部屋の住人(へやの じゅうにん)
[ 多読よみもの 単語レベル: ★★ やさしい ]
暑くて雨が多いところは、にぎやかです。
草や木が多いです。花も咲きます。
花に虫が飛んできます。虫が葉を食べています。
鳥が飛んでいます。小さな動物が動いています。
カサカサ。カサカサ。
夜になると、電気の光に虫が集まってきます。
ブーン。ブーン。
暑くて雨が多いところは、いつでもどこでも、にぎやかです。
私が6ヶ月住んだインドネシアは、にぎやかなところでした。
私はコスという下宿に住んでいました。
このコスには、小さい部屋が5つありました。
大家さんは、となりにある大きい家に住んでいました。
コスの部屋を借りていたのは、私だけでした。
右の部屋にも、左の部屋にも、誰も住んでいませんでした。
少しさみしかったです。
部屋の前には庭がありましたから、鳥や虫がたくさんいました。
部屋の外は、とてもにぎやかでした。
コスにはお手伝いさんが毎日来ていました。
朝、コスに来て、掃除や洗濯をしてくれました。
夕方、私が部屋に帰ると、いつもベッドの上に乾いた洗濯物が置いてありました。
毎日、お手伝いさんが洗濯してくれたのでした。
昼、出かけないで部屋にいるときは、
お手伝いさんが働いている様子を見ることができました。
私の部屋だけでなく、誰もいない部屋も掃除していました。
ですから、隣の部屋から音がするときは、お手伝いさんがいると思いました。
不安になるのは夜です。
ときどき、夜でも隣の部屋から音が聞こえました。
庭からも音がきこえましたが、これは、虫や動物が動く音でした。
電気の光に向かって、大きな虫が飛んでくるのです。
ですから、隣の部屋から聞こえる音も、虫がいるのだと思うようにしました。
ときどき、寝ている時に、自分の部屋の中でも音が聞こえました。
ススス。ススス。
何かが壁や床を歩いているような音です。
ここはインドネシア。
動物も虫も、日本より多いだろうから、家の中にいるのは絶対に虫!
気にしないで寝ましょう!
私は、部屋の中で音が聞こえるたびに、自分にこう言い聞かせていました。
ある夜のことです。
私はいつものように、ベッドで寝ていました。
スススと音がしました。
また虫がいると、自分に言い聞かせました。
そのときです。ベッドの横にあるゴミ箱から、
ドン!ガサッ、ガサガサガサ・・・という音がしました。
私はヒイッと言って、ベッドから起き上がりました。
ゴミ箱の中からはまだ、ガサガサ、ゴトゴトと音がします。
力強い音です。
私はおそるおそる、ゴミ箱の中を見ました。
ゴミ箱に入っているビニール袋が動いていました。
うわっ。そこにいるのは、なんだ?
静かに覗き込むと、灰色のものが見えました。
ガサガサ動いています。細長い生き物です。
細いしっぽが見えます。
・・・ヤモリ?
それは、
インドネシアではどこにでもいる、
もちろん、家の中にもいるヤモリでした。
ヤモリは壁も天井も歩くことができます。
このヤモリは、たぶん、天井を歩いている時に落ちたのでしょう。
落ちたところにゴミ箱があったので、大きな音がしたのでしょう。
このヤモリは、ゴミ箱の中であわてているようでした。
ヤモリも天井から落ちて、びっくりしたのかな。
なんだか、かわいいなと思ってしまいました。
さっきは、あんなに驚いたのに・・・
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