空想の世界で古と今を思うこと【ポケモン化石博物館/群馬県立自然史博物館】@群馬県・富岡市
実はポケモンはほぼ未履修。
いや、未履修ではないのだが、クリアは元より図鑑の完成とかはしたことがなく、可愛いポケモンを愛でた記憶のみがある。しかも身近な人が現在もこぞってポケモンマスターなので、私の経験はほぼ未履修と言っても過言ではない。
そんな私がポケモン化石博物館に行くのは結構想定外。
きっかけは今回の群馬旅行に同行した友人がポケモン好きだったからだ。
私は群馬県に短い期間だが住んでおり、土地勘はあるので、富岡市というこんなアクセスの悪いところにみんな来るのかという疑問が浮かんだ。
この疑問は展覧会を見て解消されるのだが、事前予約制で600人程度の枠を設けているようだが、正直この地に富岡製糸場以外にこんなに押しかけてくることある?という感想を抱いたために、事前予約が必要なことも不思議な気持ちだった。
ポケモンの化石展はポケモンの骨格を紹介するとともにベースとなった恐竜の化石を紹介しているため、食性や特徴、生活環境も似せてデザインされていることがわかる。共に旅をする段階になったら食性やら環境も関係なくなるが、分布的な意味合いで似せているのだろう。なんとなく、このポケモンはこればモデルだろうな、みたいなものがあるが、化石にちなんだポケモンをここまで紹介してくれると、このポケモンが好き・この恐竜が気に入っている、という観点を超えて、こういう頭蓋骨を持つ恐竜が古来生存していて、これをモチーフにポケモンをデザインしたんという事実に感動すら覚える。ポケモン未履修の私でさえそう思うのだからポケモンや恐竜が好きな子供たちも化石に詳しくない保護者もきちんと学びとして見られるように作られていた。
何より一番感動したのが、展覧会会場最後にあった関係者を紹介するボード。この企画はとある地方の化石研究者が任天堂にこんな化石に展覧会をやりませんか、と一通のメールを送ったことが出発点である。
その研究者が全国の仲間の研究者たちと協力し展覧会を作り上げ、仲間の所属している博物館で巡回展を行うというものであった。
正直ポケモン展は「人が来る展示」であるため、収入を安定的に上げるために行っているのではないかと感じていた。
人が全く来なくても開催する意義のある展示はたくさんある。少しでも普及するために行わなければなくなってしまう文化の紹介や社会情勢に合わせて行うものもある。まず大前提として美術館や博物館はお金を儲ける施設ではなく、文化を存続させる施設である。しかし国や県によっては、そういった博物館施設が収入が上がらないため人件費を削ったりしている。一方でポケモンやジブリはみんながその価値や面白さ・素晴らしさを認めているものであるため、その支持は大いに厚いものであり開催すればファンがこぞって来館することが見えている。そこで収益を上げることで年間収入が確保され、収益が見込めない展示も行うことができるのだ。これは博物館施設が考えた生き残るための技だ。
例え人集めの展覧会でも、企画した人作り出した人がいて、展示につながるきっかけがある、ということを私は忘れていた。
この企画の出発点や展覧会にかける愛情の深さを感じて、本当に展覧会の企画者や関係者に失礼なことをしているなと反省している。
きっとこれは人集めの展覧会ではなく幼い頃に夢見た展覧会だ、結果的に人が集まったのは彼らの努力の結晶だ。
彼らはゲームの世界で色々な化石やポケモンに出会い、現実世界でこんな生き物たちに出会ったということを文化として紹介しているのだ。
ポケモン未履修でもこんな風に感想レポートを書くくらい感動している。
展覧会好きで人集めの展覧会に辟易している人、これは最後のボードを見るためだけにでもぜひ行ってほしい。
◼️群馬県自然史博物館