300年後に、残したいものはなんですか?~榧の森との出会い~
皆さんは、榧(かや)という木をご存知でしょうか。榧は囲碁や将棋の盤、まな板などに使用される最高級の木材です。しかしながら榧の木は、成木までに約300年の年月を要します。(杉の木は約45年とのこと…!)
そんな榧の森を香美市で育て、守ってきた方がいます。その情熱や想いに触れ、榧の実を使用した『榧の森ヘイジーエール』が誕生しました。
今回は榧(かや)にフォーカスし、榧の森が誕生したきっかけや、榧の森に関わる方々の想いや情熱を知っていただきたいと思います。
そして、ビールをきっかけに榧をたくさんの人が知ること、ビール以外でも榧の実の活用が広がることを願っています。そうすることで、300年後の未来に榧の森をつなげることができると願っています。
榧という木に惚れ込んだ、ある一人の男性がいた。
囲碁や将棋が大好きだったその方は、榧でできた盤をみて「こんなに綺麗な木はない!」と思った。子供の名前にも「かや」とつけるぐらい、惚れ込んでいる。ある時、ふと思ったという。
「榧の木を使うために1本切ったら、次の1本は300年後か…」「それなら、使った分植えておかないと、なくなってしまう!」と。
現に30年前に榧を植え始めるまでは、日本に自生する榧は減り続けてきた。そこで、特に高知県香美市の田畑や山に榧の森を作ったのが、株式会社高知前川種苗の前川会長だ。
約30年間・30万本におよぶ前川会長の植樹活動により、日本の榧は絶滅状態を脱しつつある。
300年の時をかける、榧。
榧という木は、育てるのに時間も労力もかかる。そう会長が教えてくださった。榧はまず苗を植えるまでに3~5年かかる。植えてからも、ねずみやイノシシなどが木や苗を食べてしまったりする。さらに、榧には成長点というものがあり、それが覆われてしまうと細くなり、枯れたりもするという。杉などは約45年で家を建てられるレベルなので、そう考えると果てしなく感じる年月。なので、誰もそんな大変な木を育てたくならない、と話す。
日本一広い、榧の森ができるまで。
前川会長は、過疎化した中山間地域で管理できなくなった土地を買ってくれないか?と話をもちかけられるたびに、「断る理由がない」と言って購入した。榧を植えることで耕作放棄地にならず、年に3回手入れをすることができると考えた。会社や自分のためだけでなく、地域への貢献にもなっているのだ。
榧のはじまりの地には、5~6年の歳月をかけ、500~1000本の榧を奥様の前川専務と一緒に植えた。手入れをする人が増えるたびその面積は増え、現在は、3人で手入れを行うと約3ヶ月かかるほどの土地になったという。
2019年、榧の実とTOSACOが出会う。
株式会社高知前川種苗で当時榧の守り人をしていた岡田さんから、TOSACOのお取引先である鬼田酒店さんに、こんなご相談があった。
「榧の実を使ったビールはできないか?」
岡田さんは当時を振り返り、榧が好きというところからこの事業は始まっているが、どうにかして榧の実を活かすことができないか?という思いだったという。中国では榧の実を漬け込んだお酒が飲まれているというが、ビールは聞いたことがなかった。別のところにも話を持って行ったが、誰もそんなことやってくれないんじゃない?と言われたこともあったという。
榧と向き合い、試行錯誤した1年。
榧の実という、初めて触れる素材を理解することからスタート。当初は榧の実の持つ油や、香りのコントロールに苦戦…。何度試作をやっても、思い通りの味にならない日が続いていた。
そんな時、ぱっと頭に浮かんだのは「霧がかった榧の森」。
そうだ、濁りのあるビールにしよう!
製造スタッフさんのアイデアも加わり、1年の歳月を経てついに完成!ジャパングレートビアアワーズ2021では、「ハーブおよびスパイスビール部門」で金賞を受賞しました。
榧の実を知る人、活用が広がってほしい。
TOSACOを手段として、榧を知る人が増えた。TOSACOさんがビールにしてくれたことで、自分達では広がらないようなところ・世代の方にも榧の魅力を伝えることができた。TOSACOさんと出会えたことが、財産です。株式会社高知前川種苗の岡田さんは、最後に私にそう言ってくれた。
こちらこそ、こんな素敵な榧と出会わせてくださり、本当にありがとうございました、と何度も伝えたいです。
TOSACOは、ただビールを飲んでもらうことを目標にするのではなく、TOSACOを通して、その素材や生産者さんにフォーカスしてもらえる。そんな、人と人をつなぐビールでありたいと思っています。
300年後の未来に残したい、という熱い情熱によって香美市に生まれた、榧の森。その森が300年後にもつながっていきますように。
💡榧についてもっと知りたい!
*株式会社高知前川種苗 様
💡TOSACOについてもっと知りたい!
・Instagram
・Facebook
・TOSACOオンラインショップ
・ホームページ
※文中に登場する瓶のラベルは、現在販売中のものではなく、新しく作成したものです。今後は旧ラベルが終了次第、新ラベルでの販売を予定しております。