Teaching Kitchen Research Conference体験記(2)~カンファレンスの概要~
キャンサースキャンで新規事業開発を担当している古谷です。
前回の記事ではTeaching Kitchenとは何か?ということをお伝えしました。
本記事ではカンファレンスの目的や概要などのディテールをお伝えします。
1.カンファレンスの目的
本カンファレンスは2年に1回開催されます。
その目的は、Teaching Kitchenに賛同して現場でのプロジェクトを実践している大学・医療機関等の研究家や医師、栄養士などを招集して、より効果的なTKプログラムの改善・拡大を図ることにあります。
そのため、歴代の会場も実際にキッチンを有する大学等が選ばれており、今回はキッチンを新設したばかりのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が選ばれました。
実際、UCLAでは学生・教職員・スタッフ向け健康支援プログラム”FITWELL Program”の一環としてTeaching Kitchenのプログラムが提供されています。
2.参加者の属性
リアル・オンライン合わせた約500名の参加者のうち、60%(約300名)は実際にそれぞれの所属組織(大学、研究機関、企業等)でTeaching Kitchenの実践に関与している医師、栄養士、研究者などです。
特徴的なのはやはり料理を主軸に据えていることから女性の参加者が8割超という点です。
3.2日間のプログラム
プログラムは大きく以下の2つの内容で構成されていました。
タイムテーブルも、①と②が交互に続くような形で配置されています。
①基調講演(KeyNote)・パネルディスカッション
プログラムは提唱者のDavid Eisenberg氏を始め、Teaching Kitchenに共感して活動を支援している各界エキスパートが登壇しました。
NIH(アメリカ国立衛生研究所) 栄養学講座のアクティングディレクター Christopher Lynch(画像 右から2番目)
NIHはアメリカ最古の医学研究機関で、国立癌研究所や国立ヒトゲノム研究所など27の研究機関から構成
年間の予算額は250-300億ドル(!)、過去のノーベル賞受賞者は100名に達し、世界屈指の医学研究機関
Harvard Law SchoolのFood Law and Policy Clinic of the Center for Health Law and Policy Innovationのディレクター、Emily Broad Leib(画像中央)
Food Law and Policy Clinicは食に関する実践的な法曹教育を学生に対して提供
扱うテーマは、食品廃棄物と回収、フードアクセスと栄養、食品業界のサステナビリティなど
②Teaching Kitchenの実践事例の紹介
(Oral Abstracts Session)
このパートでは、2日間で合計12人のプレゼンテーターが所属組織で実施しているTeaching Kitchenのプロジェクトが紹介されます。
一種のベストプラクティスの共有、とも呼べる内容であり、私自身も「これはぜひ日本でトライしてみたい」と思うインサイトを多く得ることができました。
4.提唱者であるDavid Eisenbergによる基調講演:
”Teaching Kitchens Past, Present and Future”
プログラムは、”Teaching Kitchens Past, Present and Future”と題してDavid Eisenberg氏による基調講演からスタートしました。
過去:”Teaching Kitchen”のルーツとしての”医食同源”
"Teaching Kitchen"のルーツ、それは同氏が学んだ中国での”医食同源”にあることが説明されます。彼は1979年、アメリカの医学交換留学生として初めて中国へ留学します。
留学先は、伝統中国医学のメッカとして知られる北京中医学院(現:北京中医薬大学)でした。
中国で「食事は薬と同じくらい重要である」という”医食同源”に触れたことが、そのあとの”Teaching Kitchen”のルーツであることが説明されました。
このあたりは、”医食同源”に馴染みを持つ我々、日本人にとっても、非常に興味深いエピソードと言えます。
現在:拡大しつつある"Teaching Kitchen"
続いて大学・医療機関・企業などでのキッチン新設~プログラム提供の動きが紹介されました。
こうした活動の結果、コロナ禍以前の2017⇒2019年にかけて、プログラムの参加者は4倍近くまで拡大しています。
将来:Teaching Kitchenの将来像
最後に、現在はキッチンが地域・コミュニティの共有アセットとして、様々なステークホルダーの健康増進やコミュニケーション活性化に資するものにになっていくだろう、という将来像について語られ、基調講演が締めくくられました。
5.Teaching Kitchenの体験・実食
会場であるUCLAに完成したばかり(とてもキレイ!)のキッチンを用いて、専属のシェフの指導の元で料理体験が行われました。
この日のレシピは”シャクシュカ”というイスラエルの伝統料理でした。
これは、ケールなどのたっぷりの野菜をオリーブオイルやガーリックで
炒め、仕上げに卵を落としてポーチドエッグのようにした料理です。
調理台には事前にカットされた野菜やオリーブオイル等が並んでいました。
参加者が6人1チームに分かれて、シェフの指導の下でシャクシュカの調理をスタートします。
我々のチームでは料理が得意な副社長の米倉がリーダーシップを発揮し、美味しいシャクシュカを作ってくれました。
(私は料理が得意ではないので、見てるだけ・・・)。
最初は肉や魚が一切入っていない料理のため、「物足りないのでは?」と思ったのですが、オリーブオイルとガーリックが複雑な味わいを出しており、全く物足りなさを感じず、美味しく食べることができました。
このように、健康に良い材料を使いながらも、調味料や調理方法などの工夫によって、美味しく物足りなさを感じることがない料理を教えること、これがTeaching Kitchenの重要なポイントの1つとなります。
6.ランチ等でのTeaching Kitchenレシピの実食
ランチや朝食は会場にてサーブされ、参加者同士で懇親を深めながら食事をとることができます。
このときの料理も全てTeaching Kitchenのレシピとしてシェフが開発したものばかり!
基本的にどれも野菜をたっぷり使いつつ、動物性の食材はシーフードを主とすることで、低カロリーで美味しい料理に仕上がっていました。
カンファレンスの雰囲気をつかんでいただいたところで、
続く第3回では私自身が感じた気づきやインサイトをまとめてお伝えしようと思います。
ご参考)Teaching Kitchenの日本での取り組み概要はこちら