放射線治療か、がんカテか、どちらが先か
放射線治療も、がんカテも、どちらも局所治療。
薬物治療後に、部分的に小数個再発した場合、つまりオリゴ再発の場合など
そもそもそのタイミングでは有効な薬物が枯渇している場合も多く
局所治療を検討したくなる。
基本、転移は、全身再発の一部症だから、薬物治療なんだが
頭ごなしにそれで薬物治療を、ただ保険で承認された、それも15年前に、とか
はなから成績が悪いと予測されるものを使うより
とりあえず、後半戦は、賢く柔軟に治療方針を考える必要があり、
そこで、いろんな治療を組みあわせた集学的考え方が大切になる。
外来で、時々問題になるのが、このようなオリゴっぽい再発で
放射線治療をまだやってないとき。
どちらをさきにやれはいいか?
すごーく簡単に言えば、僕は立場的に放射線治療を推す。
理由は簡単、放射線治療の方がエビデンスが多く、動注はエビデンスがカラカラ。
うちで出した学会発表も論文も、所詮エビデンスとは程遠い、うちの施設の成績
(ちゃんと科学的に検証はしていますが)
だから、総合病院のいち勤務医として、両方できるならまず放射線治療を推す。
さて、ここで、両方の局所治療の個性、キャラクターの違いを書いときます。
放射線治療
・エビデンスが多い
・よりピンポイントの治療ができる(範囲が狭くできる)
・薬物を使用しないので、薬の副作用がない。寝てるだけで終わる。
・デメリットの最大の点は、基本、同じ箇所に1回しかできない。
治療後の最初に対して再照射できるケースは稀。
・効果発現に時間がかかりやすい
がんカテ
・エビデンスがほとんどない
・そもそも、治療血管の選び方、動注薬剤の選択と量など、術者の選択の余地が多いので、放射線治療のように安定した成績が出しにくく、術者、治療計画者の能力が大きく左右する
・放射線治療よりもピンポイント感が乏しい
よく言えば、放射線治療は、がん1個、を狙うのに対して
がんカテは、臓器1個を狙えるので、同じ領域に複数再発している時は
放射線治療は無理でもがんカテは可能なことがある
・同じ理由で、放射線治療がしにくい(周囲の臓器も一緒に焼けてしまう)ような大きな腫瘍でも、がんカテはやりやすい(多くの血管から治療する必要があるが)
・一発勝負、の治療ではない。やはり特殊な抗がん剤治療なので、
通常の薬物治療同様、動注は繰り返す必要がある。
よく言えば、再発しても、また同じ薬剤、もしくは違う薬剤で動注できる
悪く言えば、何度も入退院を繰り返す必要がある
共通して言えることは、
どちらの治療もお身体の侵襲が少ない、これは確かでしょう。
本日、大阪府街からもう16回、ちょうど1年近く、入退院されている
あるリンパ節転移の患者さんですが、抗がん剤が他の方より少しだけ多い関係で
術後わずかな倦怠感を訴えるだけで
今日もお一人で100kmくらい遠いご自宅に帰られました。
経過も非常によく、定期的に治療ができている(本人が頑張って通院してくれている)おかげで、初診時よりもはるかに小さな状態で病巣も維持できています。
どうしても、抗がん剤って聞くと、僕も昔好きだった白い巨塔など
平成初期の医療ドラマのように
吐き気などで苦しむイメージが皆さんにあります。
現在は、制吐剤などの進歩によって、通常の投与法でも副作用は随分と楽になりましたし、がんカテの前にも制吐剤やステロイドを、通常の薬物治療同様使用し、
かつ使用する抗がん剤の量も全身投与より少なくてすみますから、
まあ、皆さん、カテの後も基本お元気ですね。
基本的に、塞栓術自体は、動注の部分が効かないと有効性は乏しいのですが
一部の希少癌は動注も効かないので、その場合は、塞栓術頼りとなり
かなり強い塞栓をぎりぎりのラインまで実施します。
その場合でも、腹痛や悪心がある程度出現しますが、翌日にはほぼ消失しています。
というわけで、がんカテは局所治療ですが、放射線治療とはある程度のところで棲み分けしています。
今年の研究テーマは、放射線治療後に再発した病巣に対して、がんカテが有効かどうか。うちは、放射線治療医がしっかりとされた先生なので、いろいろと相談しながら治療方針を決めることができて助かっています。
よその病院から紹介されてくるときは、多くの患者さんは、放射線治療ができる部位ならすでに照射された後のことが多いのですが、それでも動注を実施しています。
ただ、照射後の場合はいろいろと問題が生じやすいこともあり、そこらへんの安全性や、治療範囲の設定など、術者の経験と、放射線治療医からのアドバイスが必要ですね。
本日はこれくらいで。
今週のカテの患者さん、そしてカテが延期になり他の治療をされる患者さんも
皆さん、頑張っていきましょう。
ああ、以前と比べてなんてふつーなブログなんでしょう。
早く、以前のような、味のあるブログが書きたいです。
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