危険な実
[ 多読よみもの 単語レベル:★★やさしい ]
「まきびし」を知っていますか?
これは忍者が使う道具です。
小さくてかたくて、とげがついています。
忍者は逃げる時などに、このまきびしを道にまきます。
追いかけてきた敵がこのまきびしの上を走ると、足に刺さります。とても痛いです。
走ることも、歩くこともできません。
怖い道具です。
私はこの怖い道具に、アメリカで出会いました。
2004年、私はアメリカのネブラスカ州にあるリンカーンという街で、新しい生活を始めました。リンカーンに着いて最初の1週間で、アパートを決めたり車を買ったりしました。アパートは大学から歩いて30分ぐらいかかります。それで自転車も欲しいと思いました。でも、リンカーンには車屋さんはたくさんあっても、自転車屋さんはあまりありませんでした。自転車の種類も少なかったです。日本のママチャリのような自転車はありませんでした。タイヤが太くてゴツゴツしたマウンテンバイクしかありませんでした。店で一番安いマウンテンバイクを買いました。
私はさっそく、マウンテンバイクに乗って大学までいきました。大学まで15分もかかりません。坂道もありません。とても気持ち良く走ることができました。でも、不思議なことに、街の中を自転車で走っている人はとても少なかったです。リンカーンは人口も少ないし、みんな車を持っているから、自転車に乗る人は少ないんだと思いました。
自転車で家に戻ると、タイヤの空気が抜けていました。へんだな。パンクかな?コンクリートの上しか走っていないのに・・・
タイヤをよく見てみましたが、穴はあいていません。空気を入れました。空気はもれていません。これで大丈夫。
ある日、また自転車で出かけました。石の上を走らないように、注意して進みました。でも、タイヤの空気が抜けてきました。
ふと、道の横に生えている植物を見ました。茎が道路までのびていました。その植物には実がついていました。小さくて茶色い実です。私はその実をよく見ました。
「まきびしだ!」
その実には、かたいとげがたくさんついていました。
私は自転車のタイヤを見ました。
タイヤにはこの実がささっていました。
走っていた道路の前と後ろを見ました。先までずっと、この植物が見えました。道路に実が転がっているのも見えました。
リンカーンには忍者が使うような「まきびし」が落ちている。
このあと、私はリンカーンで自転車に乗ることはありませんでした。
アメリカ・ネブラスカ州リンカーン 2004年9月
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