体験した方が早いと思って、やってしまいました仕組み債
証券会社の説明の文章などを読んでもよくわからないものは、体験した方が早いと思い、仕組み債と言うものを購入しました。よく大損して失敗したという事例で出るアレです。
上の記事の事例で言うと、40歳代後半の女性が2,896万円、50歳代後半の男性が7,102万円の損害を出して、難解な仕組み債を勧誘し購入させられたとのことで証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)を通じて損害賠償の請求のあっせん手続きを行ったようです。
上の記事の事例以外にも、証券・金融商品あっせん相談センターの四半期毎の事例をまとめたPDFを見ると必ずといっていいほど仕組み債のトラブルが記載されています。それも何百万、何千万円という損害が出ています。
証券会社の仕組み債の商品説明を見ても、なぜそんなに損をするような金額を投資するのかがいまいちわからないため、実際に体験した方が早いだろうと思い、購入することにしました。
とは言っても、何百万、何千万と失うわけにはいかないので、購入金額の最低ラインである10万円だけ出して購入することにしました。
昨年末、マネックス証券で募集していたクレディ・アグリコル・コーポレート・アンド・インベストメント・バンクの「早期償還条項付参照株式株価連動債券(ルネサスエレクトロニクス株式会社)」という債券を購入しました。
仕組み債というものをご存知のない方に簡単に説明すると(実際私も仕組み債の商品説明を読むまでは正しく理解していませんでした)、参照する株価など(今回の場合は、ルネサスエレクトロニクス株式会社の株価)がある水準の範囲内で動いている限り、決められた利回りの利金を出すというものです。
まずは、ある時点での株価終値を当初価格(要は、基準となるスタート価格です)として設定することから始まります。それに基づいて、早期償還判定水準の金額、およびノックイン判定水準の金額が決定します。
最終的に、この債券の条件は以下の通りとなりました。
・利率:年8.39%(税引前)/ 6.685%(税引後)
・利払日:年4回(2021年3月23日、6月23日、9月23日、12月23日)
・償還日:2021年12月23日
・観察期間:2020年12月23日から満期償還日の5営業日前(最終評価日)までの期間
・当初価格:1,052.00円
・早期償還判定水準:1,104.60円
・ノックイン判定水準:736.40円
観察期間の間、株価が早期償還判定基準を上回ることがなければ、利払日に利金を支払うという仕組みになっており、うまく株価が推移すれば、年利通りの金額が支払われます。
では、株価が早期償還判定基準を上回った場合はどうなるのでしょうか。その場合には、償還日を待たずに100%の元金が償還され、それに加えてそれまでの利金が支払われます。
逆に株価が下落した場合はどうなるのでしょうか。
ここで重要になるのが、当初価格を設定した時に同時に設定したノックイン判定水準の金額です。
もし、下落した株価がノックイン判定水準を1度でも下回った場合、ノックインが発生したという状態になります。この場合、早期償還されず継続して株価の観察が行われ(観察期間中は利払日には利金が正しく支払われます)、最後の株価観察の評価日に最初に設定した当初価格を上回るかそれとも下回るかによって、償還されるときの元金が100%戻るか、それとも下回った金額しか戻らないのかが違ってきます。詳細は説明しませんが、最悪のケースは、株価が当初金額の50%まで落ち込んだ状態で最終評価日を迎えてしまった場合は、元金の50%しか戻ってこないということになります。
では、私の場合はどうだったかというと、最初の利払い日を迎える前にマネックス証券よりメールがあり、ルネサスエレクトロニクス株式会社の株価が早期償還判定基準を上回ったため、早期償還を行うとの連絡がありました。
結果的に私が受け取った金額は、以下の通りです。
最初にこの債券を購入するときに出した10万円と年利8.39%の3ヶ月分の利金2,098円です。税金が引かれるため、受け取った利金は1,673円でした。
債券購入時の出資額を10万円ではなく、100万円、1,000万円と大きくしておけば、受け取れる利金もたった1,673円ではなく、かなり大きな金額になりますが、ノックイン判定水準を下回った場合の仕組みを正しく理解していれば、100万円、1,000万円などといった大きな金額を出そうとは思えません。
最初の記事の事例での損害額、2,896万円と7,102万円から想像するに、5,000万円や1億円といったかなり大きな金額を出した可能性があります。
大きな金額を出すにもかかわらず、ノックインが発生したときのリスクをどの程度理解していたのかが気になるところです。
私自身の感想としては、ノックインが発生したときのリスクを考えると、なぜ数千万円という大きな金額を出してまで仕組み債を購入したいと思ったのかが、全く理解できず、頭が混乱してしまっています。
通常の個別株を購入するのであれば、株価が下落したときに損切りをするのか、それとも復活を期待して1、2年待つということもできるのですが、仕組み債では損切りも待つこともできません。リスクとリターンを正しく理解できれば、仕組み債というギャンブルのような投資を行うことはないでしょう。
仕組み債の体験で少しもやっとしていたときに、証券会社から以下の通知を立て続けにもらいました。社債の利金を受け取ったとの通知です。
3社の債券を購入していますが、それぞれ期の途中から購入してしまったため、最初に提示された利回りより少し少ない金額が振り込まれていました。いずれも20年程度の償還期間で、5%〜6%弱の利回りで運用します。上の金額は年2回振り込まれる利金のうち1回目ですので、9月ごろに同様に利金が振り込まれることになります。
仕組み債と違い、会社が破綻しない限り安定的に入ってくる利金です。償還まで20年程度と長いですが、20年間毎年自動的に数十万円の利金を支払ってくれます。
仕組み債に何千万円と投資し、株価がノックイン判定水準を下回らないように祈るぐらいであれば、単純に社債を購入し、安定した利回りの利金を受け取った方が精神的にも楽じゃないかと思います。
最近、証券会社のホームページを開くと、必ずと言っていいほど、8%〜十数%の仕組み債のバナー広告が表示されます。つい利回りの高さに目を奪われてしまうかもしれませんが、一般の人の資産形成の投資先としては不向きなものです。気をつけましょう。
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