを、多くの人々が「そういうものだ」と思っている。
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もちろん、中にはもしかしたらクレームをつける人はいるのかもしれない。
スーパーで買ったししとうの中に青唐辛子が混ざっていたら、スーパーに文句を言う人はいるだろう。
飲食店で食べたししとうが辛かったら、店員を呼んでクレームをつける人もいるだろう。
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一部の人間は、そういうことをするのかもしれない。
そしてその度、現場で怒られた店員は謝罪をしたり、「再発防止に努めます」くらいのことは言うのかもしれない。
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けれど、「ししとうの中に青唐辛子が混ざっていたのでししとうの販売を中止します」にはならない。
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他のことだったら、それに近い対応策が取られることだってあるのにさ。
それくらい、今の社会は理不尽に溢れているというのに。
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「子どもの声がうるさいから」という高齢者からのクレームで子どもが公園で遊べなくなるのが、まかり通る世の中だというのに。
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ししとうは、想定外に尋常じゃなく辛いものが混ざっていて、期待外れの結果をもたらすロシアンルーレットみたいな存在でも、赦されている。
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なんということだ。
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・・・・人間の社会って、本来、そういうものであっていいんじゃないか。
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「ししとう辛いーーーッ!!ヒイイィィーーーッッ!!」
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みたいなアクシデントに遭遇して、それにショックを受けながらも、「こりゃ運が悪かったねwww」って笑い話に変えられる。
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そういう社会こそが、本当は、健全なんじゃないのか。
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ちょっと注文を間違えられたから文句を言う。徹底的に謝罪させる。
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ちょっとおかしなものにクレームをつける。販売停止に追い込む。
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ちょっと形が悪いと「規格外」とかいって安い値をつけさせる。
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コッチの方が、ギスギスしてて生きにくい社会なんじゃないのか。
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オムライスを頼んでスパゲティが来ても、それはそれでラッキーと思って食べればいいじゃないか。
もしくは、どうしてもオムライスの気分なんだったら、淡々と指摘して作り直してもらえばいいじゃないか。
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あれこれ、完璧じゃないものにケチをつけなきゃ気が済まないような社会は、どんどん生きにくくなっていく。
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ししとうのパックを買う時、「もしかしたらこの中のいくつかはとんでもなく辛い青唐辛子かもしれない」ってことを思い浮かべながら、それでも買い物カゴにそれを入れるようなユルさが、今の社会にはもっともっと必要なんじゃないのか。
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楽しいじゃないか、そういう社会の方がさ。
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そりゃ、目先の出来事だけ見たら、「辛い思いはしたくない」かもしれないけど。
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でも、社会を、ひいては人生を長い目で見た時、そういう小さな不運が起きる人生の方が、まったく起きない予定調和すぎる人生よりも、よっぽど素晴らしいものになるんじゃないのか。
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「ししとう辛いーーーーッ!!」
って思いをしたことがある人の方が、無い人よりも、様々な場面できっと他にも面白い思い出を作れているんじゃないだろうか。
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朝の食卓で、「このししとうは辛いか?辛くないか?」と恐る恐る見つめるまりこを眺めながら、そんなことを考えました。
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楽しい朝食。
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ししとう、ありがとう。
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もしかしたらこれから先、テクノロジーが進んで、ししとうの中に青唐辛子が混ざらない日が来るのかもしれない。
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それはそれでテクノロジーの素晴らしさでもあるけれども、同時に僕は、「このししとうは辛いか?辛くないか?」とドキドキしながら口に運ぶ機会が失われたことを、少し残念に思うだろうな。
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いつまでも、小さなドキドキが消えない日常であってほしい。
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「予想外」は、時にストレスだけれども。
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小さなストレスまで徹底的に消すような方向性は、正しいとは思えないんだよな。
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#林原家の食卓
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毎回ではないけれどもよくこういう会話は出る
僕もまりこも世界の不思議にそこそこ敏感だ
まぁ興味の観点が違うんだけど
今日みたいな話は僕の方がよく出す
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あと、その後まりこが調べてくれたところによると
ししとうが辛くなるのは青唐辛子の花粉を受粉するっていうより
気温や水分量によるストレスで辛みが出る説の方が多いようだ
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へー
まぁでもどちらにしたって技術で解決し得る問題だよね
気温や水分量だってテクノロジーで管理できるだろっていう
でも現時点ではできていない
別にこれからもそこまでできなくていいと思う
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できるように努力する人たちはいっぱいいるんだろうから
きっといつの日かできるようになっちゃうだろうけど
それを待ち望んでいる人もいるんだろうけど
僕にとっては別に欲しい未来ではない