国宝 神魂神社本殿
造りは簡素だが圧倒される迫力!
建物に限っては 「 国宝 出雲大社本殿 」 よりも古い !
出雲地方独特の造りをした島根県の国宝 神魂神社本殿 ( かもすじんじゃ ) をご紹介します。
< 切妻造り >
まずは屋根の形からご説明します。
上の写真は神魂神社本殿 ( 上 ) と東大寺ないにある門 ( 下)の屋根の写真ですが、
以前ご紹介した秋篠寺本堂と瑠璃光寺本堂の屋根の形と比べてみてください。
これらの写真は真横から見ると台形の形をしています。
このような屋根を
「 寄棟造り 」 ( よせむねづくり )
と、呼びます。
それでは、「 寄棟造り 」の屋根と最初の写真の屋根を比べてみましょう。
屋根を真横から見ると、上2つの写真は下から写しているので、若干台形に見えるかもしれませんが、下2つの写真と比べてみると、明らかに長方形の形をしています。
このような屋根を
「 切妻造り 」 ( きりつまづくり )と、呼びます。
単純に屋根を真横から見て
台形は 「寄棟造り」
長方形は 「切り妻造り」
と、覚えておいて下さいね。
< 男の神様 女の神様 >
皆さんは、日本神話でおなじみの イザナギノミコト イザナミノミコト
と呼ばれる夫婦神はご存知かと思います。
イザナギノミコトは男神
イザナミノミコトは女神 です。
神魂神社の主祭神はイザナミノミコトで女神なんですが ・・・
筆者はクリアーな状態で建物を見るため、常に何の知識も持たずに参詣します。
しかし、一見して、男の神様をお祀りしている建物か?
女の神様をお祀りしている建物か?の判断が付く部分があります。
それはコチラの部分です。
右の写真の矢印部分をご覧ください。
屋根のてっぺんのとんがった部分を 「 棟 」(むね) と呼びますが、その棟に乗っかっているバッテン型の部材を
「 千木 」 (ちぎ) と呼びます。
矢印の先端をご覧ください。
「千木」のてっぺんが水平方向に切られていることがお判りでしょうか?
神社建築にはお約束事がいくつかあります。
そのひとつが、
女神をお祀りする建物の「千木」のてっぺんは、水平方向に切る。
男神をお祀りする建物の「千木」のてっぺんは、垂直方向に切る。
と、いうものなんです。
ですから、神社に参詣して 「 千木 」 のてっぺんを見れば、どなたでも主祭神が
男神なのか 女神なのか
の判断が付くというわけです。
現代では、建物の高さは棟の高さで決めます。
それ以前の神社建築は、地面から千木のてっぺんまでの高さで建物の高さを決めました。
宗教建築の役目のひとつに、「ランドマークである」ということがあります。
「ランドマーク」とは、目印・象徴という意味です。
お寺の仏堂に千木はありません。
千木は、神社建築の象徴なんです!
ですからお社の高さとは、「 千木のてっぺんまでの高さ 」 なんです!
「女神ここにあり!」
と、言わんばかりに存在感を示しています。
参考までに、男の神様をお祀りするお社の垂直方向に切った千木をご紹介しておきます。
実はもうひとつ主祭神が男神か、女神かの判断が付くものがあります。
< 不思議な堅魚木 ( かつおぎ ) >
タイトルの 「 堅魚木 」 とは、屋根の部材の名称です。
棟の上に乗っかっている横木 ( 水平方向に納まっている部材の総称 ) です。3つの矢印で示している部材です。
判りづらいので屋根を真横から見た写真でご確認下さい。
左右の横方向の矢印は、前述の 「 千木 」 を真横から見たものです。
下から上に向いている3つの矢印が指しているものが、「 堅魚木 」 です。
タイトルの < 不思議な堅魚木 > は、何が不思議かというと、堅魚木の本数なんです。
前述の 「 神社建築にはいくつかのお約束事があります。」 の中の二つ目に、
女神をお祀りする建物の 「堅魚木 」 の本数は、偶数。
男神をお祀りする建物の「堅魚木」 の本数は、奇数。
と、いうものがあります。
参詣当初筆者は、 「 千木は女神を表しているのに、堅魚木は男神を表しているとは? 」 と、疑問に思っていました。
が、後に 「 イザナミノミコトを主祭神とし、イザナギノミコトを合わせ祀る。」 ことを知り、納得できました。
お社は、 「 ひとつのお社に一柱 ( ひとはしら 神様を数えるときは、一人・・・二人ではなく、ひとはしら・・・ふたはしらと数えます。) の神様 」 をお祀りすることが原則としてありますが、 二柱の神様を合祀されているお社は、珍しいかもしれません。
続編では、本殿の歴史のこと、大社造のこと、堅魚木の本数のことについてもう少し詳しく触れてみたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?