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レンズ開発について書いてみる

最近の交換レンズは性能が本当に良くなってきた。code-Vなどの光学設計ソフトが優秀になったことも一因ではある。
しかし、何よりもデジタルになって、等倍どころかもっと拡大させて見ることができるようになったことで設計者の開発魂に火を付けたと言える。

ザイデルの5収差に色収差を加えて、どの収差をどの程度抑えて、どの収差をどう出すか、なんて議論を積み重ねてきている。
これが「レンズの味」に直結する訳である。

そのためには、開発者自ら撮影し、他社のベンチマークを収差量測定レベルまでやらなければならない。

だがしかし、写真を見る目が無いと何が良いのかすらわからない。もちろん、プロの写真家の他社レンズの写真を題材に意見を聞くことも重要になる。ただ、プロの写真家は技術者では無いから、抽象的な言葉が多く、それを技術言語に読み変える必要もあります。

そして、設計MTF、ボケ味や周辺減光、口径食、歪曲収差量や倍率色収差、極力抑えたい軸上色収差や球面収差、サジタルフレア、フォーカス時のブリージング、面間反射ゴースト、共軸系/偏心系収差感度などなど、まだまだあるが、その全てに気を配って設計しなければいけない。

昔はシミュレーション技術も拙かったですから、ここまで細かな見極めができませんでした。求める性能も今ほどではなかったので、不出来な部分がある意味「味」になっていたと言えます。

今では前記内容のシミュレーションを行い、見極めることが前提となりました。ただ、これを光学設計者だけで判断できるかと言えば絶対不可能です。それは設計通りにものづくりが出来るかどうかの判断ができないからである。その判断には、ベテランと言われる光学メカ設計者のレビューが必須である。

そのベテランは光学設計に口出しできるレベルのスキルがないといけません。光学設計はコンピュータが結果を出しますから、基本的に結果そのものに間違いは無い訳です。そこで仕事は90%完了的な意識がどうしても出てしまいます。だからベテランが本当に十分な歩留りで性能を満足するものづくりが出来るかの見極めを行い、「ここをもう少しこうしないと、まだ80%だよ」と的確に指示する必要があるわけです。

この光学メカ設計者って、いまいち日の目を見ることは少ないが、仕事量は恐ろしいほど多く、一つでも手を抜くと全てがパーになる世界です。製品立ち上げ時には、部品や組込精度を測定しては、金型修正をミクロン単位で指示する必要もあります。ラインに張り付くことも当たり前です。また、あまりにも専門的すぎて、普通のカメラ技術者にもなかなか理解されない領域です。前にも書きましたが、ベテランに師事しても、一人前になるには10年かかります。経験が物を言う部分も多々あるのです。

こうして製品化されたレンズたちです。
使う方もこうした開発者の想いと膨大な仕事から生まれた成果を理解して使ってもらえるとうれしいですね。

#カメラ #光学 #光学設計 #光学メカ #レンズ #交換レンズ