オンライン資格確認の導入とマイナ保険証のカードリーダーの導入を分けることができないのか
最近、マイナンバーカードを保険証にするという動きに注目が集まっています。どちらかと言えば、マイナポイントをもらうために注目が集まっているというのもありますが、やっとマイナンバーカード保険証(以下、マイナ保険証と呼びます)を使用したときの診療報酬を早々に見直したため、従来の保険証を使用するよりも診療報酬が低くなり、窓口負担が減るというのが注目されているポイントではないでしょうか。
マイナ保険証を医療機関で使えるようにするためには、医療機関にオンライン資格確認等システムを導入する必要があります。オンライン資格確認等システムを導入するのは医療機関にとっては任意だったはずなのですが、上記記事通り、厚生労働省から来年4月には原則導入を義務化するという方針が出されてしまいました。これにより、一応来年4月では一部例外の医療機関を除きどの医療機関でもマイナ保険証が使えるようになるはずです。
オンライン資格確認等システムとは?
オンライン資格確認等システムというのは、ざっくり説明すると、窓口にきた患者が提出した健康保険証が有効か無効かをオンラインで確認できるというものです。
今までどうしていたかというと、医療機関がレセプト請求(診療報酬明細書を作成して、患者が負担した医療費以外を請求すること)を行い、審査支払機関で実際に健康保険証がその時点で有効だったか無効だったかを確認するということになっています。もし無効だった健康保険証が使用された場合、医療機関にレセプト請求を返戻するということになります。
転職した患者が、転職前の健康保険証を使用して、医療機関を受診した場合などは当然、転職前の会社が加入していた保険組合が費用を負担できるわけではないので差し戻されます。現在、レセプト請求が返戻される件数としては、一ヶ月あたり30〜40万件もあるそうです。
当然、レセプト請求が正しく受領されなければ、本来入るはずの収入(70〜90%)が遅れて支払われることになりますし、返戻されたレセプト請求を再提出するという窓口の手間が発生することになります。
このようなレセプト請求の返戻を最初から無くしてしまおうというのが、オンライン資格確認等システムというものです。これだけ聞くと、医療機関にとってはオンライン資格確認等システムの導入は急務であるのですが、その導入を躊躇させているものが、マイナ保険証を読み取るためのカードリーダーの導入がセットになっているというのが大きいのではないでしょうか。
上記2点の画像は、今年の3月に厚生労働省保健局から医療機関・薬局に向けて発信されたオンライン資格確認等システムの導入によるメリットを謳った資料より抜粋したものです。この画像をよくみていただくとわかるのですが、オンライン資格確認等システムを使用するには、受付でマイナ保険証を出す必要はなく、従来の健康保険証でも可能なのです。資格情報を確認するのに必要なのは、健康保険証に書かれている記号番号なのです。
もちろん、マイナ保険証を使用した場合は、顔写真がカードに載っているため、他人の保険証を不正に使用するということも防止できる効果がありますし、転職した翌日からすぐに資格確認ができるという利点もあります。
しかし、カードリーダーの生産の遅れ、普及しきっていないマイナンバーカードのために単純なコスト増となるカードリーダーの導入は避けたい等々の理由から、オンライン資格確認等システムの導入自体も遅れています。
オンライン資格確認等システムとカードリーダーの導入を分けることはできないのか?
カードリーダーの同時導入がオンライン資格確認等システムの導入を阻害しているのであれば、まずはオンライン資格確認等システムのみの導入ができるようにすればいいのにと思ってしまうのは、医療機関関係者ではない部外者の私だからなのでしょうか。
もちろん、オンライン資格確認等システムの導入を阻害している理由は、カードリーダーの導入がセットになっているだけではなく、システムそのものに追加費用がかなりかかるためというのも1つの理由だと思います(専用端末を追加したり、セキュリティのためネットワークを分離するための費用が発生したりなど)。
オンライン資格確認等システムは、単純に資格確認のみをオンラインで行えるようにするためだけに導入するのではなく、その基盤を使用して患者の診療情報(特定健康診査情報、薬剤情報)の確認、電子カルテの閲覧ができるようになる予定なので、今後ますます重要性が高まるはずなのですが、導入基準が今のままですと、オンライン資格確認等システムもカードリーダーも両方とも導入できないまま、来年4月を迎えそうな気がします。
なかなか進まないマイナンバーカードを健康保険証として使用することに抵抗がある人もいるのでは?
厚生労働省は、前のめりでマイナンバーカードを健康保険証として使用できるようにシステムの導入を進めているものの、多くの国民はマイナンバーカードの普及率からすると、なぜそうまでしてマイナンバーカードを保険証がわりに使わせようとするのか、ということに疑問を持ち、さらにマイナンバーカードを持たせようとする裏の意図があるのではないかと変に勘繰る人も出てきています。
私の過去の記事でも何度も書いていますが、マイナンバーは既に日本に住民票を持っている人ならば付与されていますし、マイナンバーカードを作らないとマイナンバーが付与されないというわけでもありません。正直、マイナンバーカードを作らないことに抵抗しても役所内での情報連携は既に始まっています。
あくまでも、国が国民にマイナンバーカードを持ってもらいたい一番の理由として、「公的個人認証サービスによる電子証明書アプリケーション」(略称はJPKI-AP)を普及させたいからです。これによりオンライン申請時に本人確認を正確にできるようになり、役所に出向くことなく色々な申請を行えるようになります。
一応、歪だったマイナ保険証を使用したときの診療報酬の加算が見直されたため、10月以降、システムの導入が加速してくれることを期待したいのですが、それでも鈍い場合は、本当にカードリーダーと別々の導入も可能となるような施策の追加も期待したいところです。