最近のマーク・ザッカーバーグとテック企業文化について
別の場所でニューヨーク・タイムズ(NYT)の話題紹介を書いているんですが、この記事を書くにあたり、ジョー・ローガンのポッドキャストでメタ社長マーク・ザッカーバーグがゲスト出演した回を見ました。2時間以上にわたるポッドキャストは、きほん格闘技の話で盛り上がってましたが、ゲストがゲストなのでテクノロジーや政治の話もてんこもり。ホストのローガンさん、格闘技の人なのに頭よさそう(←超失礼)。どんな話題にでもついていける銀座のママみたい。
ザッカーバーグがテック企業文化について「去勢された感がある」という面白い表現をしていたので、自称エスノグラファーである私が現地参与観察に基づく感想を述べます。
テック企業老舗の誕生秘話に多いのが、「大学の工学部で知り合ったオタク友達が実家のガレージを拠点に起業した」ってやつ。テクノロジー業界は、もともと女子に「きゃー男らしい」とチヤホヤされない男たちによって創られてきたのです。イーロン・マスクを見てもわかるでしょう?こっちの記事にも書きましたが、サイバートラックに乗っているタイプは「友達少なくて自己主張強くてカッコいいと思われたくて仕方がない白人男性」らしいです。
2000年代に入る直前、カナダの某ハイテク企業が成長過程だった時代に、私はエンジニアの集団と一緒に仕事をしていました。2階建ての自社ビルを建てたばかり、という勢いのある時期でねえ、2階はエンジニアの巣(開発部)、1階は営業マーケティング総務と、生息地がはっきり分かれていました。私は2階にいたんですが、体育会系男子(営業部)と華やかなおねえさんたち(マーケティング部)が暮らす1階の文化圏は、それはもう眩しく見えたものです。
ザッカーバーグは「去勢された感」って言ってましたが、「された」も何も、タマ抜きしないと何をしでかすかわからない凶暴なオス(トランプみたいな)って、もともと開発部にはいないタイプなんですよ。1階の営業部にはいたけどね。
テック業界は創設者にマッチョマンが少ない社会だったので、その後#MeTooの時代に至る「女が強い文化」を後押しする素地がありました。20世紀末期のある年の瀬、「男性限定クリスマスパーティー」と称して2階のエンジニアたちがレストランを借り切り、ストリッパーを呼んでどんちゃん騒ぎをしたことがありました。これが人事部長(女性)の知るところとなり、男子らは厳重なお叱りを受けたようです。根が素直なオタク男子たちは、1階のおねえさんたちに顰蹙を買うようなことをしてはならないと学び、ザッカーバーグのいう「タマを抜かれた状態」になっていきます。
あれから20年以上の年月が過ぎました。#MeTooが鎮火し、かつてボコられ憤死したはずの肉食系セクハラオヤジたちが極右台頭の声を聞き次々に蘇る中、「撃たれたトランプかっこいい」だの「格闘技で男らしく強くなりたい」だの言ってるザッカーバーグは、非モテの高みを目指しておるのか?と思わせます。当然ですがオタク萌え女子にはそっぽ向かれますし、マッチョが好きな伝統的女子は、ボス猿トランプに媚びてトランスジェンダー用のタンポン取り上げちゃうようなエセマッチョは男として三流、としか思わないし。
「容赦なく相手を叩きのめす男らしさ」が報われる格闘技の世界で自己表現してます、というザッカーバーグ。NYTのコメント欄では「マーシャルアーツの精神を何もわかっておらん」とセンセイたちにお叱りを受けていました。どこまでもカッコ悪いキミへの応援歌を歌いたくなってしまったよ、テック企業のオタク男子たちと青春を共にしたおばさんとしては。