[#9] 結婚記念パーティの謎解き公演をほぼ1人で作り上げた話 【再利用謎の"穴"】
記事を書くときはだいたいカフェラテを飲んでいます。カナンです。
この記事は前回の記事の続きです。下記のマガジンにこれまでの記事が載っているので、ぜひ最初の記事から読んでみてください。
前回は謎解き公演が行われる会場に実際に足を運び、謎を仕込めそうなものをひたすら写真に撮って帰ってきました。
ここからシナリオ執筆…といきたいところだったのですが、ここからしばらく泥沼状態が続きます。
中謎で再利用する?
まず、ゲーム中シナリオのおおまかな流れを見てみましょう。
Phase 1【婚姻届を手に入れる】
Phase 2【2人の情報を集めて婚姻届を完成させる】
Phase 3【証人の署名を手に入れる】
Phase 4【戸籍謄本を手に入れる】
謎を解いてNAZO役所から婚姻届を手に入れるのがPhase 1、
謎を解いたり情報を集めたりして婚姻届を完成させるのがPhase 2、
証人を誰にするのかを明らかにして名前を書き込むのがPhase 3、
そこまででクリアかと思わせておいて、実は戸籍謄本を手に入れなければいけなかったPhase 4、
の4つのPhase(フェーズ)に分かれています。
ここで、Phase 1とPhase 4は、小謎さえできてしまえばほぼ完成したも同然のところまでやってきました。
問題はPhase 2とPhase 3です。
この2つのPhaseはいわゆる中謎〜大謎というポジションにあたります。
たいていの中謎では難しさを上げるため、「小謎で使ったアイテムや表などを再利用する」という手法が取られることがあります。
いわゆる、再利用謎と呼ばれるものですね。
しかし、再利用謎の制作には注意しなければいけないことがあります。
特に今回のような世界観やストーリーがしっかりしている公演ならなおさらです。
今回はちょっとコラム的な感じで、この再利用謎とその穴について書きたいと思います。
あらかじめ断っておきますが、あくまで自論です。
すでにある謎解き公演に対して「これはこうだからおかしい!」と訴えるようなものではないので、あらかじめご了承ください。
出題者という存在
謎には、必ずといっていいほど出題者という存在があります。
「◯◯からの挑戦状」といったスタンスの公演でしたらほぼ間違いなくその◯◯さんが出題者ですね。
またストーリー重視な謎解きでも、プレイヤーに対して謎を制作し、出題している存在がどこかにいるはずです。
そしてその出題者というのは、一つの公演中に複数存在する場合もあります。
例えば、Aという人が作った謎を解いたら次はBという人が作った謎を解かなければいけなかったり、(この場合の出題者はAとB)
友人Cが作った謎を解いたら古代遺跡に到着してそこに刻まれた謎を解かなければいけなかったり、(この場合の出題者は友人Cと古代人)
様々なパターンが考えられます。
で、ここからが本当に大切で見落としやすいところなんですが。
再利用謎を作る場合は、「なぜ出題者がその利用先の情報を知っているか」をしっかり吟味しなければいけません。
再利用謎の制作時に陥りやすい"穴"
公演制作者が再利用謎を頑張って作ろうとすると、
「とにかく再利用できそうな情報を探して中謎に組み込んでしまう」
ことがあります。
公演を制作する人には全ての情報が見えているため、その情報全てを再利用の情報として使うことはできます。
しかし、世界観の中でその謎の出題者を考えたとき、その出題者には見えている情報と見えていない情報があるはずです。
そこを疎かにすると、たまに「再利用謎としては成立しているけど、その謎が出題された背景を考えると矛盾が生じる」という事態に陥ってしまうことがあります。
先程のこの例で考えてみます。
友人Cが作った謎を解いたら古代遺跡に到着してそこに刻まれた謎を解かなければいけなかったり、(この場合の出題者は友人Cと古代人)
ここで、古代遺跡の謎を解くときに友人Cの謎の情報が必要だったとしたら、どうでしょうか。
友人からさっきもらった謎を解いたら古代遺跡に着いて、そこにははるか昔の古代人が刻んだ謎があって、でもその謎を解くには友人の謎を再利用しなければいけなくて……「古代人はどうやってこの謎を考えて古代遺跡に刻んだんだろう?」という問いに対する答えが必要になります。
このような矛盾を、僕は再利用謎の制作時に陥りやすい"穴"と呼んでいます。
出題者から何が見えていて何が見えていないのか。
その範囲を公演制作者が把握しておき、適切な範囲で再利用謎を作ることができれば、参加者にとってもモヤッとすることがない再利用謎を作ることができるのではないかな、と思います。
■ おまけ
ちなみに「友人Cは古代からタイムスリップしてきた古代人そのものだった」という裏設定で強引に解決することはできます。
その場合、古代遺跡の謎を解き終わったあたりのモヤッとしているタイミングで回収してあげたいですね。
またはそのモヤッと感から二段オチに気づかなければいけなかったり、など。
まとめ
今回はちょっと脱線をし、再利用謎の製作時に陥りやすい"穴"について書きました。
公演を制作する人には全ての情報が見えているため、その情報全てを再利用の情報として使うことはできます。
しかし、世界観の中では、出題者に見えている情報と見えていない情報があります。
自分が公演の制作者であることを一旦忘れ、出題者の立場で謎を出すときにどんな謎を作れるかを考えながら謎を作りたいものです。
次回は、この視点を持ちながらどんな中謎を作るかを考えたいと思います。
Photo by 角田大樹
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?