天王洲からグローバルで活躍するスタートアップ“ゴジラ”を!サムライインキュベートと作る「スタートアップの島」第2章
サムライにとって青春の地、天王洲
天王洲をアジアを代表するスタートアップの聖地にしたいー。
2011年から7年間、サムライは天王洲の寺田倉庫にコワーキングスペースを作って活動していました。「Samurai Startup Island(以下、SSI)」と名付けたコワーキングスペースには、7年間で累計130社以上の入居者が集まり、多くの起業家がここから巣立って行きました。
「Creation Camp TENNOZ」の向かい側の倉庫に、SSIがあったんです。起業家と投資家が集まり、スタートアップの育成プログラムや、企業とのコラボレーションイベントも頻繁にやっていて、SSIだけでなく天王洲全体が熱気を帯びていましたね。
サムライにとって、天王洲はまさに青春の地です。
サムライの設立は2008年。最初は私の自宅を、2009年には小竹向原に一軒家を借りて、支援先の起業家たちとシェアオフィスにしていました。海外ではシリコンバレー、サンフランシスコに起業家向けコワーキングスペースはたくさんあったので、日本でもそんなコワーキングスペースを作ろうと次の場所を探していたんです。
当初、廃校になった小学校を起業家向けコワーキングスペースとして活用しようと考えたのですが、その時は実現できませんでした。今だったら各地からオファーがありそうなアイデアですが、当時はまだスタートアップ支援、コワーキングスペースに対しての理解、共感の基盤が十分ではありませんでした。
最近でこそスタートアップ支援は活況で、ベンチャーキャピタル(VC)は増え、日本各地にシェアオフィス、コワーキングスペースもできました。でも当時はVCは少なかったし、コワーキングスペースもまだ一般的ではなかった時代です。
「スタートアップの島」をつくりたい
天王洲を選んだのは、寺田航平さんに相談したのがきっかけです。起業家向けコワーキングスペースの場所を探している時、共通の知り合いを通じて寺田さんを紹介してもらいました。現在は寺田倉庫の代表取締役社長である寺田さんは、当時はビットアイルというベンチャーを設立し急成長させていました。コワーキングスペースのことを相談したら「寺田倉庫ならできるかも」と理解してくれました。
当時、僕たちも起業家向けコワーキングスペースを六本木や渋谷でやる意識はなくて、自分たちの島を作りたいという思いがありました。だから、天王洲アイルを自分たちの島として活動できたら、この島全体をシリコンバレーみたいにできるんじゃないか、ものすごく面白いことができるんじゃないかと、ワクワクしたんです。
とはいえ、僕たち自体がスタートアップで、まだお金に苦労していた時代。SSIのコワーキングオフィスはお金をかけず、なるべく自分たちで作りました。交流を促すため壁はなるべく作らず、椅子や家具はネットで安いものを探しました。二段ベッドやソファで休憩できたし、橋を渡って北品川の天神湯に行ったりもして(笑)。
その頃入居していたのは、住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」、求人プラットフォーム「gigbase」、現在は業界大手のゲームメディアとなった「GameWith」の小泉さん、そして、シリコンバレーで大きな影響力を持つアクセラレーターY Combinatorに採択された「Alpaca」もいましたね。
海外では大企業がスタートアップとタッグを組みイノベーションを起こしていたので、天王洲でも多くのイベントを実施し、国内外の多くの企業とスタートアップのコラボレーションを企画しました。
国内ではまだ珍しかったスタートアップ支援ということもあり、フランス、イタリア、台湾など海外のスタートアップ関係者は日本に来るとまず天王洲に見学に来ていました。
なぜ今、再び天王洲なのか
SSIが天王洲を離れることになったのは、一つには交通アクセスの課題がありました。品川に近いとはいえ、渋谷、六本木などに比べれば天王洲は少し不便です。交通費もかかりますし。
ですが、こうして天王洲に来て歩いてみると、僕個人としては、ここを離れたことを後悔する気持ちが少しあります。だから今回、寺田倉庫がインキュベーション施設「Creation Camp TENNOZ」を作ったことは、僕たちがやってきたSSIの流れを引き継いでくれたみたいで、うれしいです。
サムライインキュベートは、VCが約70社集まる麻布台ヒルズへオフィス移転しました。大企業やVCが集積する麻布台のメリットは、投資先の繋ぎこみが圧倒的にしやすいこと。起業家にとってネットワーキングは最重要課題。投資先に必要な人を繋ぐ力は、投資家にとって大事な技量です。
とはいえ、麻布台のような競争が厳しい環境で働くことも、刺激がある一方でプレッシャーにもなります。ここ天王洲は、運河に囲まれた自然豊かな景観、ミュージアムやパブリックアートなど文化的な要素も多く、ロサンゼルス、サンフランシスコのカルチャーと共通点があります。
サムライは「Creation Camp TENNOZ」に参画するので、天王洲の"Camp"に席があり、いつでも出入りできる居場所になります。麻布台とは違う天王洲カルチャーに身を置くことで、僕たちもリラックスしていい発想ができそうです。
横断歩道の立ち話が、未来を動かす
サムライと寺田倉庫の関係でいうと、エアークローゼットの支援という共通点があります。
サムライが先にエアークローゼットを支援していて、倉庫や物流を支援できる事業会社ということで寺田倉庫を紹介しました。たしか、サムライのメンバーと寺田倉庫の月森さんが横断歩道で一緒になり、「物流に困っているスタートアップがいるので紹介したい」となったのがきっかけ。
その後、寺田倉庫はエアークローゼットに出資するだけでなく、倉庫や物流のノウハウ、アセットを提供し伴走を続けています。その担当者の月森さんが、今回「Creation Camp TENNOZ」を立ち上げたという経緯も不思議な縁を感じます。
天王洲からグローバルで活躍するスタートアップを
天王洲は都心とはいえないけれど、地方や海外へのアクセスがいい。グローバルで活躍するスタートアップを輩出しようと考えた時、ファイナンスやアクセラ参加などで海外と日本を往復する機会は多い。だから、羽田空港に近い天王洲はすごくいい立地。
それに、世界のトップティアのVCは、ディープテックなどのものづくりに関わるスタートアップにもフォーカスしています。ものづくりの事業開発で必要になる製造、実験の物理的空間、保管や輸送は天王洲が得意とするところ。海外へのアクセスが良いことと合わせ、両輪の強みになるはず。
さらに言えば、天王洲を麻布台のような都心部と接続することで、スタートアップの成長ステップをつなぐことができる。麻布台にも天王洲にもデスクがあるサムライは、そういうブリッジになりたいですね。
学校教育を変えて、起業できる人を育てたい
今、僕は自分の娘が通っている学校経営にも、保護者代表として関わりながら、教育についても学んでいます。世界の複雑さを理解して、一人で生きていける力を身につける国際バカロレア教育をベースに、教育コンテンツを開発して世界に広げていくことにも関わっていきたいです。
日本はやりたいことを、自らアクションできる人が少ないですよね。企業や起業家を変えていくずっと手前に、子どもの教育から変えていきたいんです。ただ、日本は戦後、ビジネスを生み出し、拡張することだけに集中することで、こんなに豊かな国を創ってきたとことを誇りに思っています。その良い面、悪い面を含めた新たな日本らしい新しいことに挑戦できる教育プログラムを開発し、いつか世界に普及できればとも思っています。
サムライインキュベートは「できるできないでなく、やるかやらないかで世界を変える」がミッションです。
自分で考え、自分でアクションする人をもっと社会の土台から増やして、世界をより良い方向に変えうる起業家を天王洲から世界へと送り出したいですね。
Creation Camp TENNOZは、スタートアップを募集しています。1期生の募集期間は2024年5月31日まで。詳細は公式サイトをご確認ください。