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心臓の在り処

もう2度と逢えないかもしれない。
そう思うと胸が千切れそうになる。

あのときもっと会っておけばよかっただとか、
あのときもっと意地を張らなければよかっただとか、どうしてあなたを1年以上も信じられなかったのだろうとか、そんなことばかり思う。


「わたし体調に繊細で、少しの変化もすぐ対処しちゃうんですよね」
「すごい!長生きしそうですね」
先日、そんな会話を仕事でしたっけ。
「長生き、いいですね。長生きしようかな」
なんておちゃらけたけど。

こんなに胸が締め付けられるような想いを何度も何度も抱いていたら、寿命は縮まるに違いない。

愛するひとを亡くしたようなつらさと似ているのではないだろうか。
そう思った。
よく言うじゃないか、最愛の人を亡くすと追うように亡くなるって。
なんだか、少しわかるような気がした。

28年間生きているが、失恋したってこんな気持ちになったことはない。
あんなにあったかくて、何かを与えてくれたことが初めてのように思えた。 与えようとしてくれたとか、そういったことはあるのかもしれないけど。
こんなにも心を動かされたことはなかった。

いつもさりげなく見守ってくれてること。
わたしが美味しそうに食べてるとびっくりしたような顔で見てくれてること。
危害が加わりそうなとき、庇い続けてくれたこと。
わたしが誰かと笑ってると、こっそり会話を聴きに来てること。
わたしが困ってると、助けに来てくれること。
わたしが愚痴をこぼしてくれたときは、お菓子を買ってきてくれたこと。
わたしが嫌な想いをしたときは、さりげなく聞き出そうとしてくれたこと。
わたしに褒めてもらいたくて、でもうまく褒められなくて、拗ねてしまったこと。
わたしが女好きのオーナーに話しかけられたとき、見たことないくらい怒り狂ってたこと。
おそらくたぶん、わざと手をぶつけて、頭を撫でてくれたこと。
新しくつけていた香水の名前が、「love for her」という意味深な名前だったこと。
たぶん、私に出逢って、人生が変わったと言ってくれたこと。
手を差し出してくれて、手を繋いだこと。
酔っ払ったふりをして、膝に飛び込んできたこと。
ゲームで負けて本来わたしが飲む予定のお酒を一緒のチームのひとが飲んでくれてたとき、あなたが飲もうとしてくれていたこと。
伝票を書いてくれていた時代、いつもハートを書いてくれていたこと。ときどき塗りつぶしてくれてたこと。
わたしがいつも書いてるSNSをいつも見てくれていたこと。
さりげなく、誰かが言った可愛いに同意してくれたこと。
いつもラブソングを歌ってくれていたこと。
いつも、ラブソングをSNSにあげてくれていたこと。

たくさんの愛をもらってたんだ。
わたしは、書き尽くせないくらい、たくさんのあったかいものをもらっていたんだ。

だから、いつも幸せだったの。
紛れもなく、幸せだったんだ。

その居心地の良さに甘えて、
臆病な私たちは、大事な話をして来なかったね。

わたしも、あなたも、怖かった。
でも、あのままでいるには限界だった。

もう、あなたに4ヶ月も逢ってない。
逢ってないどころか、。

胸が苦しいよ。
胸が苦しいの。

もう二度と逢えないのかな。
嫌だよ逢いたいよと言いたいけれど、
決定権は、わたしにはない。

嫌われちゃったかな。
それとも、望みすぎたのかな。

でも、もう無理だったよ。
だって、あなたの隣はあたたかかったんだ。
もっと逢いたかったし、毎日逢いたかった。
手をもっと繋いでいたいし、くっついていたかったし、少し寂しくなったときは抱きしめさせて欲しかった、キスさせて欲しかった、甘えたかった。
あなたが外で、人の見ていないところでも陰ながら小さい努力を積み上げてすり減っているのも知ってるから、あなたの日頃の小さな傷も癒したかった。

癒し合いたかったんだ。
でも。
もう逢ってくれないのかな。

「心臓の位置ってここにあったんだね」
漫画の中に出てくる恋愛小説の一説である。

今日も、また胸が痛いよ。



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