8 | 新たな視点を教えてくれた山の上での性教育
こんばんは。
フィリピンはまだ雨季なのか乾季なのか、
雨が降ったりカラッと晴れたり乾季に近づいてしてはいるのですが、安定しない天気です。
今記事は、フィリピンのカミギン島で昨日訪問したMobile Open High School Program(MOHSP)で実施した性教育ワークショップについてとそこで気づいたことを
書きたいと思います。
昨日は私、特別張り切っていたんです。
何故かというと。
それもそのはず。MOHSPのある先生から
「MOHSPの生徒に対して、性教育の授業をしてほしい」
と頼まれていたからです。
レギュラーの生徒に対しては授業の経験があるもののMOHSPの生徒たちに対しては初めて。
果たしてどのような反応が返ってくるのだろうかと当日が楽しみでした。
【性教育ワークショップ in MOHSP】
街からバイクで20分、そこから辛そうな悲鳴をあげるバイクに鞭を打ち、山道を越えた先にある、生徒の家に辿り着きました。
今回来てくれたMOHSPの生徒たちは、7人。
山の上に家があり、学校に通うことが難しい生徒が多いため、基本的に近所ベースで授業が行われます。
そのため、生徒の年齢も13歳から20歳まで、
年次もばらばらのメンバーでした。
今までレギュラーの公立高校で看護師と一緒に実施してきたワークショップだと生徒の年齢に合わせて教材と内容を変えてきました。
そのため今回どのような授業内容を組むべきか少し迷いがあったのですが、基礎的且つ実用的な情報が包括されていることを意識して、以下のような流れにしました。
授業フロー:
1. 事前知識チェックテスト
2. 思春期における男女の身体の変化(ビデオ)
3. 妊娠の仕組み(ビデオ)
4. 実際に15歳で早期妊娠をした子のインタビュービデオ
5. 正しい避妊具の使い方、誤った避妊法
6. みんなの将来なりたいものは何?
参加した生徒の中にRussellという17歳の女の子がいました。彼女はつい10日ほど前に出産したとのことで、特に4の項目はあまりに話題がセンシティブすぎるかもと心配だったのですが、
先生とも相談した結果、全て予定通りに実行することに。
チェックテストでは、基本的には身体の変化や人間の生殖機能についてだったのですが
生徒全員がそもそもの生殖機能の仕組みを理解していないという事実が発覚。
7名という少人数で質問をしながら進める授業スタイルだったため、一人一人の生徒のレベル感が理解でき意見を交わしながら進めました。
みんな真剣に見て考えてくれて
実用的な避妊具の使い方、誤認されがちな事実などについてもプリントを配って話し合い。
プリントを見ながら
「これダメなの知らなかった、友達にも言わないと」と話してくれていた子を見て、
正しい順序を経て与えられる情報教育は
生徒たちからも求められているということを
改めて感じたのでした。
今回、実際に彼らと話をしていたのは2時間弱でしたが、10代の子どもたちに対して、言葉を投げかけることを毎日の仕事とする教師という職の尊さと責任の重さが身に沁みた一コマだったと思います。
彼らが自分たちの未来をポジティブに、慎重に受け取めるための正しい知識とメッセージを伝えることができていたらいいなぁ。
【課題感: 一度妊娠した子へのアフターケア】
また、今回のワークショップを通して
課題感を感じたことは
一度妊娠をしてしまった子に対するケアが
足りていないという点でした。
フィリピンでは、カトリックという文脈から、未成年向けには禁欲主義的な性教育を行っており、性行為をしないことを前提としています。そのため、具体的な避妊具についての性教育は成されるべきではないという位置付けです。
ただ、一度妊娠した子に対しては未成年でもピル、IUD、Injectionなどの女性主体の避妊具がヘルスケアセンターで無料で開かれています。
(↑ このスタンスに対して一回妊娠してからじゃ遅いじゃないか!と何度も対抗しているんですが、なかなか。。。でもサービスが無料なだけ本当にすごい。日本が見習える所が沢山あります。)
**一度妊娠して学校から遠ざかり、金銭的な余裕もない上に、その避妊具の存在を知らないがためにまた第2子を妊娠してしまう。 **
このようなケースは、
今回お世話になった先生の教え子にも複数名いるとのこと。
Russellはつい先日出産を無事に終えた17歳の女の子で21歳のパートナーと一緒に授業に参加していました。
(余談 : ここで一番驚いたのは、その彼は彼女が産んだ子の父親ではないということでした。早期妊娠がシングルマザーを生み出すのは顕著ですが、その周りに助けてくれる家族がいるかという要因は、当人の負担を大きく軽減していることが多い。新しいパートナーがいることは、彼女にとって本当に大きな心の支えだろうなぁと思います。)
そんな彼女たちも、実際、
同棲中にも関わらず、妊娠・出産後も避妊対策は全く考えておらず、これまでも対策してこなかったとのことでした。
【慣れは大敵、掘れば掘るほどでてくる視点】
これまで、普段はレギュラーの中高生に対して
看護師と性教育のワークショップを開催することで、
「レギュラークラスからドロップアウトしてしまう生徒をなくそう」
という視点でしか見られていませんでしたが
「一度ドロップアウトしてしまっても、同じ間違いをせずにレギュラーのクラスに戻れるようにしよう」
今回気付かされたのは、
一度妊娠した子に対するアフターケアの重要性でした。
この気づきを経て、MOHSPの先生方と各市のヘルスケアセンターの担当者を繋げることで解決策が見つかりそうだなぁ、などと思いを巡らせています。
こうやって10ヶ月間どっぷり浸かってきたつもりでも、ひょんとした時に新たな視点に気付くことがあります。
逆にいうと、ずっと現地にいてどっぷり浸かっていることで、慣れが生まれ、限られた中での情報に甘んじて無意識のうちに視野が狭くなってしまうことが多いと思うのです。
そういった意味でも、私の固まった視点を
新たな場所に移してくれた今回のワークショップは自分にとっていい機会だったとも感じます。
これまでの10ヶ月間を糧に、
残りの2ヶ月をどう過ごしたいか。
その短い期間の中でも、誰かの人生が少しでも素敵な方向に向かうような影響を与える仕掛け作りができたら、と。
意識的に情報を取りに行くことを忘れず
今日も足と頭を動かします。
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