#2 King Gnuのライブに行って全てが吹き飛んだ―KingGnuLiveTour2021AW 11/28レビュー
度肝を抜かれました。
地鳴りのように響くベースの重低音。
心臓を直接鳴らしてくるようなドラム。
目も耳も奪い、魅せられるギター。
会場の空気を澄み渡らせる歌声。
居る者すべてを掌握する一体感と破壊力。
「芸術的な曲」「繊細な歌声」そんな言葉では表現できないような、
圧巻のパフォーマンスを私は見ました。
King Gnuとの出会い
King Gnuと出会ったのは2018年。
アニメ『BANANA FISH』のエンディングで流れた『Prayer X』でした。
人間が根源的に持っている生きる苦しみや葛藤、
そしてその先にある希望の光。
「祈り」を通してそれらを描いたこの楽曲を初めて聞いたとき、
「こんなものが世の中にあったのか」
言葉にならない感動と衝撃に心が支配されたのを今でも覚えています。
それからはYouTubeでKing Gnuを調べ、完全に心を掴まれたのは『Vinyl』。
その翌日には学校の帰り道にTSUTAYAへ行き、CDをあるだけ借りて鬼リピ。
完全に沼にハマり、King Gnuの楽曲は私の体の一部になっていきました。
3年越しの初ライブ
King Gnuと出会って約3年
ついに、ついに迎えた初ライブが『LiveTour2021AW』です。
微かに流れる『サマーレイン・ダイバー』の冒頭、
そこから会場が一気に真っ赤に染まり、始まった『飛行艇』。
まさに「大地を震わせ」るような、魂が直接揺さぶられるような感覚に陥りました。
イヤホンから、テレビから聞いていた音とは全く違う。
これが本物のKing Gnuだ。今私の目の前でKing Gnuが音を鳴らしている。
この一曲で、私の体と脳が完全に覚まされました。
その後も止まることはありません
2曲目の『千両役者』で観客のボルテージを一気に上げると、
『Vinyl』と『Sorrows』が続きます。
次いで流れたのは、アルバム『CEREMONY』の前半を飾る『ユーモア』と『白日』。
ボーカル・井口が白いスポットライトに照らされ、のびやかで澄んだ歌声は
教会で聞いているかのような神聖さと清々しさを感じました。
MCを挟んでから奏でられたのは『破裂』。
「いっそ幻の中へと逃げ込めばいい」
この最後のフレーズから流れるように入る『Prayer X』のイントロは鳥肌ものでした。
そして常田が「一番優しくて強い歌」と評した『The hole』。
破裂し、祈り、希望を見る。
優しく手を引くような曲が続きます。
『Hit man』で広い空へ連れ出されると、
天使のようなサウンドに包み込まれる『三文小説』。
曲の連なりが、私たちにそっと寄り添ってくれているようでした。
ここから曲調が転換し、流れたのは『Slumberland』、『Tokyo Rendez-Vous』です。
以前millennium parade のライブで聞いたことがありましたが、全く別物でした。
煽情的かつ情熱的な常田のラップ調のボーカルは鮮明に覚えています。
続いて『傘』、『どろん』を軽快に奏でると、
『Flash』、『Teenager forever』でライブの最高潮を迎えます。
『Flash』冒頭でもそうですが、ライブの要所にある勢喜遊ドラムソロは
形容しがたい覇気、生命力、凄みを感じました。
『Teenager forever』歌唱後は踊り狂う4人。沸き立つ会場。
箱全体が一体となって遊び、狂い、興じた瞬間でした。
そして迎えたアンコール。
「明るい曲を」と言って始まったのは新曲『boy』。
優しくて、愛おしいこの曲で再び熱狂に包まれると、
ラストには『サマーレイン・ダイバー』が流れます。
ライブ冒頭からの壮大な伏線回収です。
ボーカルの声が重なり合い、神秘的な独特の旋律、
そこに私たちは溺れ、浮上する。
ライブの余韻が残るこの一曲で、ライブが幕を閉じました。
音楽のちから
このライブで、たくさんの煩悩、不安、その全てをきれいさっぱり拭い去る力を見ました。
ライブの間、私の中にはKing Gnuの音楽しかなくて、
音の濁流が、心の霧を全て晴らしてくれたような感覚がありました。
懸命に地を踏みしめ、体を揺らした約1時間半。
終わった瞬間の高揚感と疲労感が、
1日経った今でも体に残っています。
そしてこのライブが、私の生きていくスイッチを押しました。
「脆く」て「不確か」で、「臆病な」私、
「信じていくもの」を見失い、迷い、苦しむときだってあります。
だけど、「それでも前を向いて」、「命を揺らして」、
「ガムシャラに」生きてやろうじゃないか。
そう思わせてくれる希望を、力を、私はこのライブで受け取りました。
今日からまた生きていこう。
そしてまた、強くて優しくて最高のバンドに、会いに行くんだ。
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