最後の砦 繋ぐ医療
本日は、他のがん拠点病院で全く治療法がなくなった方の塞栓術を実施しました。
実は、希少がんで、治療自体も17回目。
希少がんは、カテの実施経験も、病気自体の数が少ないこともあり、圧倒的に少なく、手探りな部分もあります。
普段、僕は、最期の砦となることに抵抗があります。
それは、緩和治療も立派な後半戦の治療で、
緩和治療をしっかりとやったほうが、効かない保険で使える抗がん剤を、
「なにかしていないと気持ちが耐えられないから」
と続ける方が、がんは増悪するし、抗がん剤の副作用でしんどいし、
結局緩和治療をちゃんとされた方が長生きするし、ご本人も安楽な余生を過ごされる患者さんをいっぱい見てきました。
ただ、稀に、全ての癌治療をやりつくしても、
全身状態が悪くなって癌治療ができないのではなく、
元気いっぱい、だけど、今の科学でこれ以上治療法がない、
そういう患者さんにとっては、うちの治療は最期の砦になりえます。
本心は、僕は、次に繋げる治療をしたいのだけど・・・
でも、本日の患者さんは、僕の治療ができなくなったら、
もうすでにがん拠点病院でも他に治療法はない、と宣言されており、
僕が、「もう治療できません」といった時点で緩和治療。
だから、緩和治療がいかに大切なものであるか、の前提を超えて、
僕は最期の砦として、この患者さんの病気を、少なくとも
横ばいで維持することを求められました。それも、希少がん。
本日は、17回目のカテでしたが、
幸い、カテを始めたときと比べても、まだ病気は小さい状態を維持しています。
途中何度も、効果が出にくくなったから・・・と頭を抱えましたが
それでも僕の経験からの創意工夫で、その次の治療でさらに縮小させたことも何度もありました。
最期の砦と言われることは、やはり好きではありませんが、
本当にそんな状態の患者さんに対しては、
たとえ病気が微増しても、治療を続けることで命が長くなる、と医学的に考えられるのであれば、治療を継続しています。
結果、10回、20回という、異常にカテの回数が多くなり、
うれしいことに、元気に長生きされる患者さんを数多く診てきました。
ただ、できれば、最期の砦、の前に相談に来て欲しい。
なぜなら、全てを使い切る前に、生命に直結する、そして今の医学でよくならない臓器をカテで改善し、時間を稼いで、次々に誕生する新しい治療に繋げる。
僕は、最近、この繋げる治療に魅力を感じています。
繋げる手段がなく、効かないと予測されるまま、保険でできるからと
奏功期待度5%以下の治療をされるよりも、
この臓器を救って、この臓器は目をつぶる。
そして命を繋ぎ、次の治療に繋ぐ。
そんな立ち位置を目指したい。
それでも、僕の治療が最期の砦となるのなら、
精一杯、命を繋ぎます。
実際、今も、最期の砦としてカテをしている患者さん達。
目標の設定、余命の使い方など、繊細な話をすることもありますが、
砦として、命を延長する使命をこれからもがんばりたい。
という感じです。