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不定期更新小説「パンイチ宰相」
降ってきた気まぐれ短編ラノベ( ゚∀゚)
多分、疲れてた。
あほなことしか書いてないよ〜
*****
【第一話】
*****
「この度は御国に多大なるご迷惑をお掛けしたこと、誠に申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げると共に、貴女様を生涯に渡り、我が国で手厚く持て成させて頂きます事、ここに誓約させて頂きます。さて、こちらに揃えましたる我が国の精鋭は、貴女様から向かって右より、国王、国王補佐官、翼竜師団長、魔法士団長、外交大臣……いずれも由緒正しき貴族であり、若くして独身。我が国で今一番人気の男共であります。エメル様にはこの中から好きな男を選んで頂き、我が国で末長く幸せに暮らして頂きたく……」
素晴らしく長い文言を、全く噛む事もなく、手前の若い男が語る。
整髪剤で後ろに固めた金髪は、随分硬そうだな、と眺めやる。若そうなのに、おじさんみたい。そんなふうにエメルは素朴に思い、冷たい金縁眼鏡の奥を見た。
男はそんなエメルの視線を感じてか、お前の仕事はこっちだと言わんばかりに筆で指す。その中には王様ぽい豪華な衣装の人も居て、筆の後ろで指すなんて失礼じゃないのかな? と。
「おい、エーデルベルト、お前からだ」
王冠も被っているし、絶対その人が王様なのに、男は随分居丈高。聞いているエメルの方が「ひえっ」となって、もさもさの毛皮が付いたマントを羽織った男性の、自己紹介を聞いていく。
エーデルベルトさんはげんなりした顔を浮かべつつ、男の指示には逆らえないらしい。気を取り直した後は、爽やかな笑みを浮かべて言った。
「初めましてエメル嬢。私はこの国の国王をしているエーデルベルト。もし貴女が私を選んでくれるなら、生涯貴女だけを愛し、何一つ不自由はさせないよ。大体執務室で仕事をしているから、いつでも訪ねてきて構わない」
その文言の後の笑顔はキラキラだった。わぁ、すごい。竜人の国の王様は、こんなにキラキラしてるんだな、と。エメルは間抜けにも口を半分開いたままで、黒髪の美丈夫を眺めてしまう。
「次はノーラ」
「はいっ……!」
ぎろりと音がしそうな視線で、男はノーラさんを睨んだようだ。睨んだと思えるくらいキツい目だけど、もしかしたらこれが彼の平時の時の顔かもしれない。
ノーラさんは柔らかい茶色の髪で、緊張の面持ちのままエメルに向いて一礼をした。
「私はエーデルベルト様の補佐官をしております、ノーラです。エーデルベルト様ほどの甲斐性はございませんが、生涯貴女だけを愛することはもちろんの事、この場の誰よりも寄り添って差し上げられる自信があります。旧家ですのでそれなりに威厳もありますし、不自由はさせません。よければ私を選んで下さい」
そんな風に話を締めた。
確かに、ずらっと並んだ男性達を見てみると、ノーラさんが最も優しげな面立ちをしている。雰囲気も柔らかく、寄り添ってくれるというのは、もの凄く贅沢な気がしたエメルだった。はぇ〜、と口を開けたまま、次の人の紹介を聞いていく。
「サリエル」
「りょーかい。俺は翼竜師団長……この国の軍人のトップの一人だ。有事の際は仕事にかかりきりになるだろうから、その時だけは寂しい思いをさせるかもしれねぇ。ま、そこさえ目を瞑ってくれたなら、悪い相手じゃないと思うぜ? こう見えて一途なんだ。それに、こいつらの中では一番マナーには緩い。お上品が苦手なら俺を選べ」
おぉぉぉぉ、とエメルは拍手を送りたくなる。そう。そうなのだ。別に自分はお嬢様という訳じゃない。良いところに嫁いで良い生活をするのは魅力的だが、マナー云々が付いて回るなら、普通の家に嫁ぎたい。
翼竜師団長というからに、やはりこう、体を動かすのが仕事の人らしく、野生味があるというか強そうというか。まぁ、全員強そうだし、実際人間より強いのだろうが、きびきびしていそうだなという印象が強かった。後は……そうだな。ラメったアイスブルーの髪が綺麗だな、と。
余韻に浸る間もくれないように、男は次の人を筆指した。
「ソーマ」
「……魔法士団長。話すのは、得意じゃないが……物静かな男で良ければ……大事にする、貴女の事は」
それでそれで? と思っていたエメルの前で、魔法士団長さんは“終わり”みたいな感を出した。え、終わり? と思ってコケるような気持ちになったけど、なるほど、確かに物静かな人らしい。視線も合わないのが気になるけれど、恥ずかしがり屋さんだと処理すればいいのだろう。
いるいる、こういう人。自分もそんなにおしゃべりなタイプではないもんなぁ、と、案外エメルの中では印象は悪くなかった。物静かな人なのに頭の上がオレンジ色なのも、見た目じゃないんだなぁ、としみじみ思えて良い感じ。
「最後はアルバーダイン」
「うぃ〜。他の国との交渉はぜ〜んぶ俺! 旅行大好き! だから、あんまこの国には居ないかも〜。もし旅行が好きなら俺を選んだら楽しいかもね。女物の服着るのが好きなんだけど、あんたが望むならちゃんと男物を着るよ。おしゃれも化粧も任せろ。興味あるなら毎日俺があんたのこと、世界一の美女に仕立ててやるよ」
よろしく〜、と手をひらひらさせるこの人が一番、この中ではチャラそうだ。でも話しかけやすさも一番かもしれない。何より女物の衣装が凄く似合う。化粧もしてくれるとなると、その手のスキルが未熟なエメルは、飛びつきたいような気持ちになった。綺麗な妹を見て、常々羨ましく思っていたから、良いなぁという憧れは人並みにある。
黒髪の王様と、茶髪の補佐の人、ラメ入りアイスブルーの団長さんと、オレンジの団長さん、最後は桃色の髪の交渉大臣だ。
うーん。竜人は皆、美しいと聞いていたけれど、並ばせたらこれほどまでに圧巻なんだもんなぁ、と。エメルは方向性の違う美形を五人、一度に眺めて感心をする。
「取り敢えず、我が国が貴女様にご用意出来る、若くて、強くて、由緒正しい家柄の金持ち……まぁ、どれを選んでもハズレではないだろうという、精鋭の男共でございます。気に入った者はおりますか? 即日お持ち帰りできますが」
彼らを一度に紹介してくれた、男に、はた、と向き直り。
エメルはどうしても。どーしても気になっていた、その男について質問してみることにした。
でも、すぐに本題では品が無いか……と思い直して、一応、呼んでくれたお礼だけ口にすることにする。
「この度は我が国の不手際で、竜人国の皆様に多大なるご迷惑をお掛けしたこと、国王に代わってお詫び申し上げるとともに、私めに斯様な措置まで取ってくださったことを、心より感謝申し上げます」
エメルは辺境の野良娘でしかなかったために、どうしようもない付け焼き刃だし、それっぽくしかできないけれど、これ以上の言葉を今は思いつかないし、今じゃなくても口にできないから仕方ない。
教養……は、お母さんのお腹の中に置いてきた。そういうことにして、追加でそれっぽいお辞儀だけする。それから、本題の疑問について、口にすることをお許しください、と。内心でその人へ、小さく呟いた。
「ところで、皆様をご紹介くださった、貴方様のことですが……」
言いかけたところで、男はすぐに反応を示した。
「あぁ。これは失礼しました。私のことはリーゼルと。この国の宰相役を担っております」
「あ、そ、そうなのですね」
「えぇ。彼らとの橋渡し役だと思ってくだされば。なんでも言うことを聞かせられますので、貴女様は何も心配されずとも大丈夫です」
「あ、は、はいです」
でも、と。
続いた「でも」に疑問を感じたようで、リーゼルさんは金の髪が生えた美しい顔を小さく傾げ、エメルの言葉を待ったよう。
「あの……小さな質問で申し訳ないのですが……」
「えぇ」
「なぜ、貴方様はそのお姿で……?」
穢れなき乙女の純真そのものの視線を受けて、リーゼル以外の五人の男が、シン……と静まり返ったような。
リーゼルも僅かに動きを止めて、新緑の若葉のような短めの髪を編み込んでいる、それなりに可愛いらしい顔の、エメルの視線を受けていた。
「あの……お寒くはないのですか?」
体も丈夫だと聞いてはいたけど、北方に位置するこの国では、さすがにパンツ一枚じゃ、肌寒いように思えたからだ。
シン……とした謁見の間に控える他の竜人達も、エメルの質問を聞き、リーゼルがどんな答えを返すのか、と。張り詰めたような、凍ったような空気の中で、静かに彼の返答へ意識を傾けた。
「あぁ。私はいつもこの姿で居させて貰っています。何も問題はありませんので、ご心配頂くようなことではございませんよ」
「そうなのですね」
そうなんだ。
へぇ、と素直に彼の言葉を受け取って飲み込んだ、エメルに全員の無言が突き刺さる。
「逆に健康に良い、とかですか?」
「そのようなものですね」
へぇ。やっぱりそうなんだ。
素直すぎるのも問題だった。
違う違う、こいつこそ真性の変態なんだ。誰もが思った顔をして、純真無垢なエメルを見遣る。
でも、誰もリーゼルには逆らえないから、ただ微妙な顔をして、彼の堂々とした態度と言葉を、無言で飲み込むだけである。
そして。
「私にはどの方も魅力的で、すぐには決めることができませんので、差し支えなければこの国の宿などに、滞在させて頂けると大変助かるのですけれど……」
人にしては思慮深い様子を見せたエメルに対し、おや、と竜人全員が思った瞬間だ。まぁ、確かに粒ぞろいの男達ではあるけれど、エメルの言いたいことも分からなくない。
一発で決めてくれたら楽だったのにという、正直な顔を浮かべていたけれど、リーゼルもそこは素直に飲み込んでくれるらしい。なるほど、と頷いて自らの邸宅に、一時的に預かりましょう、と提案をしてくれた。
「確かに、触れ合う機会も大切ですね。では、こちらで日中の逢瀬の予定を立てておきますので、順番にお付き合いの真似事をして、一番良かった男にお決めください。おい、お前ら、拒否権無しだぞ?」
最後だけ一段低い声音で静かに零し、聞いた男達は「ひっ……」と頷く様子を見せた。
竜人の国ではパンイチの宰相さんが一番強い、と。何か間違ったような認識を常識に塗り替えていく、エメルはこの国でボチボチやっていくしかなさそうだ。
「どうぞよろしくお願いします」
と、深々と頭を下げた、少女は案外、可愛らしい生き物として、人類最強の種族の彼らの元に、小さく認識されたようである。
【続く】
![](https://assets.st-note.com/img/1678018211422-2JTF79UeyJ.jpg?width=1200)
みたいな、顔をしたエメルちゃんの、イメージ画像をさら〜っと。
私ではここまでが限界(笑
お目目が大きい萌え絵も案外難しい。
清書しました〜って描き手さんがいたら送ってぷりーず。
コメントもらえたらリンク貼ります(*´∇`*)
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