肝転移に対するラジオ波焼灼術


肝転移に対する究極の局所治療は、手術
見えている肝転移を直接取り除く行為は最強でしょう

その他に

放射線治療系(粒子線治療や陽子線治療含む)
ラジオ波焼灼術(以下RFA)
動注やTACEなどのカテーテル治療

があります。


皆さんはご存知ないかもしれませんが、多くの腫瘍内科医は
基本的に、切除ができない時点で
上記のような肝転移に対する局所治療を基本的に全て
否定します。


当然です。

皆さん、転移がどのように出現したか、考えてください。

ある日突然、肝臓の中に転移が出現したわけではありません。

すごく簡単な書き方をすれば
原発病巣から漏れ出したがん細胞が
血液の中に漏れ出して
体の中を駆け巡る。
その中で、そのがん細胞が引っかかりやすい臓器の代表が
肝臓と肺です。

肝臓に引っかかったがん細胞が、
そこに居座って育ったもの。
それが肝転移です。

さて、ずーっと血液の中を浮遊しているがん細胞が
都合よく、肝臓に、1つだけ、引っかかっる。
そんなことがありえるでしょうか?


現在は、血液からがんのDNAが採取され
パネル検査できる時代です。
それだけ、再発転移の状態では
がん細胞は血液の中に、無数に存在します。


それと、CTなど画像で見える肝転移は
5mm以下は発見が難しいでしょう。

ですので、CTで一つしかない、と診断されても
それは画像の限界で見えていないだけで
すでにがんは肝臓の中に複数存在する可能性が高いと考えるべきです。

なので、肝転移があっても、見えているからとひとつひとつを
局所治療で叩く行為は
モグラ叩きなだけで、

やはり、まず有効な薬剤があるのなら、全身化学療法から考えます。
手術以外の局所治療を最初から考えることは
自ら命を短くする行為だと思います。


僕の患者さんの中にも
何人かの患者さんが、
肝転移に対してカテをして、数が少なくなった、小さくなった
だから全て消し去りたいと
RFAや放射線治療を受けた方がいます。
しかし、残念ながらほとんどが、早期に、他の肝臓の部位に再発し
そして、もっと不幸な方は
肝臓以外の部位に急激に再発したりします。

カテは、局所の抗がん剤治療です。
局所に高濃度に抗がん剤を投与し肝臓全体に対して効果を高めようとする行為です。臓器単位の抗がん剤治療と考えています。
そういった意味で、他の局所治療よりもワイドレンジで
見えていない微小な肝転移に対しても作用する可能性があります。
そして、注入した抗がん剤は、これは皆さん勘違いされる点ですが
抗がん剤も液体です。血液も液体。
だから、ずっと肝臓に留まることはありません。
カテのパワーは、最初にがんを通過する際の、超高濃度の液体の通過する
ファストパス効果の部分です。ここで勝負します。
そして、一定時間高濃度を維持した後は、血液で洗い流されます。
その抗がん剤は、全身治療と同様、全身に流れます。
これは、僕の本意ではありませんが、
結果的に少量の全身抗がん剤治療となるためか
肝臓の治療をしているのに、肝臓以外の病気も同時に縮小した方も何人もいます。たまたま、使用した抗がん剤の感受性がよかったことや、
肝臓を制御したことで免疫系が活性化され他部位の病変もサイトカイン等が攻撃する現象が起こったのかもしれません。


いずれにしても、当院が肝転移の治療を得意としているのは、
その前にさまざまな薬物療法をやりつくしているのに
同じ薬剤でも動注やTACEをすることで
さらに効果を出し、その成績をちゃんと学会等で報告しているところだと思います。

その際に、必ず、肝臓以外の再発の併存状態を意識します。
必要であれば、放射線治療医と相談し
肝臓以外の部分を同時に放射線治療してもらうこともあります。


もう一度強調しておきます。

肝転移、って遠隔転移の一部で、
1個あったらたくさんありますから
画像で見えていないミリ、ミクロ単位の多発転移が必ずあると思ってください。


見えている1個を焼いてどうするの?
焼くことで悪性化して、逆に肝内に急速転移することもあることを知ってください。
腹膜播種を起こすこともあることも知ってください。




転移を個でみる考え方は間違い
せめて、臓器でとらえないと

だから、肝転移の局所治療としては
転移個々ではなく、肝臓全体への治療という考え方が妥当




関東でも関西でも
ラジオ波をやってる施設は限られていて
かなりの数をやってるはずですが


やってる=やったとこは効いてる=命が長くなる わけではないです


まあ、大腸がんなどの中には比較的がんの増大がゆっくりな場合もありますので、そのような場合はRFAが有効なことは事実ですので、
がん全体を公平に、いろんな治療を考慮しながら
治療を提案できる医師に相談するべきです。

一つの治療に固執する医師に相談するべきではありません。


かなり前の話ですが、
肝転移にRFAやったら、ちゃんとその後、全身抗がん剤やってくださいね、と学会で言ってた先生いたけど

それならRFAの意味ってなんだよ
最初から全身ケモしろよ、全身ケモでも小さくなるだろ
と突っ込みたくなりました



再発転移は、全身病ととらえて
放射線でも、サルベージ手術でも、カテでも
局所治療をする際は、その意義をしっかりと考えなければならない


患者が希望したから焼きました
的なことを学会で平気でいうRFAの先生も
何人もみてきましたが、

それは、クリニックの医師に多いのですが、

非常に責任感のない気持ち悪い医師の集団です

あなたは本当に専門医ですか?医者ですか?
医療に無知の患者が希望すれば、なんでもするのですか?

全く同意できないし、理解できない


医学の素人相手に、間違えた船頭をしてはいけない


自分の得意分野の診療以外にも満遍なく
知識をもたなければ、がん治療はやってはいけない


焼けばいい、その感覚が、もう理解できない




木を見て森を見ず


理解できる患者さんだけでいいです。


僕は自分の患者さんには
肝転移のラジオ波は勧めません。



今日はここまで。

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