ハンターに学ぶ、美しい自然音を録る技術
もしYouTubeの更新が途絶えたら遭難したと思ってください。カナリーイエローです。
実は週一くらいの頻度で山に通っています。まあ山に登るというよりはフィールドレコーディングのためなので、頂上まで行かずに帰ってくることも多いです。
めずらしい趣味みたいに思われますが、良い感じに環境音をキャプチャーできれば、それをお金に換えるチャンスがあるわけで。自分は副業って感覚で取り組んでいます。
さて、自然音をきれいに録るには何が必要でしょうか?
高価なマイクとレコーダー、それに最新の音声編集ソフト?あまり整備されていない山に入るなら登山用の装備も必要でしょう。何をするにしてもお金がかかります。
しかし、本当にギアがすべてなのか???
今回はフィールドレコーディングを始めるのに一番大切なことを、有名な狩猟ゲーム「theHunter: Call of the Wild」に例えて解説します。このゲームを知っている方なら、狩猟において大切なのは銃の性能ではないことがわかっているはず。
theHunter: Call of the Wildとは?
リアルで美しい狩猟ゲーム。発売は2017年ということになっていますが、現在でもアップデートが続いている人気作です。2024年になってもグラフィックは十分綺麗だと思います。
Call of the Wildをプレイすれば、なぜ世界中にフィールドレコーディング愛好家が存在するのかわかる。逆になぜ人はCall of the Wildにハマるのかはフィールドレコーディングを経験すればわかります(わかるのか?)
狩りの準備
例えば、鹿を狩りたいと考えたとします。
このゲームの初期マップ(中央ヨーロッパ地域)では小さい鹿と大きい鹿がいて、それぞれに適した弾薬があります。
弱い弾を大きな鹿に撃ち込んではいけないし(致命傷にならず苦しませるだけ)、強すぎる弾を小さい鹿に撃ち込むべきではないです(適切な弾薬で殺さないとスコアが低くなる)。
銃と弾の組み合わせによっては複数のサイズに対応できますが、すべての動物に対処できる装備はないと思ったほうがいいです。鹿を探している最中にキツネが出てくることもめずらしくないですが、鹿を撃つ弾がキツネにも適しているとは限りません。
つまり、ゲームを始める前に今日はどのサイズの獲物を狙うかを決めて、それに合った銃と弾薬をもっていくことになります。そして、よほどのことがない限り一度決めたプランを変えるべきではありません。
ニードゾーン狩り
このゲームの初心者には「散歩狩り」といって、とにかく歩き回る手法がおすすめされます。決して効率はよくないですが、動物の鳴き声、風向きといったゲームの基礎を学ぶための重要なステップです。
一方で、待ち伏せに近い手法として「ニードゾーン狩り」があります。ニードゾーンというのは動物がエサを食べる場所、水を飲む場所、休憩する場所です。ゲーム内に点在するニードゾーンを把握すると、それらの位置関係や動物の生活サイクルから先回りして狩りをすることができます。
下見が大切
じゃあ最初から待ち伏せすればいいだろと思うかもしれませんが、ゲーム開始直後はマップが広すぎて、どこにニードゾーンがあるのかわかりません。
始めたばかりの人が何をするべきか?とりあえずライフルは置いといてマップをひたすら探索することです。展望台やアウトポスト(キャンプ地みたいなとこ)を開放して、行動範囲を広げ、地形をよく観察します。銃を使わない簡単なミッションで資金と経験値を稼ぎ、ついでに動物の痕跡やニードゾーンを見つけていく…
そうすると「この時間帯ではここが狩場になるんじゃないかな?」という予測ができるようになってきます。
待ち伏せをして動物を狩るには下見が絶対に必要なわけで、そのための歩き回る時間が長くなるのがゲーム序盤の難しいところです
(ここに到達する前に挫折する人も多いはず)。
レコーダーは持っていかない
話はフィールドレコーディングにもどります。
もう気づいているとは思いますが「銃と弾薬」を「マイクとレコーダー」に置き換えれば、この文章はフィールドレコーディングの入門解説になります。
「とりあえず有名な山に出かけて、レコーダーをもって歩き回る」というのは、フィールドレコーディストとして上手いやり方ではありません。ニードゾーンや動物の挙動を理解せず、ずっと散歩している素人ハンターみたいなものです。そもそも人気の山は登山客とすれ違う確率が高いし、山の中とはいえ自動車の音を拾ってしまう場所も多いです。
また、単純に山に行くといっても「山の音」とは何か?鳥、動物、沢や滝?何を録るかによって出かける時間帯、持っていく機材は変わるはずです。
「そんなこと最初から分かるわけない!」と思うかもしれません。その通り、わからなくていいんです。初めて行く場所はロケーションハンティングとして割り切って、現地を歩き回ることに費やすべきです。
知らない土地へ日帰りで行って帰って来るときなんて一発勝負みたいなもので、写真ではものすごく良い場所に見えたけど、実は飛行機がうるさいとか観光客が多いとか、空振りに終わることもめずらしくありません。
ならば録音はせずに、その場の音を真剣に聴いて来るほうが良いんじゃないでしょうか。
無理に田舎や秘境へ遠征しなくても、時間帯によっては近所の公園で良い音を録れるかもしれません。すべては準備次第です。
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