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"面白くてバカなものを作って世界でバズりたい” 仕事とは真逆のクリエイティブを目指す前田デザイン室
マガジン「オーナーの頭の中」では、CAMPFIREコミュニティに掲載されている、コミュニティのオーナー様の活動内容についてインタビューしていきます。
第一弾は、2018年3月の設立以来次々とプロダクトを作り続けているクリエイティブ集団「前田デザイン室」のオーナー前田 高志さんにお話を伺います。
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前田 高志(まえだ たかし)
1977年生まれ。株式会社NASU代表取締役。 任天堂(株)宣伝部門のデザインチームリーダーを経て2016年独立。幻冬舎・箕輪厚介さんの「箕輪編集室」での活動を経て、2018年よりオンラインコミュニティ「前田デザイン室」をスタート。前田デザイン室メンバーたちと『マエボン』『NASU本 前田高志のデザイン』を刊行。コルク・佐渡島庸平氏との出会いを機に漫画家を目指す。2019年10月よりコミュニティ事業を開始。第一弾として、青山ブックセンター本店のコミュニティの運営をサポート。
箕輪編集室を見て、オンラインサロンはクリエイティブチームになると確信
ーまずはじめに、前田デザイン室をはじめたきっかけから教えてください。
前田:箕輪編集室の影響が強いです。
ただ「コミュニティをやりたい」と思っていたのは、実はもっと前からなんです。箕輪編集室に入る以前に、ブログの書き方を教えてもらうオンラインサロンに入っていました。そこはスクール型のコミュニティで……というか、その当時僕が知っていたのは、スクール型だけでした。スクール型のデザインサロンも悪くないけど、これが一番いい形なのかどうかは確信がありませんでした。
その後、箕輪編集室に入りました。電子書籍を作るプロジェクトに参加しましたが、それが終わったとき、一度箕輪編集室をやめました。その後、箕輪厚介さんの会社「波の上商店」に当時いた方から声をかけていただき、箕輪さんの会社のホームページを作ることになりました。ここから振り返っていたら、長くなっちゃいますね……。
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ー大丈夫ですよ、続けてください。
前田:ホームページを作る打ち合わせのために、箕輪さんとはじめてWEB会議で話をしました。箕輪さんは「どんなものにしたいか?」の旗の立て方が面白くて、しかも任せてくれる。デザイナーとしては思いっきりバット振れるわけです。編集者としての箕輪さんのすごさを肌身で感じました。同時期に箕輪さんを京都に招いて修学旅行しようという企画があって、そこで初対面を果たしました。その時、箕輪さんのほうから歩み寄って来て「いつもありがとうございます」と言ってくれたんです。すっかり心を掴まれましたね(笑)。
それで、もう一度箕輪編集室に戻ってデザインをやってみようと決めました。その頃の箕輪編集室って映画「箕輪大陸」の撮影が始まっていたり、ライターチームが公式noteを毎日更新して……という風に、メンバーが自走して動き始めた時期だったんです。その流れを見ていて「オンラインサロンってクリエイティブチームになるんだな」ってことに気づきました。
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任天堂で勤めていた頃、仕事中にポンポン面白いアイデアが浮かんでいました。それを「休みの日に作るぞ!」と決心するけど、でも結局寝てしまったりゲームをしてしまったり(笑)。そして夜になり「ああ、俺は何やってるんだろう」って自己嫌悪に陥ることが多かったんですよ。
でも箕輪編集室での活動だと、タダで……というかむしろ会費を払いながらなのに、なぜか不思議なくらい楽しくデザインできました。だから「箕輪編集室のようなプロジェクト型のオンラインサロンで、デザインに特化したものをやってみたい」と思うようになりました。
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2018年2月、この時箕輪さんに前田デザイン室の話をして快諾してもらう。
前田:箕輪さんと僕とでは、認知度も影響力もまるで違うので、僕がコミュニティを作ってもなんの支障もないだろうけど、箕輪さんに許可を得て筋を通しました。箕輪さんに会える機会があったので、その席で「オンラインサロンをやってもいいですか?」と聞きました。すると箕輪さんは「前田さんは絶対やるべきだよ」と即答してくれました。
「クリエイター」枠と「アンバサダー」枠
ー箕輪さんからOKはいただいたものの、戸惑いはありませんでしたか?
前田:それはなかったです。そもそも前田デザイン室にそんなに人が集まると思っていませんでしたから。だから最初の募集は10人だったんですよ。でも数日後には、すぐに10人増やしました(笑)。
ー増やせるところまでいこうということですかね?
前田:はい。箕輪編集室での僕の動きを見てくれて「クリエイターではないけど前田デザイン室に入りたい」と言ってくれた人も多かったんです。
ー「アンバサダー」枠ですよね。応援する人でしたっけ?
前田:はい。「クリエイター」「アンバサダー」2つの枠は、最初から用意していました。ただ、アンバサダー枠をいつ募集するか?のタイミングを見計らっていて、予想よりも早めました。
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2018年3月、前田デザイン室募集開始当初の告知バナー
前田:「アンバサダー」は、おっしゃる通り「応援する人」の枠ですが、実は入ってしまえば差はほとんどなくて、ものづくりもできます。とはいえ、サロンが始まる一番最初の段階では一定の割合で手を動かして活動してくれる人が欲しかったのでクリエイター枠からの募集にしました。
アンバサダーは非デザイナーというより、スタンスとも言えます。本業でデザインをやっていても忙しくてサロンで活動できない人もいるじゃないですか。「見てるだけでもいいからサロンには入りたい」って人はアンバサダー枠がおすすめです。
クリエイターの名刺がわりに作った雑誌『マエボン』
ー『マエボン』の話を聞かせてください。この本は、前田デザイン室での出版で、弊社が2018年に開催したCAMPFIRE COMMUNITY FESTIVAL(以下:コミュフェス)のために作っていただいたとか。マエボンが生まれた経緯や、制作の中で感じたやりとりを教えてください。
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前田:きっかけは、CAMPFIREのチェアマンでもある箕輪さんのツイートです。「CAMPFIREコミュニティの文化祭を9月にやる」と呟いていたのを見ました。そこから勝手に「きっと前田デザイン室も出られるはず」と思っていました。その段階では出られるかどうかもわからなかったんですけどね(笑)。でも準備はしたくて。
箕輪さんや宇野さんなどインフルエンサーがいる中で、前田デザイン室には何があるのかなと考えました。僕が有名人ではないので、前田デザイン室のメンバーのことがわかる、メンバーの力を知らしめるものを作りたいなと。
前田デザイン室にはいろんな職種の人がいます。雑誌って多様なコンテンツの集まりだから、多様なメンバーの力が発揮しやすいと考え、そこで「雑誌を作りたい」と前田デザイン室のFacebookグループに投稿しました。
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当時のFacebookグループへの投稿
前田:その時の前田デザイン室って、毎月1つプロダクトを作っていたんですよ。今思えばかなり無茶ですよね(笑)。クオリティを求めず、アイデア重視でたくさんものを出したかったんです。でもメンバー的には、一度作り始めるとこだわりが生まれてクオリティ的にもいいものを目指す。それは素晴らしいけど、そのクオリティで毎月1つプロダクトを出すとなると、しんどく感じるようになったようです。だから「雑誌を作りたい」と投稿した時も「それは無茶だ」と反対する声もありました。それも一理あるので「毎月1つプロダクトを出すという方針はやめます。ただ雑誌は作りたい。」と返信しました(笑)。
雑誌を作ればみんなの力を発揮できて、コミュニティの文化祭で「前田デザイン室ってこんな集団です」って説明できますからね。結局マエボンは、1ヶ月で企画して1ヶ月で版下データを制作しました。
ー最速で作っていた印象があります。コミュフェス発表から開催までの時間が短かったわけですが、その間に作っていただいたんですよね。
前田:それもありましたね「もしもこの短い期間で作れたら、それってすごくない?」って。実際作ったあとの反響も大きかったんですよ。「『マエボン』を作りたい」と言って入会を希望される方が殺到しました。
フィードバックを受けることができる合宿
ーSNSを拝見していて、とても楽しそうだなと感じたのが前田デザイン室の合宿です。名前は「GIF合宿」でしたっけ?
前田:前田デザイン室の合宿は今まで3回開催していて、うち2回が岐阜です。GIFアニメを学べるのかと思いきや、岐阜県で開催しているから、GIF(ギフ)合宿という名前なんですよ(笑)。
岐阜に研修所と宿泊施設が合体している場所があるとメンバーの人が教えてくれて、しかも数千円で泊まれるんですよ。「じゃあ集まって合宿したいね」って話からはじまりました。
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第一回目のGIF合宿
ープログラムはどんな感じですか?
前田:1回目は、僕のデザインセミナーとワークショップをやって夜は懇親会です。次の日は僕が午前中フィードバックをして昼からBBQをやりました。ただ今年はメンバー数名がプログラミングや、写真の加工についてなど教え合うワークショップをやってもらいました。
ー前田さんからのフィードバックタイムがあるなんて羨ましいです。大人になるとなかなか上司以外からフィードバックもらうことはありませんからね。
前田:確かに。僕もその時にフィードバックすることでこんなに喜んでもらえるんだって発見がありました。
サプライズに感激、前田デザイン室の宝箱
ー前田デザイン室は定期的に定例会を開いていますが、印象的なゲストの回とかありますか?
前田:全てが印象的だけど、強いて挙げるならプロダクトデザイナー大村卓さんをお招きした2019年8月の定例会です。前田デザイン室の定例会は原則メンバーのみの参加ですが、この時は定例会のチケットを一部一般販売しました。メンバー以外の方とも交流できて楽しかった、という意味で印象に残っています。
それから何と言ってもゲストの大村さんです。定例会のゲストは、僕自身をアップデートするために話を聞きたいと思う人に声をかけさせてもらっています。大村さんの場合、ツイッターでやっている「#企業のノベルティを勝手に作る」企画で知ったので面識はありませんでしたが、アプローチしたところゲストに来てくれました。彼も仕事とは別のアイデアをどんどん形にし続けている人で、僕と似ているところがあるんです。しかもサプライズで前田デザイン室のロゴで「勝手に作る」シリーズをやってくれて、宝石箱を作ってきてくれたんです。「前田デザイン室という箱は宝箱のようにいいものがたくさん詰まっている。開けてワクワクする箱のような存在だ」というストーリーまで考えてくれていて。前田デザイン室のコミュニティとしてのストーリーともぴったりだったから、大村さんのサービス精神に感動しました。
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大村さんが作ってくれた、前田デザイン室のロゴをモチーフにした宝石箱と鍵
コミュニティとしてもプロジェクトをやるときも「旗」を立てる
ーコミュニティ運営で大切にしていること、気をつけていることはありますか?
前田:「前田デザイン自体がなんのために存在しているのか?」というビジョンですね。「仕事ではできないクリエイティブをする場所」と位置付けています。ものを作ってもお金は一切発生しません。お金を発生させると仕事と同じになってしまうから、信用だけの関係性が崩れてしまいます。
お金を貰えばやっぱり依頼主からいろいろ注文も来ますよね。もちろん修正はしますけど、細かな注文への対応って、ちゃんとお金をもらって仕事でやればいいと思うんです。「もっとクリエイティブって面白かったんじゃない?」という想いでやっているので、そこは大事にしています。仕事のクリエイティブと遊びのクリエイティブって使う筋肉が相当違っていて、両方使っていくのがいいんですよ。「前田デザイン室でデザインをやったおかげて、仕事が楽しくなった」とあるメンバーが言ってくれたことがあったんだけど、涙が出るほど嬉しかったです。
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初代運営チームリーダーの浜田さんと
あとは、例えば「モザイクパンツを作ります」っていきなり言ってもメンバーからすればわけがわからないですよね。だから「今なぜこれを作りたいのか?」という文脈を丁寧に語るようにしています。「これを作ることによって前田デザイン室がどうなるのか?」の部分を参加した人がどうなるかイメージしやすいようにFacebookの投稿やnoteを必ず書きます。設立して最初の頃は、初代運営チームリーダーの浜田さんが「そろそろnoteを書いてくださいね。」ってよく声をかけてくれていました。
長いプロジェクトだと月をまたぐので、途中から入ってくる人もいますよね。後から入ってきた人でも置いてきぼりにならないように。完全にできているとは言い切れませんが、努力はしています。
あとは言葉だけじゃなくて、ビジュアルの旗を立てることもあります。ビジュアルのあるとなしでは、メンバーの食いつき度合いがまるで違うんですよ。「ここに行くんだな」ってわかりやすいんでしょうね。モザイクパンツとかまさにそう。パンツメーカーの人とやりとりして、サンプルを作ってもらったんです。そこまでやればみんな「前田さん、本気でモザイクパンツ作るんだ」ってわかるでしょうから。そこからチームを作るようにしています。
じゃーん 作っちゃった。#モザイクパンツ#マエボン#前田デザイン室 pic.twitter.com/KAb1rD9Hf1
— まえだたかし (@DESIGN_NASU) August 3, 2019
いつでも戻って来れる場所に
ー前田デザイン室は、永久欠番制度をとっておられるんですよね?
前田:そうです。前田デザイン室にはメンバーの会員番号があるんです。番号入りのバッジをプレゼントしています。仮にやめてもその番号はその人のもので永久欠番なので、「いつでも戻ってきてね」ってスタイルにしています。同じバッジをもっているという一体感が生まれるといいなと思って。
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ーいつでも戻って来られる場所っていいですね。先ほどのアンバサダー枠もそうですが、心理的に一歩引いてしまわないように工夫していることはありますか?
前田:職種や経験関係なく誰でも参加できるプロジェクトを作ることですかね。例えば毎週前田デザイン室のメルマガを発行していますが、これは書く人が毎週代わるのでデザイン全く関係ないですし誰でも参加できます。
それからCAMPFIREさんに置いていただいているうんちやパンティの缶バッジは、デザインじゃなくてもいいんです。ライターさんが言葉で書いてもいいし、絵がかけない人はラフだけ描いて他のデザイナーさんにデザインしてもらうみたいな形であってもいいですから。
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バカで面白くて楽しいものを作ってバズりたい。
ー前田デザイン室は、今後どのように変化していきますか?
前田:目の前の楽しいことをただやっているだけなので、将来的な進化はあまり考えていませんでしたが、世界でバズりたいです。ミラノサローネでの出展を目指しています。「これすごい!」と感じる面白いものっていちいち説明しなくても面白いノンバーバルだと思うんです。「モザイクパンツ」なんてまさにそう。プレスリリースを出したところ、インターネット上でバズりました。
モザイクパンツは面白グッズではなく、世界に通用するアート作品として押し出していきたいんですよ。だからアートブックをつけて青山ブックセンターさんで販売していただいています。MOMA美術館も狙っています。
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ー最後に、コミュニティとしてのお知らせがありましたらどうぞ。
前田:前田デザイン室の雑誌『マエボン2』の制作を1月からスタートします。12月から増枠しているので、今はいつでも入れる状態にしています。仕事とは違った、仕事でモヤモヤしている人はぜひ前田デザイン室でクリエイティブしてみませんか?お待ちしています。
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