日本癌学会 CancerX リポート3 多様性を持つということ
こんにちは。CancerX広報担当のかまさんです。
2022年9月30日(金)横浜市のパシフィコ横浜で、第81回日本癌学会学術総会 CancerX特別企画セッションが行われました。
2023年2月に開催される「World Cancer Week2023」では、この日本癌学会のセッションの続編として「DE&I 〜がん領域におけるダイバーシティ課題とは〜」を開催します。
この記事では、日本癌学会のセッションを振り返りながら、
現在動いている具体的な取り組みや多様性を持つことの重要性を紹介していきます。
1,地域間格差の解消のために
中村健一さんは、国立がん研究センター中央病院 国際開発部門で部門長を務めてらっしゃいます。消化器外科医としての経験を積んだのち、2006年より国立がん研究センター中央病院で全国規模の多施設共同試験の運営、管理に携わっています。また、2020年よりアジア臨床試験ネットワークの構築を手掛けていらっしゃいます。
中村さんが最初に出されたスライドはこちらの数字が書かれたものでした。
これは、中村さんの現在取り組んでいることから、多様性に関係する3つの数字です。
「8.1%」は日本で保険適用となったがん遺伝子パネル検査を受けた患者さんのうち、治療薬にたどり着くことができた人の割合を示しているそうです。
中村さんは、この8.1%という低さについて、保険が適用されている薬が少ないことや、次の選択肢として想定される治験の数が影響しており、特に治験まで到達することができない都市と地方の地域間格差を原因として挙げられました。
また、残りの2つの数字は治験の数を表したもので、「507」は現在国立がん研究センター中央病院で行われている治験の数。「0」は中村さんが以前勤務していたある県の県立病院での治験の数と具体的な数字を挙げて、地域間の格差が目に見えて大きいことを指摘しました。
中村さんは、現在この地域間格差を解消するための「オンライン治験」の仕組み作りに取り組んでいます。これは、地方に住む患者が、東京の国立がん研究センター中央病院からのオンライン診療で直接抗がん剤の投与を受けながら、適格性や有効性の評価を行い、同時に患者は近所の病院(パートナー病院)へ行き検査を受け、その検査結果をクラウド上でがんセンターに共有することで、がんセンターの医師が投与などの判断を行う仕組みです。
これによって地方に住む患者は、一度も東京へ行くこともなく治験に参加ができ、距離が阻害要因となっていた地域間の格差を解消できるというものです。
2、多様性の確保
中村さんはアジアでの臨床試験ネットワークづくりにも携わっています。
各国へのプロジェクトの広がりは、そのまま多様性を確保することにつながっていきます。
中村さんは、多様性は「危機に強い組織・仕組み作り」や「新しいイノベーションを生み出す」ことに必要と示す一方、コンセンサスをとったり、まとめたりする際に時間や手間を要することもあると話しています。
中村さんは、様々な背景や考え方がある、多様性のある人々の中でマネジメントするコツについては、多様性の中においても譲れない部分を決めておくことだと話されました。
何でも認めてしまうことではなく、基本的な価値観はしっかりと保持しながら、その周辺部分について認めていくことが大切であり、新しいイノベーションを生み出すためには必要なことであると強調していました。
3、多様性の富む企業は成長性が高い
日色保さんは、現在、日本マクドナルドホールディングスの代表取締役社長兼CEOを務めています。
日色さんの前職は、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの社長で、同社は、2018年に「女性が活躍する会社BEST100(日経BP社『日経WOMAN』)」において総合ランキングで1位に選ばれました。
日色さんは当時のことについて、ジョンソン・エンド・ジョンソンは外資ということもあり、ダイバーシティに当たり前に熱心に取り組んできていた。ダイバーシティは他者に評価されるために行っていたわけではなく、
また目的だったことは一度もない、あくまでもビジネスにおけるパフォーマンスをあげるためのものとして、取り組んできたことを強調されました。
また、日色さんは、ダイバーシティの水準と、企業のロングタームの株価や収益性には明らかな相関関係があると指摘。同質性が高い組織は結束力が強く、一見強そうにみえるが、コロナ禍が示すように環境の変化には非常にもろく、多様性に富む企業の方がグローバルなビジネスの世界においては成長性が高いというのが常識であると話されました。
また、マクドナルド入社当時のエピソードも披露。
現場のことをしっかり学びたいと半年間いろんな現場で研修をされましたが、前職で取り組んでいたダイバーシティの領域が、医療関係者が対象だったこともあり、改めて狭い範囲であったことを痛感されたそうです。
マクドナルドでは、お客さんはもちろん、仕事をする人も老若男女多種多様な方が多く、その方々でチームを作るという経験から、多様な方の強いところを引き出して、ビジネスのアウトプットにつなげていくダイナミズムさを感じたそうです。
日色さんは、ビジネス界であっても、医療界であっても、新しいものを生み出すイノベーションは、これからの大切な生命線であると強調されました。
同質性の高い組織は、今までの経験に頼った減点方式になりやすく、一方で、多様性をもつダイバーシティが高い組織は、組織としてのカルチャーが新しいものを評価する土壌ができているため加点方式になりやすいと指摘。その結果として新しいイノベーションが生まれ、研究成果にもつながると話されました。
4、セッションに参加してみて
「多様性が大事らしい」日頃のニュースや新聞からその重要性は気がついて
いました。しかし、このセッションを参加して、自分で行動を起こすまで
私の意識改革は進んでいなかったなと感じました。
中村さんはセッションの最後に「混ぜることの重要性」を強調しました。
CancerXのXには掛け合わせるという意味も込められています。
これからも、多様なバックグラウンドを有する人々の考えやスキルを掛け合わせて、ひとりではたどり着けないアイデア・成果・変化を産み出す、コレクティブインパクトを目指していきたいと感じます
5、最後にWorld Cancer Week 2023のお知らせ
「思いをかけあわせて、次のアクションへCollective Action!”」をテーマにがんに関する社会課題の解決を目指し、2023年1月29日〜2月5日の1週間でオンラインセッションやワークショップ等を実施いたします。
■イベント概要
日時:2023年1月29日(日)〜2月5日(日)
会場:オンライン配信
主催:一般社団法人 CancerX
■チケットのご案内
超早割チケット 1,000円 販売期間11/5 ~ 12/18
早割チケット 3,000円 販売期間12/19 ~ 1/15
一般チケット 5,000円 販売期間1/16 ~ 2/5
■お申込み
https://wcw2023cancerx.peatix.com
peatixサイトでお申込みください。
みなさんと新しいアクションが生み出せるような機会にしたいと思います
ぜひご参加ください。
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